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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第四十三章 かえでの怪しい屋敷

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第191話 カレーの意味するかなめとかえでの関係

 食事を終えた誠達は再び応接室に案内された。


「どうぞ」


 メイドの一人が誠に紅茶のカップを差し出す。カウラ、アメリア、かなめの順に紅茶のカップが並べられていく。


「中に何も入って無いんですけど」


 あまり教養の無い誠の前に台車に乗せた紅茶セットがもう一人のメイドの手で運ばれてきた。


「紅茶は高温で煎れて初めて香りが立つのよ。覚えておいた方が良いわよ。なんと言ってもかえでちゃんの『許婚』なんだから。まあ、さっき言ったように誠ちゃんの待ってほしいと言う言葉をかえでちゃんも理解してくれたみたいだから。その辺は曖昧にしておきましょう。丁度、この国で法術の存在が曖昧だった時の様に」


 嫌味たっぷりにアメリアが誠を冷やかした。誠はふくれっ面をして紅茶が入れられる様を丹念に観察していた。


「カレーか……その顔を見るとアメリアはその意味を察してるな。神前、オメエはどうだ」


 紅茶に入った砂糖をかき混ぜながらかなめは誠にそう尋ねてきた。かなめの下卑た笑みに誠は最悪の予感の中の最悪の物を拾い出して頭の中で展開して見せた。


「カレーの意味?もしかして……ってそれって小学生のギャグ並みですよ。そんな変態的な事を教えたんですか?西園寺さんは。確かに色は似てますがそんなものを一緒にする人は普通いない……ああ、日野少佐と西園寺さんは普通じゃ無かったですね。失礼しました」


 誠もただ誠にカレーを食べさせたいだけでかえでが自分達を読んだわけでは無いだろうとカレーを食べながら思っていた。しかし、かなめがそう言う以上、誠が想像した最悪のプレイをかえでが望んでいることは事実なのだと誠は確信してしまった。


「アタシが教えたんじゃねえ。自分でそうなったんだ。アイツは昔から自分で肥溜めに突っ込んでいって喜んでいるような変態だった。しかし……」


 そこまでかなめが言ったところで紅茶を入れたメイドが出て行った大きな扉からかえでが現れた。


「どうかな、神前曹長。僕のカレーは気に入ってくれたかな?」


 かえでは相変わらずのさわやかな笑顔でそう言うと誠を魅了する視線を送ってきた。


「ええ、初めは洋食店とかで出る高級なルーとライスが分かれたのが出て来るかと思ったんですが、寮で食べてるカレーを完全再現しているんで驚きました。それでも作った人の腕が違うんですね、寮で食べるカレーに比べて味はこれまで食べた中で最高の部類に入るカレーです。おいしかったです」


 とりあえずかなめのさっき言ったことを忘れて誠は素直にそう答えた。


「それは良かった。うちのシェフもきっと喜んでくれるだろう。僕としてもカレーは好きでね。週に一度は食べるようにしている」


 かえではそう言うと誠の正面のソファーに腰かけた。かえでの言葉にアメリアは明らかに誠と同じ想像をした顔をして心配そうな顔をかえでに向けた。


「週に一度しか行かないの?それって身体に悪いわよ。私は毎日行くけど」


 アメリアは驚いた様子でそう叫んだ。カウラはアメリアの言葉の意味が分からずただいつもの無表情で紅茶を飲みスコーンを食べていた。純粋なカウラにとってカレーが何を指しているのかは理解不能なことなのだと誠は彼女の純粋さにあこがれを抱いた。


「そのくらいが一番ちょうどいいんだ。そのくらい貯めないと色々と楽しめないだろ……クラウゼ中佐……」


 さわやかなかえでの笑顔が妖艶な色気を帯びてくるのを誠は見逃さなかった。


「私はパス!私は汚いのは苦手!かなめちゃんは好きかもしれないけど、私はそれだけは勘弁!」


 アメリアはあからさまにかえでの態度に拒否反応を示した。誠も同意したかったが、ここで言葉を発してしまえば、カレーが何を指していたか誠が理解していることを自白するようなものなので黙っていた。


「アタシは汚い雌豚を口汚く罵るのは好きだが自分が汚れるのは嫌いだ。それと……翌日匂いが残るんだよな……あの責めの後は……明日の朝が心配だな。サラの奴に隊にお呼ばれしてるからな」


 かえでの言葉を完全に理解しているかなめはそう言う世界とは無縁なカウラに分からないようにそう言って自分の性癖を暴露した。


「その点は大丈夫です。ちゃんと香水も用意してあります。翌日ににおいが残るような不手際は私、渡辺リンの命に代えてありません」


 いつの間にかかなめの後ろに気配も無く表れたリンに驚いたようにかなめは振り向いた。


「そうか……それは良かった……」


 かなめは全てを諦めたようにそう言うと誠、カウラ、アメリアの順に視線を送った。


「今日はアタシはこの屋敷に泊まる。明日はリンの送りで隊に向かう予定だ。それでいいんだな!かえで!」


 半分やけになったようにかなめはかえでに向けてそう言った。


「みなさん。そう言うことになりましたので、今日の所はこのくらいでお引き取り願えませんでしょうか?」


 かえでは突然そう言って立ち上がった。メイド二人が出口に向かう扉を開き、誠達が立ち上がるのを待っていた。


「まだ紅茶が途中じゃないの……って我慢してるのね。なんと言っても一週間だもんね……辛いんじゃないの?お腹」


 アメリアはリンに向けてカウラに聞こえないようにささやく。


「いいえ、これもすべてはかえで様の為です。それにかえで様とかなめ様のそれを食するのが私の最大の喜びです」


 リンの言葉にアメリアは絶望したような表情を浮かべていた。


「食べるの!あのカレーと同じ色をしたものを?」


 リンの言葉に驚いたようにアメリアは紅茶をこぼしそうになりながら立ち上がった。


「ええ、かなめ様のモノとかえで様のモノ。それぞれ、香りを楽しみつつすべて食します。それぞれに日々食べていたものの違いで味が異なるので非常に興味深いものですよ」


 ただひたすら理解できない世界が存在している。アメリアにはそう言う他意の無さそうなリンの笑顔が恐ろしく感じられた。


「それじゃあ、僕達は失礼しますね。カウラさん。帰りましょう」


 リンの言葉に恐怖を感じた誠は引きつりつつある頬を無理に矯正して立ち上がった。訳が分からないと言うようにスコーンを食べていたカウラも仕方なく立ち上がって部屋を足早に出て行くアメリアの後に続いた。


「誠ちゃん……本当にかえでちゃんが『許婚』で良いの?アレを食べる人が身近にいる環境で日常を過ごすことになるのよ。それでも良いの?」


 螺旋階段のあるホールまで来るとアメリアは誠の耳元でそうささやいた。


「少し自信が無くなってきました。さすがに僕も食べるところまで行くとは思いませんでした……でも同人誌とかではよくある展開ですよね……アメリアさんもそんなの持ってましたし」


「言わないで。アレはフィクションだから許せるの。リアルに存在するなんて考えたことも無かったわ」


 誠は本心からそう言わざるを得なかった。アメリアもまた自分の膨大なエロ同人誌のコレクション整理について考えざるを得なくなっていた。



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