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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第三十九章 帰宅時間が来て

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第170話 人造人間の幸せ

「でも……カウラちゃんは幸せものよね。産まれたことをこんなに歓迎してくれる人がいるなんて。私なんてアイツ等にとっては人間扱いどころか単なるおもちゃ以下の存在だった。……思い出しただけで嫌な気分になるわ」 


 アメリアは急にしんみりした調子でつぶやいた。誠は突然の変化に対応できずに立ち尽くしてしまった。


 アメリアは抵抗活動を続けるネオナチの施設でロールアウトした。そこで待っていたのは戦闘と男達による凌辱の日々だった。そこに歓迎と言うようなものは存在しなかった。そのことを知っている誠はただ黙り込んで静かに黙っているアメリアを見つめていた。


「幸せなのかな……私は。確かにアメリアの様に不幸では無いのは確かだが、幸せだと言う実感は無い。でもそれを幸福と言うのなら私は幸せだ」


 戸惑ったようなカウラの言葉にいつもの明るいアメリアではなかった。何かひどく暗い表情。誠はしまったと思いながらうなだれた。


「まあそんなことどうでもいいじゃないの。それよりお肉なくなっちゃうわよ」 


 そう言うとアメリアは手早く手を拭ってそのまま台所に向かった。


「ちょっと!それ!」 


 洗面所を出たとたんにアメリアの叫び声が響いた。頭を掻きながら台所に顔を出した誠の前に、誠の方をタレ目でちらちら見ながら猛然と肉にかぶりつくかなめの姿があった。


「早い者勝ち……まあどうしてもと言うなら食いかけのこれを」 


 すぐにかなめの後頭部をはたいたのはカウラだった。アメリアはいつものかなめに対する突っ込みを先にカウラにやられて少しばかり驚いたような表情を浮かべていた。カウラもなぜそんなことをしたのかと言うようにきょとんと立ち尽くしていた。


「皆さんには好評みたいだから。誠のはあとでね」 


 そう言うと薫は流し台の隣の大きな袋に詰められた鶏肉に向かった。母のそんな姿と肉にがっついているかなめとアメリアを苦笑いを浮かべながら見つめる誠だった。


「おい、そういえば例のプレゼントは?」 


 早くも二本目の鳥の腿を食べ終わったかなめが思い出したようにそう言った。誠はにんまりと笑みを浮かべた。自分でもそれが自信に満ちているのを感じていた。


「当然もう出来てますよ。ちゃんとプレゼント用に包装もしましたし」 


「え?事前に見せてくれないの?」 


 アメリアの好奇心むき出しの言葉に誠は照れ笑いを浮かべた。そんな彼を楽しそうに見つめながらカウラはかなめが残した最後の肉をむさぼった。


「事前に見せたらまた色々突っ込みを入れるでしょ?」 


 アメリアが余計な口出しをしてくるのが嫌だったので誠は思わずそう口走った。


「突っ込みじゃないわよ!アドバイス。純粋に観賞する者としての要望を述べているだけよ」 


 ワイルドに間接の軟骨を食いちぎりながらアメリアはそう言って笑った。


「まあいいか」 


 そう少しさびしそうに言うと、食べ終わったかなめが肉をタレとなじませる為に肉の入った袋を揉んでいる薫の隣の流し台で手を洗った。


「そんなところで作業の邪魔をして……」 


「いいだろ?きれいになったんだから。それと神前、アタシはこれからちょっと用があるから」 

 

 そう言ってかなめはそのまま台所を出て行った。


「まったく勝手ばかり言って……」 


 そう言いつつ、かなめの完全に骨以外残さずに食べた鳥の腿肉を参考に、アメリアは軟骨を食いちぎり続ける。カウラはそんなアメリアとただ立って笑顔を浮かべているだけの誠を見ながら、満足そうに手に握っている腿に付いた肉を食べていた。


「そう言えばアメリアさん。ケーキとかピザとかはどうしたんですか?」 


 骨を咥えているアメリアに誠は声をかけた。アメリアは静かに口から骨を出して、そのまま待ってましたというような笑みを浮かべた。


「私に抜かりがあるわけないでしょ?当然、手配済み。もうすぐ配達の人が来る手はずになっているわ」 


「じゃあ何で西園寺は……」 


 カウラは引き戸を開けて出て行ったかなめの後姿を見るように廊下に身を乗り出した。


「さあ?私は知らないわよ。それにしてもこんなにお肉があるなんて……ピザちょっと頼みすぎたかしら?」 


 そう言うとアメリアは手にした骨を、かなめがきれいに食べつくした鶏肉の骨の上に並べた。


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