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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第三十三章 法術を扱う黒幕

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第143話 背後で動くもの

「いいんですか?実験対象を生かして置いちゃって。こう言うのは証拠を消しておかないと。後々厄介ですよ」 


 暖房の暖かさに皮のジャンバーを脱いでトレードマークの赤いアロハシャツのすそを気にしながら、北川公平は手にした日本刀を持ち主である桐野孫四郎に返した。右手の端末から目を離して柄を握った後、切っ先を見た桐野の表情が曇った。


「刃が傷ついてる。コンクリでも掠めたか?」 


 その冷たい言葉に北川は背筋に寒いものを感じてすぐに頭を下げた。


「まあ……すいません。何しろとっさなことだったんで」


 北川は桐野の殺気を感じて下げたくもない頭を下げた。 


「借りたものは大事に使え。これは俺の命も一緒だ」 


 それだけ言うと桐野は手にした日本刀を鞘に収めてそのままソファーに体を横たえた。


 彼等がいる部屋はすでに夕暮れの予感を漂わせていた西向きの広い応接室だった。黄色く色づき始めた夕日の下には、中規模のオフィスビル達が行儀良く並んでいる様が窓からも見えた。そしてそれに対する圧倒的なほどの視線の高さが、彼等のいるビルの大きさを示していた。


 ノックの後、ドアが開いた。


 現れたのは長髪の若い男と、灰色の背広姿のメガネをかけた重役風の老境に達しようとしている男だった。そのおどおどとした態度で彼がどれほどの無理をして今の地位まで駆け上がったのかを想像するのは北川の楽しみの一つだった。


「ゲルパルトの狂信者達の実験は終わったようだな」 


 北川よりも頭一つ大きい長髪の男はそう言うとそのまま窓辺までまっすぐと歩いていった。彼の真意がわからず、重役風の男は入り口近くで身を正すようなたたずまいで立ち尽くしていた。


「ああ、陛下の思ったとおり演操系の法術は察知するのが難しいらしい。あの神前とか言うアンちゃんも北川の馬鹿が手を出さなければ気づく様子も無かっただろうな」 


 そう言うと桐野は端末の画像を拡大した。そこにはデパートのレストランの警備用カメラの画像が映っていた。通り魔事件の実行犯に仕立て上げられた哀れな大学生が、ダウンジャケットを着たタレ目の若い女に銃で腕を撃ち抜かれる様が何度と無く繰り返されていた。


「でも……良いんですか?俺が手を出さなくてもゲルパルトに納品した姉ちゃんの所業は遅かれ早かればれますよ。同盟司法局の法術特捜捜査官嵯峨茜警部は親父と同じでなかなか食えないって話ですしね」 


 北川は感情を押し殺そうと必死に入り口で耐えている老サラリーマンの様子をちらちらと観察していた。そんな中、再び音も無く扉が開き、恰幅のいい老人が現れた。


 老人の表情はすべてを理解していると言うようすで満足げな笑みを浮かべていた。



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