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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第四章 仕事と遊びの境界

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第15話 仕事をサボりたがる艦長

「じゃあがんばれよ。アメリア!アタシ等は取り合えず報告に行くぞ」 


 いつの間にかアメリアの後ろに回りこんでいたかなめがアメリアの首根っこをその強靭なサイボーグの右腕でつかまえた。


「わかっているわよ……でもランちゃんは?今日は確か非番だったような気がするんだけど」


 アメリアはかなめのされるがままにしながら、いぶかしげな表情でかなめを見つめた。 


「ああ、ちっちゃい姐御は今日は非番だな。代わりに前任者だったタコが来ていたぞ。なんでも本局の定期視察だそうだ。まったく本局のでかい部屋でふんぞり返るとは良い身分だな、タコも。こんな田舎から東都に出ていってさぞすっきりした気分だろうよ」 


 かなめはそう言うと空になったポテトチップスの袋を口に持っていった。


 クバルカ・ラン中佐。彼女は現在の司法局実働部隊隊長にして副長を兼ねる部隊のナンバー2の位置にある士官だった。見た目はどう見ても目つきの悪いお子様にしか見えない彼女だが、先の遼南内戦の敗戦国遼南共和国軍のエースとして活躍した後、東和に亡命してからは東和陸軍の教導部隊で指導していた。そして、その実績を買った嵯峨が無理を言ってこの司法局実働部隊にスカウトした『特殊な部隊』にはふさわしくないほどの実績のある人物だった


 一方のタコと呼ばれる司法局の本局勤務の実働部隊担当の士官である明石(あかし)(きよ)()中佐は遼州の内側を回る惑星甲武国出身の学徒兵あがりの苦労人だった。誠はあまり会う機会が無いが、ランの前任の機動部隊長で、野球と酒をこよなく愛する大男だと聞かされていた。


「タコが相手なら報告は後で良いや。アイツいい加減だし。とりあえず射撃レンジで本物の銃を撃ってくるわ。訓練場のエアガンは撃ってて撃った気がしねえんだ。ここは実銃を撃ってすっきりしねえとな」 


「おう、ワシのこと呼んだか?それと西園寺の嬢ちゃん。弾の無駄はやめてんか」 


 腰の拳銃に手をやったかなめの後ろに大きな影が見えて誠は振り返った。長身で通る誠よりもさらに大きなそして重量感のある坊主頭の大男が入り口で笑みを浮かべていた。


「タコ。なんでこんなところにいるんだよ?ちゃんと視察は視察らしく管理部の高梨さんにでも挨拶してかなきゃ駄目だろうが」 


 さすがに気まずいと言うようにかなめの声が沈みがちに響いた。


「高梨参事へのあいさつなんぞ、ここに来た時に最初に済ませとるわ。何ででも何もないやろ。アメリアにええ加減にせんかい!って突っ込み入れに来たに決まっとるやなかい。ワシ等は遊びでここにおるんとちゃうんや。ちゃんと待機と言う仕事をしとるんや。そこんとこはき違えてやれ、ゲームだお笑いだ抜かしとる駄目艦長を叱りに来たに決まっとるやろ」 


 どすの聞いたまるでやくざを思い出されるような口調で明石はアメリアを怒鳴りつけた。


「アメリアか……アイツはいくら起こっても無駄だぜ。アイツの辞書に反省と言う文字はねえから」 


 振り向きもせずにかなめが奥を指差す。左手を上げて明石に手を振るアメリアがいた。


「一応、準待機言うても仕事中なんやで。少しは体調を考えてやなあ。遊んでて過労死しても労災にはならんのやで。そこんとこようくわきまえときや」 


 明石はあきれ果てたようにアメリアに向けてそう言った。誠ももっともだと思いつつ、なんとか明石の説得でゲームの原画修正地獄から逃げられることを切に願っていた。


「去年の春の部隊創設初の草野球の試合でバックネットに激突して肩の筋肉断裂って言う大怪我居ったキャッチャーがいたのは……どのチームかな?おかげでうちのチームはそれ以来キャッチャーが固定できなくて苦戦してるんだ。ああ、その直後に本局に異動になったんだ、そのキャッチャー。名前は明石……」 


 かなめのあてこすりにサングラス越しの視線が鋭くなるのを見て誠は二人の間に立ちはだかった。明石もかなめの挑発はいつものことなので一回咳払いをすると勤務服のネクタイを直して心を落ち着けた。


「西園寺の姫さん。余計なこと言わんといて下さい。ああ、ワレ等の室内訓練終了の報告な。顔さえ出してくれりゃええねん。取り合えずデータはアメリアが出しとるからな。それにしても嵯峨の大将相手とはいえ……まるでわややんか。ほんまになんか連携とか、うまく行く方法、考えなあかんで」 


 そう言って出て行く明石にカウラと誠が敬礼した。かなめはタレ目をカウラに向けて笑顔を浮かべていた。


「ここで暴れるんじゃねえぞー!やくざと軍隊は同じ鉄砲持っててもやっていいことに違いがあるんだからなー!」 


 かなめは去っていく明石の背中にそう言い放った後、再び端末のキーボードを叩き始めた。



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