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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第四十章 パーティーが始まる

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第172話 離れない仕事の話

「例の演操系の法術師の件はお前にも連絡が無いのか?そればかり頭の中をめぐってしまうんだ。それが解決すれば仕事の話はしばらく忘れられる。教えてくれ」 


 みかんを剥き終えてカウラは今度は白い筋を取り始めた。アメリアは呆れ果てたと言う表情を一瞬浮かべた後、真面目な表情でカウラを見つめた。


「もし、私達に連絡が必要なような事実が出てきているのなら、私がここにいるわけ無いじゃないの。一応佐官なのよ。責任者として呼び出しがかかってもいいような心の準備はいつもしてるわよ。今のところ新しい情報は無いわね。あんな突然の一瞬の出来事。誠ちゃんが察知できたこと自体が奇跡に近い事なんだもの。すぐに分かるわけないじゃないの。これでいいでしょ?仕事の話は以上で終了」 


 そう言って剥いていた二つ目のみかんを袋ごとに分け始めた。


「そうだよな……仕事の話は忘れたい。でも一度引っかかったことはどうしても頭から離れないんだ」


 カウラは悩みを打ち上げるカウンセリングを受ける患者のような表情でそう言った。 


「なあに?そんなに仕事がしたいわけ?それじゃあカウラちゃんは一生人造人間のままよ。培養液の中にいるのと今と、変わってないじゃないの。戦うことと子供を産むためだけに作られて戦って子供を産んでそして死んでいく。それだけで良いの?カウラちゃんは?違うでしょ?あなたはラスト・バタリオンの最終期型。旧型の私のたどったような運命をたどって欲しくないのよ、カウラちゃんには」 


 そう言ったアメリアの表情はいつも違って真剣なものだった。誠はその初めて見る悲しげで冷たいアメリアの表情にみかんを剥く手を思わず止めていた。


 しかしそれも一瞬でいつものような能天気な笑顔がアメリアの顔に浮かんだ。


「今は楽しむこと。これは上官の命令。絶対の至上の命令よ。聞けないならランちゃんに告げ口するからね」 


「何を告げ口するんだ?」 


 そう言ったカウラの口元には笑みが浮かんでいた。


「カウラちゃんが誠ちゃんと変なことをしたって」 


 その言葉に思わず誠は口の中のみかんを吹いた。


「変なことって……なんだ?」 


 カウラは理解できないというように首を傾げた。それを見ながら誠はようやく息を整えることが出来た。だが得意顔のアメリアと次第に不機嫌そうな顔つきになるカウラの間で実に微妙な立場になったものだと、自然と苦笑いが浮かぶのを止めることは出来なかった。


「そりゃあ、純情なランちゃんが真っ赤になるようなこと。そう言うことで良いかしら?」 


 アメリアの目が誠に向かった。あまりに唐突な話題に誠は目を白黒させるだけだった。


「まあ、誠は奥手だから……でも『許婚』が居る誠ですから。私はあまり変なことをするのは許しませんよ。かえでさんもたぶん許さないと思いますし」


 薫はそう言って笑いかけた。


「かえでちゃんの興味があるのは誠ちゃんの童貞でしょ?それ以前の段階ならむしろかえでちゃんは喜ぶんじゃないかしら」


 薫の言葉にアメリアはそう返した。話題の誠本人は話がまたあの明らかに変態なかえでの話が出てきたので苦笑いを浮かべるしかなかった。母親にまでそんなことを言われて誠は顔が赤くなるのを自分でも感じていた。



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