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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第四十一章 宝石よりも美しい

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第177話 タイミングの良すぎる人

「あの餓鬼!タイミングよすぎ!こんなタイミングで本人から通信……笑いが止まらねえや!」 


 かなめはそう叫びながら笑う。アメリアも必死に笑いをこらえながら立ち上がるとそのまま携帯端末の画面を起動した。起動した画面に映っていたのが幼い面影の副部隊長のランだったところから、それを見たとたんに思い切りアメリアは噴出した。


『は?何やってんだ?どーせアタシの噂でもしてたんだろ?聞くのが嫌だから聞かねーけど』 


 こちらの話題などはまるで知らないランが、ぽかんとした表情で画面に映っていた。


「いえ……別にこちらのことですから」 


『ふーん』 


 ランはそう言うと不満そうな顔で画面をじっと見つめていた。ちらちらと視線を動かすのは画面の端に映っているこちらの宴会の食事が気になっているのだろうと誠はなんとなく萌えていた。


「何にも無いですよ、別に何にも……」 


『西園寺がそう言うところを見ると、アタシのことでなんか噂話でもしていやがったな?どうせ言ってる内容は想像がつくから詮索しねー。出来た上司だろ?アタシは』 


 そう言うとランは苦笑いを浮かべた。その穏やかな表情を見ればこの通信が緊急を要するものでないことはすぐにわかった。誠はとりあえず飲もうとして口に持っていったグラスをテーブルに置いた。


『まあ、あれだ。隊長から止められてお祝いにいけなかった連中からなんだけど、おめでとうってカウラに伝えとけってことだから代表してアタシが連絡したわけだ』 


 誠は欠勤扱いを受けたとしても意地でも乱入しようとする二人、サラと菰田のことを思い出した。そしてそれを取り押さえるラン達の姿を想像して渋い笑みを浮かべた。


「ご苦労様ですねえ、副長殿」 


『は?クラウゼ。テメーが休みを取りたいとか色々駄々こねたからこうなったんだろうが?ったく誰のせいだと思ってんだよ』 


 ランは苦笑いを浮かべつつ愚痴った。とりあえず音声だけを聞けば彼女はどう見ても小学校二年生にしか見えない事実は忘れることが出来た。だが目を開いた誠の前には明らかに子供に見えるランの姿があった。


『でだ。30日にサラが隊としてのカウラの誕生日のお祝いをしたいとか言うからさあ……』 


「え?私達は非番じゃないですか!」 


 アメリアの声の調子が高く跳ね上がった。そしていつでもランの意見を論破してやろうと言う表情でアメリアが身構えるのが誠にはこっけいに見えて再び噴出した。


『別に仕事しろとは言わねーよ。なんでも面白い見世物があるんだと。それとおせちに使える野菜を収穫したからそれも渡したいとか言ってたぞ。丁度大みそかにおせちを準備するのにも良い日取りだ。まあ、オメー等におせちを作る技量があればの話だがな』 


 ランの苦笑いは消えることが無く続いた。アメリアは頭を掻きながらドレス姿のカウラを見つめた。


『あれ?そこにいるのは……誰だ?』 


「私です!クラウゼです!」 


 半分やけになったようにカウラは振り向いた。ランはそれを見てぽかんと口を開いた。


「凄いでしょ?これ全部かなめちゃんのプレゼントなんだって!」 


 アメリアの声を聞いてかなめは胸を張った。そしてしばらく放心していたランだが、次第に底意地の悪い笑みを浮かべ始めた。


『なんだ?まったくもって『馬子にも衣装』の典型例じゃねーか。似合うとかに会わないとか言うより衣装に着られてる感じだなその様子だと』 


「失礼なことを言うのね、ランちゃん。レディーにそんなことを言うもんじゃないわよ!」 


『いやーすまん。つい本音が出ちまった』


 アメリアの言葉にランは素直に頭を下げた。そして誠は今のタイミングだと思って椅子から立ち上がると二階に上がる階段を駆け上がった。


 誠は飛び込んだ自分の部屋の電気をつけた。そしてすぐに机の上のイラストを入れた小箱を手に取ると再び階段を駆け下りた。


「おう!来たぞ、神前だ」 


 画面を通して上官が見ているというのに、スパーリングワインを空にしてさらに赤ワインに手を伸ばしていたかなめが顔を上げた。


『なんだ?さっき言ってたイラストか?』 


 ランも興味深そうに誠の手の中の箱に目をやった。その好奇心に満ちた表情はどう見ても見た目どおりの少女にしか見えなかった。


「それは……」 


 ドレス姿のカウラは動きにくそうに誠に振り返る。誠はそのまま箱を手に持つとカウラに突き出した。



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