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踏んだり蹴ったり

 俺は目の前に広がる広大な自然に唖然としていた。


 それは、現代日本ではもう見られないような景色で、きっと日本に住んでいたら一生見られなかっただろう。そんな感想が出るほど、俺はこの景色に圧倒されていた。


 少し高所から見えるのは、一面に広がる野原と、どこまでも続く森。


「いや……広」


 思わず出た言葉だけども、なんというか小並感がすごい。


「自然ってすごいな。こんな世界だったらスローライフもいいな……」


俺は少し前に見たスローライフ系の小説を思い出しながら、そんなことを思った。


 ところでだ、なんで俺はこんな所にいるんだろうか。

……遡ること数時間前。




 自分のことは平凡だと思っている。特に目立つ特技もない、外見も普通だ。


 でもまあ、それなりに平和で大人しく学校生活を謳歌しているので、文句という文句は見つからない。誰に対しての文句を言おうとしているのかはわからないが。


 というか、もうすぐ高校生活が始まって2ヶ月が経つけど、彼女ができる気配も一切ない。

……いや、まあモブすぎて眼中にすら入らないのは分かるけども!!最近陽キャの男子は彼女ができたみたいだった。


 あと5ヶ月以内にできないようであれば、リア充撲滅爆破教に入信してやる。


 あまりにも情けない宗教に入ることを誓っていると、頭上からガコンと何かがずれるような音がした。

 そしてそれは上から風を切って落ちてきた。……う〜ん、そういえばここは今工事中だったな。


 あ、やばい。まじでやばい!これ俺目掛けて一直線じゃんか!


「あ、ちょっまっ」


 俺の意識はとてつもなく大きな衝撃を感じて、闇に落ちた。





・・・・・・





 俺は肌に触る優しいそよ風や、聞こえてくる鳥の囀り、木の葉が擦れる音を聴いてふと目を開けた。


 すると、そこには大きな木々が並んでいる。そして現在俺が寝ている場所を確認してみると、芝生の上みたいだ。


……なるほどなるほど?


……うんうん。


……は?


 いや……は?


 おかしいよね!?


 目覚めてから状況を理解するまでに約2分。

 意外と早い方なのかもしれないが、状況を理解した上で混乱しているので、ただの普通の人である。


 とりあえず状況を整理するために周りを見てみよう。


 現在俺が座っているのは、周りより少し大きな木の下だ。

 そしてここの一部は不思議なことに開けているので、木漏れ日がとても気持ちいい。ずっとこうしていたいのは山々なのだが、そうもいかない。

 このまま夜になってしまった場合、野生の獣が活発になるかもしれない。


 だいたいの話だ、ここはどこなのだろうか?それが分からない以上、無闇矢鱈に歩き回ると危険だ。歩き回って迷いでもしたら、目も当てられない。


 ただここでずっと過ごしても餓死するだけ……。

 結局、まずは周囲を探索するしかないのだ。




 思い至ったらすぐに行動!ということでまずは、森の中で比較的歩きやすそうな場所を歩く。

 なるべく息を潜めて行動した方がいいと思い、ひそひそしながら真っ直ぐに進んでみる。


 10分ほど歩いてみると、前方から何かが戦う音が聞こえる。

……獣同士で争ってるのかな?


 正直、ここで俺に標準が向くのは本当に避けたい。俺は今武器を持っていないので、逃げるまたは食われるしか選択肢がない。


 まだ餌にはなりたくないであります。


 だけど、明確に敵を知れるのは大きい。

 何がいるのかも分からない森を彷徨い続けるよりも、何がいるのか把握した状態で彷徨うほうがまだマシだろう。


 ということで、いまだに続いている大きな音の正体を確かめるべく、木々の隙間から覗いてみる。


……俺は理解ができなかった。いや、正確に言えば知っているのだ。知っているのに、現実でそれを目にして理解が追いつかなかったのだ。


 それは、でかい+火を吹く赤い熊と、槍のような風を飛ばして迎撃する銀色の狼だった。


……ふぅー。お、落ち着け!落ち着くんだ俺!


「えーと……あれ魔法じゃね??」


……まじかー。興奮を通り過ぎて頭が冴え渡ってきた。

 とりあえず正体は分かった。衝撃の事実も確認した。次にすべき行動は当然、逃げる一択!!


 5分ほど歩いてあの場から離れると、一息吐く。



 いや無理っすわ!あれは無理!!多分剣持ってても勝てねえよ!?まあ剣ないけど。


 どーしよ。あんなんうろうろしてる森で彷徨い続けるとか、死を刻一刻と待つのと一緒ですわ。


「あー……詰んだ。これは詰んだ。俺も魔法使えたらいけそうだけど」


 現実は無情である。俺は空に向かって、ファイアーボールだのなんだのと言ってみたが、あえなく失敗に終わった。


 そう、俺は魔法の使い方を何一つ知らないのだ。アニメとか漫画とかでやってる方法じゃできないのか?


 色々と考えながらふと周りを見渡すと、一部の木々の隙間から空が見えた。


 俺は引き寄せられるようにそこに歩いて行くと、そこは森が切れた崖だった。


 だが、そこから見えた景色はまさに絶景だった。





 ・・・・・・





 ということで長い感想が終わった訳だが、前世パート少なっ。

 俺の死ぬ前がめちゃくちゃ薄いことに、悲しくなってしまう。


 だがまあ少なくてもこの世界が日本じゃないことは確定している。それは赤い熊と、風を操る銀色の狼を見たらわかることだ。


 少なくとも、もといた世界の日本にはそんな生物いなかった。


 本当まじでどうしよう。何度目かは分からないが、武器が欲しい。なんもないのやばいでしょ。

 あといい加減喉が渇いた。お腹も空いた。食料も水もないようじゃ本当に餓死一直線だ。


……いや待てよ?さっきの場所に行けば、少なくても火は手に入るかもしれない。



 ということで、戻って行こうとしたところで目の前には赤い熊がいます。

 っすぅー。あなた勝ったんすねー!おめでとうございます!


「あ、あのー?見逃したりとかは?」

『ないな』

「what?」


 俺が後ろに飛び退いたのと数瞬遅れて、目の前を鋭利な爪が通り過ぎた。

 やばいやばいっ!まじでやばいっ!


 予想よりも攻撃が早い。

 今躱せたのは、間違いなく奇跡レベルだった。

 いやさ、というかさ。


「なんで喋れんだよ!あと会話できるなら見逃せやっ!」

『ふん』

「あほー!!」


 俺がなんと言おうが、容赦なく攻撃してくる赤い熊はいつか絶対復讐してやろう!


 木を上手く使い横に回避し続けていると、痺れを切らしたのかついに口を開き、その口から炎が飛び出した。


『焼けて死ね』


 俺は咄嗟に後ろに向かって走ることで、避けることができた。俺の代わりに焼けた木はボロボロだ。

 ほんまに申し訳ないです。


 というか、相手に背を向けるのは本来まずいと言われていたが、あの判断をしてなかったら広範囲のブレス攻撃で燃えていた。


 正直冷や汗がさっきから止まらない。こんな身近に死を感じているのは初めてだ。


……落ち着け。まず勝つのは100%無理だ。かといって逃げるのも、熊相手では現実的ではない。それに相手には魔法があり爪という武器があるのに対して、俺は武器なし魔法なし体力なしときた。


 状況は絶望的だ。


 死ぬのは嫌だ。日本ではいきなり鉄骨が降ってきて、避けるまもなく死んだ。次は散々森を歩かされた挙句に、赤い熊に焼き殺されるとか本当についてない。神様がいるのだとしたら本当に何がしたいのやら。


 でもまあ、もう死ぬのは嫌だから頑張るとしようじゃないか!


「さあかかってこいや!クソ熊が!」

『ふん、人間が調子に乗るな』


 目の前まできた熊は、口を開き炎を貯める。


……っは!!そうだよなあっ!その攻撃には致命的なタメがある!


「教えてやるよクソ熊っ!RPG、FPS、ギャルゲー!全てのゲームで大技を発動する前は、バカでかい隙になんだよっ!」


 俺は口に向けて、さっき拾った石を投げ込んだ。

 それと同時に俺は後ろに向かって飛ぶように転がった。


『てめえなにしやがる!』


 強制的に発動されたそのブレスは見当違いの方向に飛んでいった。

 ふははははッ!計画通り。


 俺は熊が自爆してできた煙幕に紛れて走る。


 あ゛あ゛あ゛あ゛ーーー!!喉が渇いた!ただでさえ水分補給してないのに、緊張やら熱気やらで追い討ちが酷い!


『待てごらぁ!!』


 熊さんからの追い討ちも大概だよほんと!!


 熊がすぐ後ろに迫ってきている。もうほんとっ


「神がぁぁ許さねえぞぉぉぉぉ!!」


 そう叫ぶと同時に俺の身体に光る線が走った。そして白い稲妻を纏って俺は加速した。


 だが加速して飛んだ先は、崖だった。


……うん。


 いやっ!いやいやいやッッッ!!??


「はぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」


 俺は生い茂る森に向かって落ちた。


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