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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第十六章 いつものような飲み会

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第57話 甲武一の名家でのクリスマス事情

 月島屋に着くといつも通りに飲み会は始まるが、その話題は当然カウラの誕生日の話になることになった。


 ただ、特にすることが決まっている訳ではないので、話題はいつもの『大正ロマンあふれる国』甲武国の一番の貴族であるかなめの実家の話になっていった。


「あら、西園寺さんのおうちの話?素敵だわ、甲武一の貴族の家のクリスマスって興味津々よね。是非聞かせてくださいな」 


 そう言って厨房から現れたのはこの店の女将の家村春子だった。その後ろでは明らかに自分の嫌いなかなめに母を取られたことを悔しがるような表情を浮かべている小夏の姿があった。


「春子さんなら知ってるでしょ?アタシの家には最近は減ったけど結構な数の居候がいること」 


 かなめは明らかに嫌そうにそう言うとグラスを傾けラムを飲んだ。


「それは居候とは言わないでしょ?食客と言う言葉が正しいんじゃないの?」 


 そう言うと春子は振り向いた。彼女の弾んだ表情に誠の頬も緩んだ。


「小夏、ビール頼める?私もお付き合いしたい気分なの」 


 紫の着物の袖をたくし上げて隣の空いた椅子を運んできた春子が通路側に席を構えた。


「え?お母さんも飲むの?」 


「いいじゃないの。どうせ西園寺さんのおごりなんでしょ?」 


 そう言って微笑む春子になんともあいまいな笑いを浮かべた後、かなめは再び話を続けた。


「まあずいぶん前からのしきたりでね、画家や書家、作家や詩人、芸人ばかりでなく政治を志す書生も主義を問わずに抱え込むのがうちの流儀なんだ。実際、当主が三人そんな書生に殺されているってのに本当によくまあ続いたしきたりだよ」 


 そう言うかなめの言葉に合わせるように小夏がビールの瓶とグラスを持ってきた。


「あら、神前君のがもう無いじゃないの。西園寺さんのおごりなんだからねえ。小夏」 


 春子はそう言うとビール瓶を持つと静かに自分のグラスに注いで見せる。


「気が利かねえなあ、神前」 


「いいのよ西園寺さん。それで続きは?」 


 誠はかなめの話を黙って聞いているアメリアとカウラを見た。誠もとても想像もつかない雲の上の世界の話。それをかなめは再び続けようとした。


「まあ、甲武は独立直後は神道と仏教以外のイベントは前の戦争の時までは全面禁止だった国だってのはお前等も知っていると思うんだけど、まあ世の中、イベントと言えば飯の種だ。実際、戦争中でもなけりゃ摘発なんてやっていない事実上の解禁状態だったからな」 


 そう言ってかなめはウォッカの入ったグラスを煽る。満足げに春子はかなめの言葉に頷いていた。


「どこでもイベントは飯のタネになる。そこでうちでは食客の中でも稼ぎ時のクリスマスにお呼びのかからないような売れない連中の為にと、クリスマスと正月くらいは力のつくものを食べてもらおうって何代目か前の当主が肉を配ることを考えたんだ。その結果なにかめでたい事が有るとすき焼きを食うことになったんだ。だからクリスマスにはすき焼きを食う」 


「それですき焼き。そんな理由ですき焼きを食べるの?クリスマスにすき焼きなんて聞いたことが無いわよ」 


 アメリアはそう言いながらビールを口にする。誠が中ジョッキを置いた。


「兄貴、注いで来るね」 


 そう言うと小夏は誠のジョッキを持って厨房に消える。カウラも納得したように頷きながらかなめの言葉が続くのを待った。


「腹に溜まることを重視すると言うわけか。いかにもがさつな西園寺家ならではの発想だな」 


 カウラはそう言いながら豚玉の最後の一口をつまんだ。その隣でしばらく目をつぶっていたアメリア。ゆっくりと目を開いた。



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