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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第四十一章 宝石よりも美しい

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第176話 誕生日パーティー

 誠がぼんやりとその様子を見つめていると、にこやかに笑うかなめの視線が誠を捉えた。


「そこの下男の方。お姫様を席に案内してくださいな」


 かなめは上品なモードで誠にそっと語り掛けた。 


「下男?僕がですか?」 


 かなめの言葉にしばらく戸惑った後、仕方なく誠は椅子から立ち上がると隣の椅子を後ろに引いた。静かに慎重に歩くカウラ。そして彼女が椅子の前まで来たところで椅子を前に出した。カウラは静々と腰を下ろした。薫はいかにもうれしそうにその様を眺めていた。


「下女の女芸人さん。ワインがまだでしてよ。まったくグズなんですわね。役に立たない使用人を持つと主人としても困りますわ」 


 そこまで言ったところでアメリアのチョップがかなめの額に突き立った。


「ふ・ざ・け・る・の・はそのくらいにしなさいよ!」 


 結局6回チョップした後、アメリアは言われるまでもないというようにワインを注いでいた。食事が揃い、酒が揃い、ケーキも揃った。


「なんなら歌でも歌う?ハッピーバースデー~とか言って」 


「それは止めてくれ。恥ずかしくて死にそうになる」 


 アメリアの提案にカウラは真剣な表情で許しを請うた。アメリアとかなめはがっかりだと言う表情で目の前のワイングラスを見つめているカウラを凝視していた。


「それじゃあ!」 


 満面の笑みの薫が手にグラスを持った。それにあわせるように皆がグラスを掲げた。


「カウラさん、誕生日おめでとう!」 


『おめでとう!』 


 薫の音頭で宴が始まった。一口ワインを口にしたかなめは、さすがにお嬢様ごっこは飽き飽きしたと言うようにいつもの調子で肉にかぶりついた。


「また下品な本性をさらけ出したわね」 


 アメリアはそう言いながらかなめが肉に夢中で乗ってこないとわかると、仕方がないというようにピザに手を伸ばした。


「そう言えばローソクとかは立てないんですか?」 


 誠のその言葉にカウラはものすごく複雑な表情を浮かべた。彼女は培養ポッドから出て今日で9年しか経っていないと言う事実が誠達の頭にのしかかった。


「なに?9本ろうそくを立てるの?それならランちゃんを呼んで来ないと駄目じゃない。ランちゃんにならちょうどいい感じになるかも知れないけど」 


 ピザを咥えながらのアメリアはそう言い放った。しばらく誠はその意味を考えた。


「見た目はそのくらいだからな。中佐は」 


 二口目のワインを飲みながらカウラはそう言った。次の瞬間にはかなめがむせ始め、手にした鶏の腿肉をさらに置くと低い声で笑い始めた。


「笑いすぎよ、かなめちゃん」 


 呆れた調子でアメリアは体を二つ折りにして声を殺して笑うかなめに声をかけた。


「馬鹿……思い出したじゃないか……あのちび……9歳だって……もう4億年は生きてるのに……」 


 カウラも呆れるほどかなめは徹底して笑い続けた。しかし、突然アメリアが腕から外してテレビの上に置いていた携帯端末が着信を告げた。それを見ると誠もカウラもかなめもアメリアも顔を見合わせて大笑いを始めた。



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