1話 異世界で転生したけど、なぜか魔法がしゃっくりで発動する
佐伯智明(さいきともあき、40代後半、普通のサラリーマン)は、オフィスで資料を抱えたまま居眠りしてしまい、目が覚めると白い空間にいた。目の前には派手なローブをまとった老人が立っている。
老人
「ようこそ、異世界へ!汝を選ばれし者として転生させる!」
智明はポカンとした顔で老人を見つめる。
智明
「いや待て待て、何の説明もないのに“選ばれし者”って……俺、普通の中年サラリーマンなんだが?」
老人は笑顔で杖を振り、空中に魔法陣を描き出す。
老人
「安心するがよい。この異世界では特別な力を授けよう!」
だがその瞬間、老人がくしゃみをし、魔法陣が乱れた。
智明
「おい、今の大丈夫か!?ちゃんとした力くれるんだろうな!」
老人(焦りながら)
「もちろんだとも……多分な!」
そして智明は眩い光に包まれ、気を失う。
智明が目を覚ますと、そこは青空が広がる草原。体を確認すると、見た目が10代後半に若返っていることに気づく。
智明
「若返ってる……!いやでも、これなら悪くないかも……?」
試しに走り出してみると、体は軽く、爽快感に溢れている。
智明
「これ、ちょっと楽しいぞ……」
だが次の瞬間、突然しゃっくりが止まらなくなる。そして――
智明
「ヒック!」
しゃっくりと同時に、目の前で小さな炎がボンッと出現。
智明
「えっ!? なにこれ!? まさかこれが俺の“特別な力”……!?」
もう一度試してみようと、わざとしゃっくりを起こそうとするが、なぜかうまくいかない。
智明
「いや、これどうやってコントロールするんだよ……!」
草原を歩き回る智明。腹が減り、どうにか食べ物を探していると、近くの川辺でひとりの少女が魔物に追われているのを発見する。
少女は金髪で小柄だが、身にまとったローブからして魔法使いのようだ。しかし、必死に呪文を唱えるも魔法が発動せず、パニック状態に。
少女
「くっ……なんで失敗するのよ!」
智明はとっさに駆け寄り、しゃっくりを利用して炎を発動させようとする。
智明
「ヒック!」
――炎が小さくポフっと出て、魔物の前足をほんのり焦がす。
智明
「……なんだこれ!?」
魔物は一瞬驚いたものの、再び襲いかかろうとする。少女がもう一度呪文を唱え、今度はようやく強力な雷撃を放ち、魔物を撃退する。
少女は息を切らしながら智明を見つめる。
少女
「……何そのヘンな魔法?」
智明
「いや、俺も知りたいよ……」
こうして、少女との出会いをきっかけに、智明の異世界生活が幕を開ける。彼のしゃっくり魔法は一体どう役に立つのか――それは、まだ誰にもわからない。
エピローグ
場面転換し、天空にある神々の会議室。智明を転生させた老人が、ほかの神々に怒られている。
上司神
「君、やらかしたね? あの男に与えたの、ただの『しゃっくり魔法』じゃないか!」
老人
「いや、それが意外と大きな波紋を呼ぶかもしれないんですよ……!」
こうして智明の冒険は、予想もしない方向へと進むことになる。