表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第四十五章 人が良くて楽しい連中

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

199/200

第199話 注文通りの品

「しかしよく集めたわねえ……ちゃんとメモどおりの野菜が揃ってるじゃないの」 


 一人ダンボールの中の野菜を調べていたアメリアが感心したようにため息をついた。誠はサラがやっていたようにドライバーで銃から空の薬莢を取り出している下士官を見ていた。


「大変ですね。でもこんな昔の銃の弾が安いんですか?」 


 誠の質問に一度顔を上げて不思議そうな顔をした後、銃器担当の下士官は今度は銃の分解を始めた。


「まあな。需要は結構あるんだよこいつは。英雄を気取りたいのは誰にでもある願望だから、アメリカさんの影響力の強い国で銃の規制がゆるい国なら銃砲店に行けばかならず置いてあるからな。それこそカウボーイ・シューティングマニアの羨望の的の銃だからな」 


 そう言うと下士官は慣れた調子でシリンダーを取り外し、そこに開いた大きな六つの穴を覗いていた。そしてその頃には警備部の面々も射撃訓練を開始して、絶え間ない銃声が射撃場に響き始めた。


「まあ見世物としては面白かったけど、これで終わりとか言わねえよな。わざわざ東都から隊に戻ってきたんだ。それなりのイベントがねえとな」 


 かなめの言葉に銃器担当の下士官は一端、銃から目を離して彼女を見上げた。


「俺に聞かないでくださいよ。たぶん班長が何か知ってるんじゃないですか?グリファン中尉と時々なんか話していたみたいですから」 


 そう言うと彼はシリンダーを抜いた銃の銃身に掃除用の器具を突っ込んだ。サラのお祝いについて何も知らないような下士官を見つめた後、かなめはそのままアメリアが中身を確認し終えたダンボールの箱を持ち上げた。


「気が利くじゃないか、西園寺。これじゃあ明日は雪だな」 


「どういう意味だ?」 


 笑顔のカウラにかなめは突っ込みを入れた。その表情はいつもより柔らかいものだった。 


 カウラはそう言うとそのままハンガーに向かって歩き出したアメリアに続いた。誠もまたそれに続いて歩き始めた。


 ただ誠達は明らかに雰囲気が先ほど同じ道を来た時とは違っているのを感じていた。明らかにちらちらと誠達、特にカウラの様子を確認しているのはアメリアやかなめもわかっていた。普段は開いていない管理部の裏の窓が開いていてそこから双眼鏡が覘いていたりするのだから、誠にも何かサラ達が企んでいることは分かった。そして企画立案はおそらくサラの彼氏で技術部部長代理である島田正人准尉によるものだと誠は推測した。


「何考えてるんだか……」 


 カウラがポツリとつぶやいた。その視線の先にピンクの髪が動いたのは明らかにサラの後ろ髪だった。それを見てかなめが立ち止まった。


「なあ、少し待ってやろうよ。楽しみは先にとっとくもんだ」 


 かなめのうれしそうな顔に同調するようにアメリアも立ち止まった。二人が突然態度を変えたことでカウラの表情が曇った。


「くだらないな。とりあえずごぼうを受け取って隊長に挨拶したら帰るぞ」 


 カウラは振り返り、一言そう言うと歩き出した。


「奥さん、聞きました?帰るですって。すっかり奥方気取りね」 


「ええ、そうですわね。そのまま旦那と昼から……」 


「まあ!」  


「アメリアさん、西園寺さん……」 


 下品そうな笑いを浮かべてささやきあうアメリアとかなめに思わず誠は声をかけていた。カウラは二人の寸劇を気にする様子もなく歩き続けていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ