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俺と首輪の協騒曲  作者: ふぁふぁに~る
熱風と離別の交響曲
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通信

「よ、よかった……フウ、無事でよかった……!」


『にいちゃん……オレ、なにがなんだかわかんなかったけどさ、これからどーしたらいいんだ……?』


「ああ、そうだね……これからの事を考えようか」


 一人だけになってしまった森の中の小屋。


 俺はそこで適当な荷物を紐で縛り終え、その場で座り込んでフウと通信をしていた。


 自らの意識をフウの元へと運んでいく以上、どうしても実際の俺の身体の操作がおぼつかなくなり、こうやって座っていないと危険だ。


 おいおいはこれも何とか解決するべきなんだろうけど、今はそれよりも最優先事項があった。


「とりあえず、フウがいる場所は砂漠なんだよね?」


『ん……すっげぇあついし、のど乾いた……』


「んー、ちょっと待ってね……」


 そっか……そうだよね、フウは今、砂漠にいるんだ。


 魂を通じてフウに声を飛ばしているけど、それを深めてフウの感覚を共有する。


「うっ……、マジか、フウこれ大丈夫?」


 むせ返るような暑さと砂の熱さ、光を焼き付けて来る太陽、前から吹いてきた風はドライヤーのよう。


 こんな所に水も無しに、あの姿のまま放り込むだなんて……、上に何も着ていないフウは、このままでは肌が灼かれて痛い思いをする可能性が高い。


 それに何より水だ、どう確保させるべきか……。


『でもよ、ちょっと歩けばなんか、テイト……? ってのがあるんだってよ。そこまで行けば……』


「それだけ遠いかもわからないんだよ? もし歩いて数時間とかだったらどうするのさ……フウが干からびちゃうでしょ」


 水、水か……あ、そうだ。


「ちょっとだけさ、身体が変な感じするかもしれないけど我慢して」


『んぁ? なにすんだ?』


「フウの身体から魔術を使ってみる」


 意識を研ぎ澄ませ、フウの身体に俺の魔素を送り込む。


 フウの身体の中の魔素が少しだけ抵抗してくるけれど、俺の魔力で塗りつぶして魔素の支配権を奪い取る。


 ……ああ、相変わらずきつい。まるで魔素に純金の重りでも付けてるみたいだ。


『う゛ぁ……や、やっぱ、くすぐってぇ』


「……え、なにこれ、全然魔素が外に出てかないんだけど……」


 フウの身体はまるで外側に硬い外殻があるみたいで、俺の魔力を持ってして魔素を体表から殆ど外に出て行かない。


 フウの身体に描いた魔導陣、その中心部分からは辛うじて魔素を外へ放出することが出来たので、それを利用して魔術の行使を執り行う。


 俺がその場にいるわけではないので、俺が普段使っている詠唱、つまり言葉で魔素を操り魔術式を組み立てる方法は使えない。


 だからこそ、外に出た魔素の制御が外れないように気を使いながら空中の魔素を操り、それを使って式を組む。


 魔術式ってのは魔法陣のような、目に見えて魔術! って感じの物じゃない。強いて近いものを上げるならば、楽譜みたいなものだ。


 魔素の動きによって魔素が変化し、その変化した魔素が更に影響され現象が起こる。


 体内の魔素の変質は容易だけれど、空気中の魔素はそうではない。だから一般的に魔法の方が簡単で、魔術は大変なものだ。


 俺がこれを行使できるのだって、幾十幾百、はてはそれ以上の死を含む経験から身に着けたもの、絶対に初心者には無理だと断言できる。


 失敗はしない、するわけにはいかない。フウの為にも砂漠で楽に水を手に入れる手段が無いと、この先確実に厳しい事になるから。


「んん゛~~」


『あっ! なんか、ちょっと青い!』


 そりゃあそうだ。水属性の魔術式を書いてるんだから。


 どういう理論なのかを説明しようとするととんでもない長さになってしまうけれど、とにかく魔術を使う時は属性に応じた光が漏れる。


 火なら赤、水なら青と言った具合に魔素が光を放つ。だからこそ魔術師同士の戦いではそれに注視する……らしい。


 いや、だって俺魔術師と戦った事ないもん。あっちの世界の本に書いてあった事の受け売りだ。


「よし……あとは、魔法で……」


『わぁ! 水だ! のんで良いの!?』


「ん、良いよ」


 水の魔術式から滲み出た水を回収し、魔素を使ったテレキネシスでそれを円形に固定する。


 これで水の玉が出来たはず。それに魔術で出した水は飲むことが出来るのも確認済みだ。


 ああ……フウの身体に水が沁み込んでくる……。感覚の共有ってのは凄いもので、視覚と聴覚はまだ繋げられないけれど、それ以外なら大体は共有できる。


 けどそれは俺からフウへの一方通行、フウから俺に連絡を取る手段が限られてるんだよな。


「ねえフウ。今度から俺を呼びたいときはさ、さっきやってたみたいに首輪に魔素を送ってよ」


『んくっ、ん、ぷはぁっ! うん、わかった!』


 フウが首輪に魔素を通してくれて、フウの魔素が少しだけこっちにやって来た。だからこそ俺はこの首輪で連絡を取るという手段を早々に思い立ったんだ。


 身体は離れているけど心は一緒。心というより魂だけど、本当にその通りだな。


 とりあえず、連絡が取れる事が分かって安心だ。今のフウはたった一人、心配じゃない訳じゃないけど、俺はフウを信じる事に決めた。


 それにオレと話が出来るのならば、この世界に来るときあの声に見せられた、絶望しきって憔悴したフウになる事は恐らくないだろう。

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