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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第四十三章 かえでの怪しい屋敷

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第187話 かえでのお屋敷

 かえでの屋敷は豊川の中心部から少し離れた森の中にあった。その途中の道でゴルフ場がいくつかあるようなかなり自然豊かな立地と言えた。


「ゴルフ場が一杯ありますね……千要はゴルフ場が東和で一番多いと聞きますけど、これだけ土地があると他に使い道は無いんですかね……それにしてもかえでさんもゴルフはするんですか?」


 退屈を紛らすために誠はかなめに尋ねてみた。


「ああ、やるよ。アイツはハンデはシングルだって自慢してた。ただ、それほど好きと言う訳でも無くて付き合い程度って言ってたけど。アイツの運動神経はお袋に鍛えられて並みの男を優に凌駕するものだから。まあ当然と言えば当然か」


 かなめは野球以外のスポーツにはまるで興味が無いのであっさりと誠の問いに答えた。


「付き合い程度でハンデがシングルって……かえでさんはどんな運動神経してるのよ。私だって付き合いで何度かコースに出たことあるけどハーフで100切ったことなんて一度も無いのよ。まったく凄いの一言に尽きるわね」


 中佐の階級もあって司法局のゴルフコンペにゴルフ嫌いな嵯峨とランの代わりに駆り出されることもあるアメリアはそう言って苦笑いを浮かべた。ちなみにアメリアは運動神経の方は良いのだが、持ち前の根本的に欠如した集中力からゴルフは苦手だった。


「そこの太い側道を入れ。そしてそのまままっすぐ行けばかえでの屋敷だ」


 かなめの言うようにゴルフ場の入り口よりも立派な側道があり、カウラの『スカイラインGTR』はそのっまま右折して側道を進んだ。側道に入ると左右を鬱蒼とした森が覆っていた。


「ここは全部日野少佐の土地か?本当にもう一つ二つゴルフ場でも作れそうな広さだな」


 いつまでも続く側道と両脇に続く広葉樹林にカウラは呆れた調子でそう言った。


「アイツの貴族趣味は筋金入りだからな。この樹林は狩猟許可地域でかえでの趣味の一つである狩猟の為に雉とか山鳥とかを放鳥しているらしい……明日はたぶんその猟の獲物も貰うことになるだろう。ほら、見えてきた」


 後部座席から身を乗り出したかなめの指さす先に大きな屋敷の洋風の城を思わせるような立派な黒い門が目に飛び込んできた。


「立派な門ですね……ゲームの館ものに出てきそうな典型的な洋館がありそうだ……アメリアさんの好きなエロゲの『館モノ』に出てくるような感じの」


 門の前に車が停まり、誠がそう言った瞬間に黒い門が開いた。目の前の門の圧倒的な存在感に誠とアメリアは完全に飲まれていた。カウラはゲームをしないので誠の言葉の意味が分からずただ普通に車を発進させた。


「車が着くと自動開閉……フルオートなんだ……さすがお金持ちは違うのね。こんなところにお金を使うなんて……私には考えられないわ」


 アメリアのため息の漏れる中、車はそのまま屋敷の敷地を進み、誠も知っている『鹿鳴館』と言う歴史上の建物を思い出させるような洋風の屋敷が現れた。まさにアメリアの好みのエロゲに出て来る洋館らしい洋館がそこにはあった。


 カウラはその屋敷の車止めに車を乗り入れた。そこには、リンと二人のメイド服を着た女性が立っていた。


「なによ、裸じゃ無いじゃないの。せっかくかなめちゃんが裸のメイドを踏みしめて笑顔を浮かべると言う変態プレイが間近に見られると期待していたのに、損しちゃったわ」


 屋敷の怪しい雰囲気に影響されて出迎えも変態的な物だろうと期待していたアメリアがあまりに普通の光景に驚いてかなめの耳元でそうささやいた。


「カウラが居るから遠慮してるんだろ。カウラ、キーはリンに預けろ。車はリンが車庫に運転してくれる」


 そう言うとかなめはいつも通り誠の座る助手席を蹴って早く降りるように急かした。


「これはこれは、遠いところわざわざ皆さんお揃いで。歓迎させていただきます」


 静かに頭を下げながらリンはそう言っていつもの無表情に無理のある笑みを浮かべた。


「いや、こちらこそ済まない。渋滞で時間がかかってしまった。車は大尉が車庫まで移動してくれるのか?」


 運転席から降りたカウラはリンにそう言うと車のキーをリンに預けた。


「はい、私が車は車庫に入れておきます。かえで様が皆様のお越しを楽しみにしていらっしゃいます。二人とも、ご案内を」


『はい』


 リンの言葉を聞くとメイドは屋敷の巨大なドアに向って歩き出した。このドアもメイド達と誠達が目の前に立つと自動で開いた。


「家って金を掛けようと思えばいくらでもかけられるのね……司法局の偉いさんでもこんな屋敷に住んでる人なんて居ないわよ。ランちゃんの代わりによく付き合わされるけどせいぜい、都心部に普通の一戸建てのでかいのと庭がある程度。この屋敷の庭……野球が出来そうな広さじゃないの」


 半分呆れながらアメリアはそう言うと怪しい展開に期待に胸を膨らませながら先頭を切って屋敷のエントランスホールにたどり着いた。


 お約束通りの正面に螺旋階段。そしていくつもの立派な装いのドアが並ぶホールで誠達は立ち尽くした。


「お待ちしていましたよ!ベルガー大尉、誕生日おめでとう!」


 螺旋階段を悠然と降りて来るかえではいつもの『特殊な部隊』の制服では無く、フリルの付いたシャツにベルベットの青いベスト、そして赤い乗馬ズボンと言ういで立ちで誠達の前に現れた。


「ささ、そんなところに立っていてもなんだ。応接室にご案内しよう」


 かえでは誠達の前まで来ると二人のメイドを引き連れて奥にあるひと際大きなドアに向って歩き出した。



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