2話 しゃっくり魔法と少女の試験
川辺で魔物を退けた後、智明と少女は簡単に自己紹介を交わす。
少女
「私はルミナ。この近くの村に住んでる見習い魔法使いよ。あなたは?」
智明
「俺は……佐伯智明。でも、なんか若返ってるし、この体に合う名前で“トモ”って呼んでくれ。」
ルミナ
「トモね。じゃあ、トモさん――その“しゃっくりで出る微妙な魔法”は一体何?」
智明
「いや、俺が聞きたいわ! お前、魔法使いなんだろ? これ、どうにかコントロールできる方法知らない?」
ルミナは不思議そうに首を傾げるが、魔法使いとして少しは知識がある様子で、智明にある提案をする。
ルミナ
「村の魔法師匠に相談したらわかるかも。でも、今は急がないと。試験に遅れる!」
智明は「試験」という言葉に引っかかるが、ルミナが走り出したため、仕方なくついていくことに。
ルミナの案内で到着したのは、小さな村の広場。そこには数人の見習い魔法使いが集まり、審査官らしき厳つい男が腕を組んで待っていた。
審査官
「遅いぞ、ルミナ!これが最後の試験だ。合格できなければ、村の魔法使いの資格は剥奪だぞ!」
ルミナは息を切らしながら頷く。智明は話の流れを聞きながら、何となく状況を把握。
智明(心の声)
「つまり、魔法使いの資格試験ってわけか……。俺がこんなとこにいて大丈夫か?」
すると、審査官が智明をジロリと睨む。
審査官
「お前、誰だ? 試験に関係ないなら立ち去れ!」
ルミナが慌てて説明する。
ルミナ
「この人は旅の冒険者です!たまたま助けてもらって……ええと……魔法の知識もあるらしいんです!」
智明は突然振られた嘘に目を丸くする。
智明
「いやいや、魔法なんて全然知らないけど?」
審査官は鼻で笑う。
審査官
「なら見せてみろ、その魔法とやらを!」
智明はしぶしぶ、しゃっくり魔法を試すことに。
智明
「いや、出すのにコツがいるんだよ……とりあえず、水をくれ。」
ルミナが水筒を差し出し、智明は水を一気飲み。お腹が膨れたところで――
智明
「ヒック!」
しゃっくりと同時に小さな炎がボンッと出現。周囲の見習い魔法使いから失笑が漏れる。
見習いたち
「なにあれ……」「おもちゃみたいな魔法じゃん!」
だが、その瞬間、風が強まり、近くのテントが飛ばされそうになる。とっさに智明がしゃっくり魔法で焚き火を燃え上がらせ、飛ばされた布を燃やさないよう防御壁を作る。
智明
「ヒック!ヒック!」
なんとか事態を収めると、審査官は興味深そうに顎を撫でる。
審査官
「……ふむ、地味だが応用力は悪くないな。」
智明は汗を拭いながらルミナに向き直る。
智明
「だから、俺に魔法の知識はないって言っただろ……!」
ルミナ
「でも、その応用力はすごいよ!」
いよいよルミナの試験が始まる。課題は「指定された魔法を使い、敵を模したゴーレムを倒す」というもの。
ルミナは緊張しつつも呪文を唱えるが、途中で魔法が暴走し、逆にゴーレムを巨大化させてしまう。
ルミナ
「うそ、どうしよう……!」
智明はゴーレムが暴れるのを見て、しゃっくり魔法を使うことを決意。
智明
「ルミナ、俺が時間を稼ぐから、もう一回ちゃんと狙え!」
彼はしゃっくりを駆使してゴーレムの注意を引き、その動きを制限。炎を小刻みに出して足元を滑らせるなど、小技を繰り出す。
最終的にルミナが魔法を成功させ、ゴーレムを破壊することに成功。審査官も大きく頷く。
審査官
「合格だ、ルミナ!よくやった!」
ルミナは大喜びし、智明に抱きつく。
ルミナ
「トモさんのおかげだよ!」
智明
「いや、俺はただしゃっくりしただけだけど……」
エピローグ
試験後、ルミナは智明に「村を出て魔法を学びたい」と言い出す。
ルミナ
「私、もっと強くなりたい!それに、あなたと一緒なら面白そうだし!」
智明は頭を掻きながら苦笑いするが、彼女の意気込みに押されて旅を共にすることを承諾する。
こうして、しゃっくり魔法を持つ中年男と見習い魔法使いの奇妙な冒険が始まるのだった――。