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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第三十五章 二人だけの散歩

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第152話 闖入者付きの朝

 誠は息苦しさで目を覚ました。そしてそのまま思い切り腹筋でもするように起き上がった。


「おう!起きたか」 


 ベッドの隣には手を引っ込めてうれしそうな顔をしているかなめが立っていた。起きる寸前の感触からして誠の鼻と口を押さえて呼吸が出来ないようにした感じがした。


「死んだらどうするんですか!」 


「死んでないじゃん」 


 そう言うとそのままかなめは誠の机の上に置かれたリボンの巻かれた平たい箱に目を向けた。昨日睡魔と戦いながらなんとか包装まで済ませたカウラへのプレゼントのイラストがその中に入っていた。すぐに誠は手を伸ばそうとするがかなめはただにそれを珍しそうに見ているだけだった。


「オメエ器用だよな。こんなものまで用意していたのかよ。用意が良いと言うかなんと言うか……」 


 かなめは誠の細かい気づかいに感心したように頷いた。誠はとりあえずベッドから起き出すと布団を直した。


「着替えますから」 


「そう」 


 かなめはまるで誠の言葉を聞かずにただじっと平たい箱を見つめていた。中にはカウラのイラストが額に入ったものがあった。


「着替えるんです」 


「勝手にすれば?別にアタシは気にしないけど」 


 相変わらずかなめは出て行く様子がない。誠は頭を掻きながら箱から目を離さないかなめに何を言うべきかしばらく考えた。


「かなめちゃん!何やってるの!」 


 明らかに襖の外で様子を伺っていたらしいアメリアが飛び出してきてかなめの腕を引っ張った。突然のアメリアの登場にかなめは明らかに驚きながら抵抗した。


「おいおい!アタシは何もしてねえぞ!ただちょっとコイツと遊んでやってただけだ!」 


「十分やったじゃないの!誠ちゃんの口をふさいだりとか!誠ちゃんが死んだらそれこそどうするのよ!」 


 アメリアの言葉にかなめは抵抗も出来ずにずるずると引っ張られていった。誠は苦笑いを浮かべながら二人を見送った。そして襖が閉められたのを確認すると、さっさとパジャマを脱ぎ、たんすの前に立った。そこで少し考えた。


「……カウラさんの誕生日……か……」 


 カウラの誕生日であるクリスマスイブ。いつもの紺のセーターと言うわけにも行かないような妙に晴れ晴れしい気分が感じられた。だが、誠はおしゃれに金をかけたことは一度もなかった。当然それらしいと思えるような服は持っているわけもない。


「まあ、いいか」


 そう言うと誠はすばやくたんすの奥の緑色のセーターに手を伸ばした。本当になんとなく、カウラの髪の色に連想した色のセーターに満足するといつものジーンズ、いつもの下着、いつものシャツを着てセーターを着た。


「なんだかなあ」 


 鏡もない部屋。誠はただ自分に呆れながら襖を開けようとした。そして部屋の机の上の白い箱を見た後自分でも気持ち悪い笑顔を浮かべているだろうと想像しながら階段に向かった。



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