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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第十一章 定時になって

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第43話 お腹が空いたと言うことで

「それにしてもいつ見てもぽわぽわだな、ひよこは。法術に絡むと人が変わったように真面目になるのにそれ以外はポエムの事しか考えてねえんじゃねえのか?緊張感が無くて見てるこっちが拍子抜けするわ」 


 かなめはいつもの平和なひよこに正反対の自分を重ねるようにそう言った。


「そうよね。でもまあ出動時には一番の頼みの綱だもの。ひよこちゃんの『ヒーリング能力』があるからみんな無茶が出来るんだから。普段は英気を養っていてもらわないと……ひよこちゃんの力はいつだって必要だから」 


 珍しくかなめとアメリアが意見があったというように頷きあった。それを見ていた誠が立ちひざのままコタツに向かった。


 急に腹の虫が鳴いた。それを聞くとアメリアの表情が変わった。元々切れ長の瞳には定評があるアメリアだが、さらに目を細めるとその妖艶な表情は慣れている誠ですらどきりとするものがあった。


「あら?神前曹長のおなかが……」 


 アメリアはそう言うと舌なめずりをした。当然かなめのタレ目も細くなって誠を捉えていた。


「仕方ないだろ。時間が時間だ。それに貴様等が神前を外に出しておくからエネルギーの燃焼が早まったんだ」 


 二人の暴走が始まる前にとカウラの言葉が水を差した。


「そうなの?誠ちゃん?」 


 アメリアは今度は悲しそうな表情を演技で作って見つめてくる。誠はただ頭を掻くしかなかった。


「でもそうすると買出しか出前か……」 


 そう言いながらもかなめの手には近所の中華料理屋のメニューが握られていた。


「当然、出前だろ?買い出しで持ち場を離れるわけにはいかない」 


 カウラの一言と暮れてきた夕日と自然に付いた電灯の明かりの中でかなめは麺類のメニューを見た。そんなかなめを見ながらアメリアが人差し指を立てた。


「ああ、私そこなら海老チャーハン……あそこはご飯ものの方がおいしいのよね」 


 メニューの背表紙で店を推察したアメリアはそう言い切った。かなめはしばらく眉をひそめてアメリアを見つめた後、再びメニューに目をやった。


「アタシは麺類がいいんだよな……カウラ。貴様はどうするよ」 


 判断に困ったかなめはメニューをカウラに押し付けた。困ったような表情で誠を見た後、カウラは差し出してくるかなめの手の中のメニューを凝視した。


「あっさり味が特徴だからな……あそこの店は」 


 そう言いながらすでにカウラは食欲モードに入っていた。意外なことだがこの三人ではカウラが一番の大食だった。


 基本的にカウラ達、人造人間『ラスト・バタリオン』シリーズの人々は小食で効率の良い代謝機能を保持している。運航部の面々などもかなりの小食で、アメリアもその体格に似合わず普通に一人前の食事で済むほどだった。


 その中で代謝機能の効率化や食欲の制御、栄養摂取能力の向上研究の成果はカウラには見られなかった。172cmの身長の彼女だが、時としては186cmの誠よりも食べることがある。


「私もご飯物がいいな。出来れば定食で……回鍋肉定食か……それでいいか。ご飯は大盛で頼む」 


 そう言うとカウラはメニューをかなめに返した。そしてかなめはそのメニューを誠からも見える位置に置いた。


「おい、神前はどうするよ」 


 かなめのタレ目が誠を貫いた。こう言う時はかなめは誠と同じものを頼む傾向があった。そしてまずかったときのぼろくそな意見に耐えるのは気の弱い誠には堪える出来事だった。


「そうですね」 


 先ほどかなめは麺類を食べたいと言った。ご飯ものを頼めば彼女が不機嫌になるのは目に見えている。


「五目……」 


 そこまで言ってかなめの頬が引きつった。誠はそれを見て五目そばは避けなければならないととっさに判断した。彼女は野菜は苦手なものが多い。中には見るのも嫌いな野菜も存在する。そこで誠は視点を変えた。


「じゃあ排骨麺で」 


「じゃあアタシも同じと言うことで頼むわ」 


 そう言ってかなめはメニューを誠に投げた。受け取った誠はすぐに端末を開いて通信を送り注文を済ませた。



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