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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第九章 警備室での色々

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第29話 基地祭の助っ人

「じゃあ明日はよろしくお願いしますよ!」 


 島田はトレーラーの窓から顔を出してかなめに向って念を押すようにそう言うと、トレーラーがゆっくりと走り出し、それを見送ったかなめはまた四つんばいで誠の隣に戻ってきた。


「ああ、西園寺。明日は直行じゃないからな。いつもどおりに出勤。技術部の車で現地に向かう予定だからな」 


 カウラはそう言うと周りを見回した。厳しい表情が緩んでエメラルドグリーンのポニーテールの髪が揺れる様に誠は目を奪われた。


「ああ、お茶ね……」 


 その様子を見たアメリアが察して奥の戸棚を漁った。かなめはすぐに入り口のドアの手前に置かれたポットを見つけると蓋を開けて中のお湯の温度を確かめた。


「しっかり準備は出来てるんだな。うれしいねえ」 


 かなめはそのままポットをコタツの上に置いた。急須と湯呑、それに煎餅の袋を棚から運んできたアメリアがそれを誠の前に置いた。誠はこの三人がゲート管理をするとなればそれなりの準備をしておかないと後が怖いと思った技術部の面々の恐怖を思って同情の笑みを漏らした。


「僕が入れるんですか?……そうですよね。皆さん士官ですからね。下士官の僕が煎れて当然ですよね」 


 そんな誠に三人の視線が集まっていたのを察して誠はそう言うしかなかった。


「当然でしょ?神前曹長。なんと言っても鬼の下士官殿ですから」 


 そう言ってアメリアがにんまりと笑って見せた。階級の上下を思い知らされれば反論は許されない。誠は茶筒を手に取り綺麗に洗われた急須を手にとって緑茶の葉を入れた。


「お茶の葉、ケチるんじゃねえぞ。オメエの入れるお茶はいつも薄いんだ。もっと濃いめに入れろ」 


 背中でかなめの罵声が遠慮なく誠に届いた。


「はいはい、西園寺さんの好みに合わせますよ。まったくそんなに濃いのが好きなら自分で煎れろってんだ」 


「神前、聞こえてんぞ!無駄口叩く暇が有ったら早くしろよ!」


 濃い目が好きなかなめの注文に答えるようにして葉を注ぎ足した後、ポットからお湯を注いだ。その様子をじっと観察していたアメリアが大きくため息をついた。


「誠ちゃん……そんな雑な入れ方してたら隊長に呆れられるわよ。あの人は裏千家流の師範の免許を持ってるからお茶にはうるさいんだから。お茶はもっと丁寧に淹れなきゃ。誠ちゃんはいつもやることが雑なんだから困ったものね」 


 今度はアメリアが文句をつけてきた。緑茶の淹れ方については茶道師範の免許を持ち、同盟機構幹部の間では『茶坊主』と陰口を叩かれる隊長の嵯峨ならばいちいち文句をつけてくるだろうとは想像が付いた。


 だが目の前の三人はただ誠をいじりたいからそう言っているだけ。それがわかっているので誠はまるっきり無視して淡々と湯飲みに茶を注いだ。



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