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第3(1)


「ぼ、暴力行為は厳罰対象になってしまいますよ」

「知ってるわ、けど問題にならなければいいのよ」


 言いながら令嬢達は互いに目配せをしてこちらを不敵に笑いかけた。私やアンナが声を上げたとしても無かったことにするつもりだ。アンナの前に立っていた私を強引にどかして彼女達はアンナに詰め寄った。アンナも受けて立つつもりなのかじっと黙って睨んでいる。


(このままじゃ本当に問題沙汰になってしまう。どうにかして二人の気を逸らせないと…)


 そう考えると同時に体も動いて彼女がアンナをぶつより先に再び二人の間に割って入った。左手を庇うようにアンナの前に出しながら右手を上に開いて頭の中で魔法式を思い描いた。

 前世を思い出してから気付いたことだが、この世界で魔法を使うための術式、つまり魔法式だが前世の、現代で言う科学と原理がとても似ている。化学反応で起こり得ることは魔法でも、むしろ魔法の方が簡単に起こせるのだ。


(火や水を出すのは危ないしこの場では難しい。それなら…)

 そして手の平の上で小さな揺らぎが起きた瞬間、それはフラッシュのように閃光となって強く瞬いた。


「きゃあっ」

「わっ何?」

 突然の光に驚き二人の動きが止まった。

「落ち着いてください、喧嘩沙汰になったら本当に問題になってしまいますよ!アンナは私から言いますから今日のところはどうか怒りを鎮めてください」


 すると先程の光か騒ぎを聞きつけたのか話し声が聞こえ人の足音が近づいてきた。

 殺気立っていた令嬢達もどうやらうまく戦意喪失して我に帰ったらしく、きまりが悪そうに「分かったわよ」と言い捨てて急いで去っていった。

「ア、アンナここに居たら色々言われちゃうかもしれないからひとまず離れない?」

「…そうね」

 恐る恐る聞くとアンナは短くそう答え私の手を掴んだ。

「あなたに聞きたいこともあるしね、こっちよ」



 アンナに手を引かれるがままついて行き、私たちは図書室の近くにある空き教室に入った。

「この辺りは放課後自習室として開放されていてね、あんまり人も来ないから勉強するのによく使ってるのよ」

「そ、そうなのね」

「それより」適当な椅子に向かい合うように座るとアンナは机の上に腕を組んだ。

「まずとりあえず仲裁してもらったことにはお礼を言うわ。あの二人昔から何かと言ってくるのよね」

「なんで引こうとしなかったの?」

「こっちが引く理由が無いからよ、さっきも言った通り相手にしている暇もないしね。それよりもよ」

 言うなりアンナは私を見ながらずいっと身を乗り出した。


「あなたも『魔法使い』を目指しているの?」


お読みくださりありがとうございます。

ここからちょっと色々説明が入って、アンナの株が回復します。

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