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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第三十六章 色々あった時代

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第158話 かけがえのない旧友

「運動部の練習か。みんな真剣にやっているな……どこだ?野球部は」 


 カウラがそうつぶやいたのは、ミットでボールを受ける音が響いてきたからだった。うれしそうな表情のカウラに誠は安心したように目をやった。エメラルドグリーンの髪が北風にたなびいていた。


「どうした?先に行くんだろ?」 


 立ち止まって見とれていた誠とカウラは視線を合わせた。思わず誠は止まっていた足を再び進めた。部活動棟のプレハブの建物が尽きると都心部の学校らしく狭苦しいグラウンドが柵越しに見ることが出来た。


 グラウンドの中央を使って練習をしているのはサッカー部員。センタリングからシュートへつなげる練習を繰り返していた。奥でダッシュの練習をしているのはラグビー部員。こちらは全国大会の出場経験もあり、態度が大きかったのを誠も思い出していた。


「あそこか……ずいぶん肩身が狭そうだな」 


 カウラが目をやったのはグラウンドの隅の隅。5、6人の野球のユニフォームを着た選手がキャッチボールをしているのが見えた。


「9人いないんじゃないのか?あれでは試合にならなだろ」 


 呆れているようなカウラの声に昔を思い出す誠がいた。進学校にありがちなことだが、練習の出席率はひどいものだった。誠の時代も予備校に通っていない生徒は誠一人。部活動より予備校が優先と言う伝統があって普段は部員の半分は練習を休むのが当たり前だった。


 それ以前にこの狭いグラウンドである。まともに外野の守備練習が出来るのは週に二、三回だった。


「どうだ?注目の後輩とかはいるのか?」 


 笑顔で尋ねてくるカウラに誠は苦笑いを浮かべた。誠はその張り付いたままの愛想笑いを浮かべるとそのまま裏門に向けて歩き始めた。


「鶴橋!僕だよ!神前だ!」 


 誠は裏門から見えた太った白いユニフォームの男に声をかけた。振り向いたメガネをかけた若者は誠の顔をすぐに思い出したように近づいて来た。


「ああ……なんだ、神前じゃないか!久しぶりじゃないか!元気そうだな」 


 懐かしそうな瞳が誠を見つめた。この高校のOBで誠と同期の医師の卵の指導者に誠は笑いかけた。そして鶴橋はすぐに誠の隣に明らかに不似合いなエメラルドグリーンの女性を見つけた。


 すぐに表情が困惑したものに変わった。それを見て誠が苦笑いを浮かべた。それを見ると監督の目は明らかに誠を冷やかすような色に染まった。


「なんだ?クリスマスのデートで母校の後輩の指導でもするのか?そりゃあ助かるな」 


 鶴橋にぶしつけにそう言われて誠はカウラを見た。嘘のつけない彼女は完全に監督の言う通り指導するつもりのようだった。すぐにそれに気づいて自分の思惑が完全に裏目に出たことがわかった誠に出来ることは頭を掻いて照れることぐらいだった。


「どうも、初めまして」 


「え……ええ。ああ……どうも」 


 カウラの圧力すら感じる眼光に鶴橋は怯んだ。


「ええと彼女は今の職場の上司なんだ」 


 そう言ってみると監督はようやく誠が見知らぬ不思議な緑の髪の色の美女と歩いていることが腑に落ちたような顔になった。


「ああ、そうか。お前は軍に入ったんだよな。つまりこの人は例のゲルパルトの実験の関係者か何かと言うわけだ……なるほど」 


 納得がいったように頷くが、誠にはゲルパルトの医大を目指していた旧友の反応があまりにも普通の反応なので少しつまらなく感じられた。



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