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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第六章 日常業務は続く

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第23話 葬られた研究

「仕事熱心なのはええこっちゃで……クバルカ先任!例の資料、持ってきましたで」


 誠に続けて機動部隊の詰め所に入ってきた明石はそう言って機動部隊長の大きな机に張り付く小さなランのところまで行ってデータチップを渡した。


「ああ、この前の厚生局の闇研究の資料か。明石。お前さんが司法局本局から預かったわけだ。これで厚生局の大掃除は終了。後はアタシ等としては野となれ山となれってことか」 


 ランはそう言うとそのまま明石からデータチップを受け取った。


「せっかくうちが解決してやったというのに本局はその資料一つで済まそうってのか?あの事件は東和陸軍とか遼北人民共和国とか色々絡んでただろうに。そっちの方は政治的解決で済ませようって腹か?いつも問題が起きたら一番ヤバい事だけうちに押し付けて手柄は全部政治屋さんが持ってくんだ。まったく損な仕事だぜ」 


 嫌味を飛ばすかなめだが、彼女の毒舌は誠もカウラも知っていた。


「言うな西園寺。お役所にはお役所のやり方ってのがあんだ。下手に動いて遼北人民共和国の同盟離脱なんてことになったらどうするんだ?同盟機構はお終いだぞ。そう言うところまで気を回さなきゃアタシみたいなポジションには付けないんだ。スキルアップしたかったらそこんとこを考えろ」 


 遅れる厚生局内部の綱紀粛正状況にふつふつと怒りを燃やしているように握りこぶしを作るランだがかなめに見つめられて照れたようにうつむいた。 


「姐御……それは分かるんだけどよう。アタシ等の苦労と、あの事件で死んでいった連中はそれで報われるのか?あの事件で何人死んだ?それがチップ一枚で解決って……人の命はデータチップ一枚にも満たねえってことか?」


 静かな怒りを胸に秘めた言葉でかなめは絞り出すような口調でそう言った。


「西園寺、それを言うな。一番はらわたが煮えくり返ってるのはアタシなんだ。あれだけアタシをコケにした厚生局の面々がたぶんろくな処分もされずに本国の遼北に帰る。そして研究結果のほとんどは遼北が吸い上げてる。そんな事は十分わかってんだ。でもなあ、それがアタシ達に出来る限界だ。それ以上事を進めようとしたら、組織のどこかに歪みが生じる。その歪みの原因にアタシはなりたくねー」


 ランはそう言って悔しそうに唇を噛んだ。


「クバルカ先任も苦労しとるようやね。ほいじゃあ肝心のブツも渡したちゅうこって本局に戻りまっさ!それに今回の厚生局の一件の不手際はクバルカ先任のせいちゃいますやんか。すべては司法局上層部のかぼちゃ頭が本当にかぼちゃやったっちゅうだけの話なんとちゃいますか?ワシはアイツ等の頭がもう少しまともやったらこんな被害はでんかったと思うとりますわ」 


 そう言ってツルツルに剃り上げられた頭を叩くと明石は出て行った。


「厚生局の一件でようやく東都警察も法術対策に本気になったか……楽出来るといいねー。特にオーバーワークの茜達をなんとか楽にしてやりてーな」 


 心のそこからの叫びのようにそんな言葉を搾り出すと、安堵した表情でランは自分の席へと戻っていった。


「そうだ、忘れてたわ」


 ランはそう言うと視線を誠達に向けた。



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