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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第八章 予定を考える人々

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第27話 クリスマスの無い国のクリスマス

「さて、今回私達がここに集まったのにはわけがあるのよ。そこのところをよく考えて知恵を絞ることにしましょうね」 


 アメリアは誇らしげにそう言うとみかんを一袋口の中に放り込んだ。


「クリスマスだろ?言わなくても分かる。それに私の誕生日か。どちらにしてもあまり騒がれても迷惑なだけだ」 


 仕切ろうとした出鼻をカウラにくじかれてアメリアは怯んだ。だが、再びみかんを口に放り込んでゆっくりと噛みながら皮を剥いている誠とカウラを眺めてしばらく熟考すると再び口を開いた。


「それだけじゃないわ。ランちゃんに聞いたけど……東都警察の皆さんは年末年始の間も臨戦態勢を希望しているらしいわ。厚生局の一件で自分達が無能だって世間に知られて相当頭に来ているみたいなの。そこで今年はうちには年末警戒の応援要請はごく少数しかしないらしいわ。あの人達にも面子ってもんが有るんでしょうね」 


「そうなのか……今年は応援要請は無しか。あれは良い手当てになってくれていたのだが」 


 明らかに投げやりにカウラは返事をした。実際こういう時のアメリアに下手に口答えをするとうざったいだけなのは誠も知っていて、あいまいに首を縦に振りながら彼女の言葉を聞き流していた。


「それに年末の県警の警備活動の応援は特別手当が付くということで技術部の面々が数少ない定員をめぐって争っている状態だしねえ。私達のイベントもルカ達が仕切るから私達は完全にフリーなのよ」 


 嬉しそうに笑うアメリアに誠はただ嫌な予感だけを感じてその糸目がさらに細くなる様を眺めていた。


「ああそうだな。うち等は暇になるみてえだな。ゆっくりしようや、年に一度の年末だし」 


 上の空でそう言うとかなめがみかんの袋を口に入れた。


「カウラちゃん、聞いてよ。さっきから上の空の返事ばかりでまともに聞いてくれてるとは思えないわよ」 


「聞いてるって。ちゃんと聞いてる」 


 カウラはいかにも困ったような表情でアメリアを見つめた。


「つまりあれだろ。アタシ等は年末年始が暇になるってこと。そうならそうと素直に言え。アタシ達を余計なことに巻き込むな。どうせ騒ぎたいのはテメエだけなんだからアメリア一人で騒いでろ」 


 かなめはアメリアの言葉を聞いていたようで、兵員を満載した警備部のトラックの為にゲートを開けながらそう叫んだ。


「なによ、かなめちゃん人を馬鹿みたいに言って。そこで私達がやるべきことが二つあるのよ」 


 高らかなアメリアの宣言にカウラは不思議そうな顔をする。


「二つ?クリスマスだけじゃないのか?」 


 カウラはアメリアの言葉がクリスマスの事しか言わないと思っていたので驚いたようにそう言った。


「馬鹿だなあカウラ。クリスマスと年末のコミケのイベントでのアメリアの荷物持ちがあるだろ?こいつの事だ、絶対アタシ等をこき使うつもりだぞ。アタシはあんなイベントは興味はねえ。まあ、神前が興味があるみたいだから神前になら付き合ってやる」 


「ああそうか。私もアメリアの荷物持ちは沢山だ。神前が行きたいと言うのなら私も付き合おう。アメリアは別行動で頼む」 


 納得してカウラはみかんをまた一口食べた。だが、そこでアメリアはコタツから立ち上がった。


「なんでアンタ等は誠ちゃんには付き合って私には手を貸さないのよ!女性を少しはいたわりなさいよ!それに問題はそんな事とはまったく違うわ!一番大事なこと!家族のぬくもりに恵まれない私達三人に必要なイベントがあるじゃないの!」 


 その奇妙なまでに力みかえったアメリアの言葉に誠は明らかに嫌な予感を感じながらみかんを口に放り込んだ。


 そんなアメリアの雄たけび。誠の背筋を寒いものが走った。そしてその予感は的中した。


 アメリアの顔が作り笑顔に切り替わって誠に向かう。


「あの……なんですか?」 


 同情するように一瞥してかなめはゲートを閉じた。カウラは係わり合いになるのを避けるように二つ目のみかんに取り掛かった。



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