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俺と首輪の協騒曲  作者: ふぁふぁに~る
熱風と離別の交響曲
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サンドワーム

 オレの中からにいちゃんが消えて、あの声が言っていた通り太陽の方向に向かって歩を進める。


 もう結構歩いてる。体感時間で数十分くらいかな……、寝起きでこんな事をさせられるなんて、本当にあの声は嫌なやつだ。


 けど、にいちゃんが心配してた、日焼けってのは大丈夫みたいで、肌はあっつくなってんのに何でか痛くない。


 これなら、水さえあればいくらでも歩けるな。まあ、すっごく歩きにくいんだけど……。


「あ゛ぁもうっ……。靴がほしいな……それにあっちぃ。にいちゃんに水もらってぶっかけてもらうんだった……」


 でもあんまりにいちゃんに迷惑はかけらんない。だって、水を出すだけでも凄く大変そうだったし。


 まあ、頼るしかないってのは分かってるけど。オレの身体に描かれたなんちゃら陣だって、実際すげぇし……これ使ったら、にいちゃんも魔素を吸い取られるって言ってたけど。


 でも置いてこの先何があるか分かんねぇんだ。危なくなったら使うしかない。


「にしても……どこにあんだよ……。前もあんまりみえねえし……」


 砂漠って言うだけあって、見渡す限り砂、砂、砂。


 ちょっと風が吹いただけで細かいそれが舞い上がって、オレの視界をジャックする。


 立ち止まって腕で目を覆って砂の暴力が止むまで耐え、その熱風を浴び続けた。


「うくぅ……あ、な、なんだ……? なんか、揺れてるみたいな……」


 突然オレの脚元の砂に、ほんのわずかな揺れが伝わって来た。


 しかもそれはどんどん大きくなっているような……っ、やべっ!


「うわぁ!?」


「キシィィィィ!」


 オレの脚元から飛び出して来たのは、長さはオレの身体よりでかくて口が頭くらいの大きさを持つ、筒状の変な生物だった。


 なんとなく嫌な予感がしてジャンプして、オレの脚にほんの少しヌメヌメとした粘液が付着する。


 ……あれゲームとかで見たことある。ワームってやつだ!


「おいっにがさねえよ!」


「シュァァァ!」


「くそ、めんどくせぇ……」


 一度出てきて再び戻ろうとする尾の部分を脚で踏みつけたけれど、砂に邪魔されて力が籠らない。


 そのまま砂の中に潜っていく筒を見ながら、オレはそのまま自然体を維持する。


 視覚は意味がないし、ファイティングポーズだって現状は必要ない。感じるべきは足元の揺れ。


 最初は揺れをはっきりと感じられたけど、相手が油断していた可能性だってある。オレが一瞬ジャンプするのが遅かったらヤバかった訳だし、油断するわけにはいかない。


 再び僅かな揺れ。それが近づいてきたり遠ざかって行ったり、一度目の失敗から学んだのかフェイントを掛けつつオレの脚元へと迫ってくる。


 魔素を脚に集中させて……いち、に……いま!


「ふっ!」


「シィィィ……! ブシュッ!」


「へへ、やりぃ!」


 跳躍ついでに身体を半回転。ハンマー投げのように勢いをつけた脚で、玉蹴りの要領でその筒の円形を凹状に歪ませる。


 その口部分から粘液を撒き散らし、地上へと進出した勢いが無理やり横に逸らされて、その長身を柔らかな砂の上でじたばたもがき出した。


 このままだと再び地中に潜ろうとするのは目に見えている。オレは近くに寄ると、その口部分を下から持ち上げ胴体を脚で抑える。


 じたばたもがくその身体には砂やら泥やらが付着して、何だか生暖かくてゴムっぽい。


 両手両足の四肢に、更に尻尾。五部位に魔素を流し込み、全身全霊の力でその頭を引っ張った。


「んぎぎぎ……!」


「シィィッ、ジジィィィィ!!!!」


 徐々に徐々に、オレの両腕がそのゴム質の身体を本来あり得ない長さまで伸び始める。


 オレの体重は少ないから、体重を利用して拘束する事は出来ない。


 だから何度もワームの身体をドンドン踏みつけ抵抗する意欲を抑えながら、つま先を身体にねじ込み無理やり力を乗せていった。


 そしてようやく、行けると確信を持ったオレは力を振り絞り全身全霊で身体を伸ばす。


「っ、しゃぁぁぁ!!」


 まるで綱を無理やり引きちぎったような、ブジッ! という音を立てながら、その頭部と長い胴体がついに分かれる。


 身体の奥の方に、じんわりとした何かが宿った。


「ジュジィィッ……!  ジ……シシッ、シ……」


「はぁ、はぁ……」


「……」


 初めはそれでも身体を暴れさせ虫のような生命力を見せていたけれど、徐々にその動きは緩慢になり、ついには全く動きを止める。


 ……勝った、良かった、勝てた……。


 首から紫色の血を噴出し、砂を汚すその姿をぼんやり眺めていたら達成感が沸き上がってくる。


 砂に脚を広げて座り込み、大きく息を吐いた。


「ふぅ……」


 喉、乾いたな……それにこの死体どうしよ。


 そんな中、オレの中に柔らかい雰囲気が入り込んでくる。


『フウ! 大丈夫!?』


「あ、にいちゃん」


『あ、じゃないよ!? 俺の方にもなんか入って来たし、それに魔導陣使ったでしょ!? 戦ったの!?』


「うん、なんかな、ワームみたいなのいた」


『ワーム!? うっわ、そんなのもいるんだその砂漠……ケガは……』


「してない!」


『そっか、良かった……』


 全く、にいちゃんはカホゴだなぁ……、まあ、めっちゃ嬉しいけど。


 にいちゃんに心配されると、なんかじんわりとした温かい気持ちになる。本当ならそのままにいちゃんの胸に飛び込んでくんだけど、にいちゃんいないから……


 にいちゃん……。


「……ね、オレさみしい」


『フウ? ……そうだね、俺も寂しいよ』


「はやく、むかえに来てくれよな……?」


『うん。もちろん』


 戦いに勝ってもすぐに褒めてもらえない。にいちゃんが、オレの隣にいてくれない。


 オレの胸の中に、それがずっしりと圧し掛かった。

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