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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第三十六章 色々あった時代

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第157話 懐かしい雰囲気

「じゃあ、降りましょう」 


 電車が止まり扉が開いた。誠についてカウラがドアを出て行こうとした。周りの男性客は惜しいものを逃したと言うような表情でカウラに視線を向けていた。


「やはり目立つかな。私の髪は。みんな私の方ばかり見ている」 


 ポツリとさびしそうにカウラは自分の髪を手にしながらそう言った。


「たぶんそれだけじゃ無いと思うんですけど……」 


「じゃあ何があるんだ?」 


 真剣な目つきでカウラは見上げてきた。その教科書で見たギリシャのアテナ像を思わせる面差しに、思わず誠は口を噤んでしまった。


「何を言っても良いぞ。聞くから」 


 黙って改札に向かう誠の後ろからカウラは声をかけてきた。誠は褒められるのも苦手だが、褒めるのも得意ではなかった。


 改札の機械は新しいものに交換されていたが、エレベータと階段の落書きや張り紙を消しては書かれと言う葛藤の末に曇りきってしまった壁面照明が懐かしい高校時代を思い出させた。誠は昔のような感覚で人がすれ違うのがやっとと言う狭い階段を上り始めた。 


「この出口を出たらすぐですから」 


 そう言う言葉を口にしながら久しぶりの母校のグラウンドを想像して舞い上がる誠がいた。


 地上に出ると地下鉄の構内の暖かい空気が一瞬で吹き飛んでしまった。誠は思わず襟に手をやった。カウラも首のマフラーを巻きなおした。そのしぐさに誠はどこか心引かれながら視線を合わせることも出来ずに歩き続けた。


「ここか……」 


 感慨深げにカウラは目の前のコンクリート製の建造物を見上げた。誠が生まれ育った街での受験可能な公立高校で、一応、進学実験校として知られた高校だった。それなりの歴史を刻んできた建物にカウラは一瞬感動したような声を上げた。


「高校と言うと豊川にはいくつあったかな?」 


 カウラは突然そう言い出した。誠は指を折って数えようとした。


「まあいいか」 


 カウラはいつになく楽しそうな表情を浮かべていた。誠はその期待に答えるべく、慣れた足取りで歩き始めた。


 足は昔の道を覚えていた。学校の横のわき道。あまり人が通らないのか、歩道のブロックからは枯れた雑草が顔を出していた。その上を誠は確信を持った足取りで歩いた。



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