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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第三十二章 ありふれた事件

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第141話 任務終了の後に

「大丈夫ですか?もう安全です……西園寺さん……」 


 二人にしがみつかれながら誠は犯人の拳銃を手にとって笑っているかなめを見つめた。だが、時折誠をちらちら見つめる視線にはどこと無く殺気のようなものが漂っていた。


「大丈夫ですから!もう終わりましたから!」 


 少女達の頭を誠は自然になでていた。そこでさらに黙って慣れない借り物の銃の安全装置をチェックしているカウラも厳しい視線を誠に向けてきていることに気づいた。そんなカウラの表情に気づいたかなめは満足げに犯人から奪った拳銃をかざして見せた。


「馬鹿扱いするけどな。この状態で人質に銃口向けてたんだぜ?そこであの馬鹿な犯人が引き金を引いたら人質は死ぬんだ。その状況下なら普通はこっちから撃つだろ」 


 そう言ってかなめは銃をカウラに手渡した。銃の後ろを見るとハンマーが下りた状態だった。トカレフは、シングルアクションで作動する。ハンマーが下りた状態ではいくら引き金を引いても弾が出ることは無い。胸を撫で下ろす誠だが、カウラはそうは行かなかった。


「もし貴様が撃った弾が反れたらどうするつもりだ?いつものXDM40とは違うんだぞ」 


 カウラは何かきっかけさえあればいつでもすぐ発砲するかなめに向けてそう叫んだ。


「こいつの弾道はすべて頭の中にあるからな。まず外さねえよ。アタシは生身じゃねえからな」 


 そう言うとかなめは誠にまとわり付いている二人のアルバイトに手を伸ばした。


「怖かったのか?もう安心だ」 


 手を差し伸べてくるかなめを見るとなぜか二人ともかなめにしがみついて泣き始めた。かえでをはじめかなめは同性をひきつけるフェロモンでも出ているんじゃないだろうか。誠はかなめにしがみつく二人の少女を見てそう思いながら手にした銃の置き場に困っていた。


 それを見て大きく息を付いた後、カウラは銃口を通り魔の男に向けた。男はまだ腕を押さえたままで痛みに顔をゆがませながら倒れこんでいた。


「それでは……」 


 カウラが男を組み敷こうとした瞬間だった。誠は法術のもたらす直観に駆られてカウラと男を突き飛ばしていた。誠が感じたそれはまるで威圧感のようだった。


 男が倒れていた廊下の床が白くきらめく刃物で切り裂かれた。その床材と金属のこすれる音を感じてカウラが振り返った。


「なんだ!神前!」 


 振り返った先にできた刀傷のようなものを見て、カウラの目は驚きから状況を分析しようとする指揮官のものへと変わった。


「神前!法術の反応は!」 


 かなめの言葉で誠は精神を集中した。そしてその時いくつかの思念が遠ざかりつつあるのを感じた。先ほどまでまるで何も感じなかった自分の甘さを後悔しつつ些細な感覚も取りこぼさないようにと意識を集中した。


 先ほどの何者かの物理的攻撃を察知はできたが、その干渉空間を生み出す波動はすでに消えていた。そしてただ、痛みに痙攣する通り魔の恐怖だけが誠の脳にこびりついて離れなかった。


「さっき、僕が二人を突き飛ばした時に凄いのを感じましたが……とりあえず……今は、特には……」 


 誠はそれしか言うことができなかった。カウラとかなめが顔を見合わせた。そして床に突然できた傷に驚いて泣き止んでいた少女達がかなめにまとわりついてまたすすり泣き始めた。


「おい、カウラ。まだ下の連中は来ねえのか?」 


「はい来ました」 


 突然の声。かなめの後ろに立っていたのは手に野菜の袋を抱えたアメリアだった。


「やっぱりジゴロよねえ、かなめちゃんは」 


 二人の少女に抱きつかれているかなめをじろじろと見た。アメリアの後ろに立っていた女性警察官が毛布で二人をくるみ、彼女達がゆっくりと立ち上がるまでかなめは少女に抱きつかれながらアメリアに対する怒りでこめかみをひくつかせていた。


「なんでテメエがここにいる?」 


 そう尋ねるかなめにアメリアは自分の身分証を見せた。そして左手の指で身分証の右肩を指し階級の表示を誇示してみせた。


「まあ階級が高いといろいろと便利なの。かなめちゃんも兵隊さんなんだからわかるでしょ?」 


 満足げに笑うアメリアにかなめは明らかに食って掛かりそうな雰囲気を持ってにらみつけた。


「協力感謝しますが……とりあえず銃を」 


 そう機動隊の制服の警部補に言われてかなめは銃を手渡した。カウラが組み敷こうとしていた犯人はすでに機動隊員が取り押さえていた。出血がひどいらしく、両脇を隊員が抱えながら連行されていった。



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