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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第三十二章 ありふれた事件

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第139話 任務外出動する『特殊な部隊』

「……君達は?」 


 眉に白いものが混じる警部補が面倒にぶち当たったと言うような顔で、降り立った私服の誠達を迎えた。カウラはすぐに携帯端末に映し出される身分証を見せた。


「司法局実働部隊、ああ、あの『特殊な部隊』か」 


 あからさまに所轄の責任者の顔が不快感に染まった。デパートの方に目を向ければ、パニックを起こしているデパートから流れ出す人々を抑えるのに彼の部下は一杯一杯の状態だった。


「あと少しで機動隊が到着します。それに……」 


 関わりたくないと言う本音が丸見えの警部補にかなめはつかつかと近づいていった。


「あの……何か……?」 


 そう言う警部補の腰からかなめは拳銃を引き抜いた。そして彼女は警部補の小型オート拳銃の弾倉とベルトをつないでいた紐を引きちぎった。そして当然のように隣に立つカウラに手渡した。


「君!なんのつもりだ!」 


 突然のかなめの行動に警部補は怒りに任せてそう叫んだ。


「あんた達は使うつもりじゃないんでしょ?じゃあ必要な人間に渡すのが理の当然じゃねえの?そこのアンちゃん達!銃貸せ!アンタ等は銃は使わない方針らしいがアタシ等は使う方針なんだ。文句は司法局本局に言え」 


 ワンボックスの中で通信機器をいじっていた警察官にかなめは声をかけた。その独特の威圧感からうち二人の警察官が自分の銃をホルスターから抜いてかなめに手渡した。


「何をしようというんですか!まだ犯人は中に居るんだ。しかも他に武器を持っている可能性もある。突入は危険すぎる」 


 叫ぶ警部補の肩をかなめはなだめるように叩いた。


「安心しろ。こういうことはアタシ等『特殊な部隊』の職域だ」 


 そう言うとかなめはすぐにオート拳銃のスライドを引いて弾をこめた。カウラも同じようにスライドを引いた。誠に渡されたのは回転式拳銃だったのでそのままシリンダーを開いて八発の弾が装弾されていることを確認した。


 誠達はまずデパートの入り口に群がる野次馬の後ろに立った。手にした拳銃を見て自然と道ができ、そのまま避難してくる買い物客や従業員を整理している警官隊の後ろにたどり着いた。


「君達……司法局ですか」 


 一瞬の驚きの後またも嫌なものを見たという顔で警官がカウラの差し出した身分証をのぞき見ていた。


「状況は?」 


 早速端末を設置して中の防犯用モニターの情報を収集している女性警察官の見ていた画面をかなめは覗き見た。


「現在犯人は拳銃のようなものを振りかざして8階のレストランに立てこもっています。人質は二名。そのレストランのアルバイトの店員が取り残されて人質になっています」 


「わかった」 


 女性警察官の言葉にかなめは頷いた。すでに彼女はデパートの防犯システムとリンクを済ませたのだろう。そのまま手に拳銃を持ったままデパートの入り口に向かった。


 逃げてきた車椅子の老人や子供達の視線を浴びながらかなめは堂々と拳銃を持って歩き出した。


「05式けん銃。サイトがねえ……見にくいんだよなこれ」 


 そう言いながら車椅子を押している警察官の敬礼を受けながらかなめは進んだ。


「どうだ、状況に変化はあるか?」 


 カウラの一言にかなめは首を振った。


「モニターで見る限りど素人だな。自分の銃にビビッて今にもションベンちびりかねねえぞ。アイツ本気で何しに来たんだ?人を殺した割には自分のしたことを理解しているような様子もねえ。これだから思い付きの衝動犯は嫌なんだ」 


 司法実働部隊という看板を掲げている司法局実働部隊の一員である誠も銃を持った素人の怖さは知っていた。自分で起こした事件で勝手にパニックになる傾向が高い。そうなればむやみと発砲して人質を傷つけることにもなりかねない。


 そして誠も慣れない八連発リボルバーに当惑していた。


 銃が軽かった。おそらくシリンダーとバレル以外は軽合金で作られているのだろう。銃が苦手な誠でも手に持った時の軽さですぐ分かった。しかも先ほど装弾を確認したときに雷管の周りには『357マグナム』の刻印があった。軽い銃の反動の強さは知っているので誠は自然と緊張した。基本的に重いオート拳銃での射撃しかしたことが無い誠には、手の銃が邪魔で仕方がなかった。


 階段で避難してくる客達をかき分けてエレベータにたどり着いた。


「犯人の拳銃。モデルガンじゃないのか?」 


 上に上がるボタンを押したカウラにかなめが首を振った。


「それは無いな。カメラの画像を解析してみたが仕上げからすると密造品だ。おそらくベルルカンの鍛冶屋で作った一品だろうな。命中精度はともかく頑丈で確実に動くのがとりえの手製拳銃。さすがトカレフと言うところか?」 


 開いた扉に誠達は飛び込んだ。二人の上司の余裕を不思議に思いながら誠はしまる扉を見つめていた。



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