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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第四十五章 人が良くて楽しい連中

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第196話 サラの奇妙な行動

「風が冷たいねえ……そういえばダコタで馬車強盗とやりあったときもこんな風が吹いていたっけ……」 


 そう言うとサラは射撃場の椅子にひらりと舞うようにして腰掛けた。手にしているのはかなめの愛用の葉巻のコイーバ・ロブストだった。タバコが吸えないサラらしく、当然火はついていないし煙も出ない。


「何がしたいんだ?お前は?ここは司法局実働部隊の本部だ。ウェスタン村じゃないぞ」 


 サラに歩み寄ったかなめは馬鹿にするようにそう語りかけた。


「お嬢さん?何かお困りで?」 


 そう言うとサラは胸に着けた保安官を示すバッジを誇らしげに見せ付けた。お嬢さん呼ばわりされたかなめはただ茫然とサラを見つめた。タンクトップにジーンズと言う明らかに常人なら寒そうな姿だが、それ以上にサラの雰囲気はおかしな具合だった。


「ああ、目の前におかしな格好の姉ちゃんがいるんで当惑しているな。自分が本当に自分の隊に出勤してきたのかどうかを悩んでいるところだ」 


「ふっ……おかしな格好?」 


「ああ、マカロニウェスタンに出てきそうなインチキ保安官スタイルの姉ちゃん。しかもコイーバはアメリカじゃあまだ買えないぞ。あそこはキューバと国交が無いからな」 


 そう言われてもサラはかなめから掠めたであろう火のついていない葉巻を咥えたままにんまりと笑って立ち上がるだけだった。


「そう言えばネバダで……」 


 たわごとをまた繰り返そうとするサラに飛び掛ったかなめがそのままサラの帽子を取り上げた。


「だめ!かなめちゃん!返してよ!」 


 サラがぴょんぴょん跳ねた。ようやく笑っていいという雰囲気になり、野次馬達も笑い始めた。


「駄目よ!かなめちゃん!返してあげなさいよ」 


 上官と言うより保護者と言う雰囲気でアメリアはピシリとそう言った。ようやくその場の雰囲気が日常のものに帰っていくのに安心して誠達は射撃レンジに足を踏み入れた。


 サラの仮装に飽きた誠は射撃場の机の上に誠は目をやった。サラが飛び跳ねている後ろには、小火器担当の下士官が苦い表情で手にした弾の入った箱を積み上げていた。


「たくさん集めましたねえ。この銃の弾の種類ってこんなにあるんですか。そんなに需要のある銃なんですか?古そうなリボルバーなのに」 


 誠もその弾の種類の多さに感心した。そこには時代物を装うようなパッケージの弾の他、何種類もの弾の箱が並んでいた。技術部の銃器担当班の下士官がそれを一つ一つ取り出しては眺めていた。


「まあな。結構この手の銃は人気があるから種類は出てるからな。特に今、サラの銃に入っている弾は特別だぜ。おい!サラ。いい加減はじめろよ」 


 下士官の言葉に渋々かなめは帽子をサラに返した。笑顔に戻ったサラはリラックスしたように静かに人型のターゲットの前に立った。距離は30メートル。サラは一度両手を肩の辺りに上げて静止した。


「抜き撃ちだな。一応ラスト・バタリオンとは言えサラにそんなこと出来るのか?アイツの体力は一般女性並みだぞ」 


 カウラは真剣な顔でサラを見つめていた。


 次の瞬間、すばやくサラの右手がガンベルトの銃に伸びた、引き抜かれた銃に左手が飛んだ。そしてはじくようにハンマーが叩き落とされると同時に轟音が響き渡った。


「音がでけえなあ……それになんだ?この煙」 


 かなめがそう言うのももっともだった。誰もが弾の命中を確認する前にサラの銃から出るまるで秋刀魚でも焼いているような煙にばかり目が行った。風下に居た警備部員は驚いた表情で咳き込んでいた。


「これは?」 


 驚いているのはカウラも同じだった。ただ一人苦笑いの下士官にそう尋ねた。


「ブラックパウダーと言って、黒色火薬の炸薬入りの弾ですよ。時代的にはこれが正しいカウボーイシューティングのスタイルですから。このコルト・シングルアクション・アーミーの時代はまだ無煙火薬は発明されてないですからね。まあ俺も使ってみるのは初めてだったんですが。確かにこれじゃあ銃撃戦なんてしようもんなら煙だらけでせき込んで撃ち合いどころじゃなくなっちゃいますね」 


 そう言う説明を受けて納得した誠だが、撃ったのはいいが煙を顔面にもろに浴びてむせているサラに同情の視線を送った。


「でもこれじゃあ何発も撃ったら匂いが射場に染みつくぞ。それは勘弁してくれよな」


 射場の主であるかなめはそう言って苦笑いを浮かべた。 


「ああ、ちゃんと無煙火薬の弾もあるから大丈夫ですよ。ブラックパウダーはそちらの一箱だけ。あとはちゃんと普通に撃てる奴ばかりですよ」 


 煙に驚いていた誠はこれでようやくひと安心した。だが、弾丸はどれもむき出しの鉛が目立つ巨大な姿をしている。警察組織扱いになっている司法局実働部隊だから使えると言うような鉛むき出しのホローポイント弾に誠は苦笑いを浮かべた。



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