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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第八章 予定を考える人々

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第28話 剣道場の正月

「誠ちゃんの家の正月って何をするのかしら?」 


 満面の笑み。そんなアメリアがじりじりと顔を近づけてくる。


「別に大したことはごく普通の一般家庭のそれと変わらないと思うんですけど」


 誠は関わると面倒なことになることを察して予防線を張りながらそう言った。 


「そうだな。西園寺の家のように一族郎党集まるわけじゃないんだろ?まあ、西園寺はそれが嫌で絶対に年末には甲武には行きたくないと駄々をこねるがな」 


 カウラはそう言うと剥いたみかんを口に放り込んだ。だがアメリアはにやけた表情を崩さずに満足げに頷きながら誠を見つめていた。そして同じく、かなめもまたアメリアの言葉に賛同するような様子で誠の表情を観察していた。


「なるほどねえ、アメリア。いいところに目をつけたな。アタシも庶民の正月には興味があるんだ。知りたいねえ……その『一般的な正月』って奴を。アタシとは無縁の世界だ。一度は見てみたいと思っていたところだ」 


 今度はいつの間にか誠の隣にやってきたかなめが身体を押し付けて耳元で囁いてきた。そのタレ目が誠の退路を断った。


「そんな普通ですよ。年越し蕎麦を道場の子供と一緒に食べて、そのまま東都浅草にお参りして……帰ったら餅をついて……」 


 誠はあまりにもそんな正月が普通だと思っていたので、当たり前の自分の正月感をそう表現した。


「おい、それが普通だって言ったら島田に怒られるぞ。奴はろくでもない家庭で育ったからな正月にはトラウマがあるらしい。どうせ盗んだバイクで初日の出暴走とかしてたに決まってるんだ。神前、アイツには正月の話題は振るんじゃねえぞ。絶対ブチ切れてまた根性焼きされるぞ」 


 そう言ってかなめは誠の頭を小突いた。言われてみて確かに母の剣道場に通っている子供達が集まるなどと言うことは普通はないことを思い出して誠は少し後悔した。


「え?誰が怒るんですか?」 


 警備室の窓の外から島田が顔を出していた。後ろにあるのは誠の05式を搭載したトレーラー。運転席では西が助手席の誰かと楽しそうに雑談をしているのが見えた。


「ああ、何でもねえよ!」 


 そう言うとかなめは四つんばいのままゲートを空けるボタンを押した。


「じゃ、明日は会場でお待ちしてますんで。遅れないで下さいよ!特に神前!テメエは寝坊の癖があるうえに、今回の主役の人気者なんだからな!もし時間に遅れたら額にタバコ押し付けて根性焼きを入れてやるからな!」


 島田はそう怒鳴りつけるとトレーラーに向って歩き始めた。


「がんばれよー。応援してるぞー。まあ脇役として頑張ってくれよー」


 やる気の感じさせない応援でかなめは島田の背中を見送った。



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