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俺と首輪の協騒曲  作者: ふぁふぁに~る
熱風と離別の交響曲
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目覚めたのは新世界

第二章始まりました。

「んぅ……あ、あっちぃ……」


 暑い、なんかすげぇ暑っつい……ってかもう熱い。


 オレは身を焼く様な熱さと鋭い光に無理やり起こされ、その場でガバリと起き上がる。


「に、いちゃん……? うぁ、まぶし……! ……え?」


 起き上がったら少しだけお尻が埋まった。パンツの中に砂が入り込んでくる。


 ……は? 砂? 待て、にいちゃんがいない……? 何処だ、何処だここ!?


「はぁ!? な、なんだよここ、砂漠!? うわっ!」


 周囲を見渡すと至る所に黄土色の細かい砂。驚いて立ち上がろうとしたら、足が砂にやられてその場ですっころんだ。


 ってか砂もあっつい! やばいなぁ、にいちゃんがいたら水を撒いて貰ってたんだけど……って、そうだよ、にいちゃんは何処に行ったんだよ!?


「にいちゃぁぁぁん!!!」


 少しだけ乾いた喉で全力の声を上げる。


 オレの声は少しだけ木霊して、すぐに風の音にかき消された。


 砂漠……この砂漠に、オレは一人……? にいちゃんは、いない……?


「に、にいちゃんが、いな、い……? え、や、やだ、やだよ……っ」


 思い出すのはオレがこの世界に来てすぐの事。にいちゃんが居ないあの絶望感。


 また、にいちゃんを感じられない生活が始まる。何よりも嫌だ、オレはもう、独りになりたくない……!


 そうしたら突然、オレの首元から強い光が瞬いた。


「え、な、なになに!? オレのくびぃ!?」


『あー、聞こえるかなー、フウカくん』


「あっ! あんときの声!」


 そうしたら突然聞こえ始めたのは、オレをこの世界に送り込んだ張本人の声。


 相変わらず良く分かんねぇ声で、なんかいけ好かない感じの態度をもってオレに声をかけて来る。


「お、オマエ! ここはどこだ!?」


『ちなみにこれは録音だから、君の声はこちらには届かない。それはあらかじめ言っておこう』


「な、なんだよそれ……!」


 余りにも勝手だ。それにこいつがそんな事言い出すって事は、もう犯人は決まったようなもんじゃないか。


 オレをにいちゃんの所に返せ。こっちの声が通じていたなら真っ先にそう言ったけど、声が通じてないんじゃ何を言っても無駄だ。


 オレは仕方なく押し黙り、その声に耳を傾ける。


『フウカくんの望みは叶えた。君は確かに塞ぎ込んでいたけれど、彼をこちらの世界に連れてきてそれは解決した。


 けれどさ、こちらとしては君のその精神状況は好ましいもので無いと判断した。だってそうだろう?


 もしも彼が何らかの事情により一人でも行動を望んだ時、君は単独行動を余儀なくされる。けれど君は彼が居なければ何も出来ない。


 外は伴っているのに中が脆弱。君に分かりやすく例えるならば、せっかく最高級の機材と食材があるのにも関わらず、料理人が素人、と言った感じかな』


 オレが、にいちゃんがいないと何もできない? そんなの当たり前だろ!


 オレはにいちゃんにずっと助けられてきた。だからオレはにいちゃんに尽くすって決めたんだ!


 にいちゃんがいないのに頑張れるはずがないんだ。にいちゃんがいないなら、オレがいる意味なんて無いんだ。


 早く、早く合流しないと……!


『君を転移させたのは、大陸の南西側に広がっている大砂漠だ。


 ちなみに君と彼がいた大森林は、大陸の北東側、大陸を跨ぐ事を除けば最大限君たちを引き離した。


 ここは中央大陸、地球でいう所のユーラシア大陸のようなものでね、世界で一番大きな大陸だ。


 ついでに言うとこの星は地球より大きく、けれど大陸の数は少ない。海の面積も地球よりも大きいけれど、だからと言って圧倒的に大きいという訳でもない。


 君たちの離れている距離はざっと数字に表すと、1万1000キロメートルにも及ぶ。合流しようとしてもこの世界には車のような高速移動が可能な乗り物は存在しない。


 合流するのは当分先の事になるはずさ』


 目の前が真っ暗になるような気がした。


 言っている事を理解したくないのに、オレの頭はそれらをすんなりと理解しようとしてしまう。


 オレとにいちゃんの離れている距離が、1万……キロ? えっと、確かうちから小学校までが1キロと500メートルで、それの……6000倍とちょっと……?


 しかもここは砂漠で、西も東も……いや、太陽を見れば分かるか。いやだとしても、オレは砂漠を渡り切れるか……?


 無理、絶対に無理だ。何か乗り物が無いと、オレは干からびて死んでしまう。


 だって今もオレの上からは燦々と照らす白い太陽。熱された砂から立ち上る陽炎。


 気が滅入るほどの暑さに肌が痛くなってくる。


『だけどそのままにしておくと君は死を選びかねない。君が死ねば彼も死ぬとは言え、君が彼に罪悪感を覚えながら非業の死を遂げる可能性が高い。


 でもねフウカくん、君にはその首輪がある』


 首輪……オレの、首輪……?


『首輪と腕輪、一対のそれらには魂を連結させる効果がある。それは君たちも分かっているだろう?


 そして君たちは、その繋がりを利用した連絡手段を持ち合わせている』


 そ、そうだ……にいちゃん、一回オレの中に入って来た事があった。


 あんとき確か念話ってのもしてくれて、にいちゃん喋って無いのに声が聞こえて……!


『こちらとしてもね、あの時と同じように君が壊れかけてしまう事は避けなければならない。


 互いに離れているけれど心は通じ合っている。いや、心というより魂だけれど、それによって会話は可能だろう。


 それならば君はきっと壊れない。更には多少の精神負荷下での行動は君の精神力の鍛錬となる。


 じゃあ、話はこれくらい……ああ、君からみて太陽の方向に進めば、砂漠にありながら繁栄を誇る帝都がある。そこを目指すと良いよ。


 それじゃあね。これでリソースはほぼゼロになった。これから君たちが、どれだけ人類存続の礎に成り得るかは、君たち次第だ。


 頑張ってね、見守っているよ』


 声が消えて、首輪が光を失っていく。オレは半ば呆然としながらそれを聞き終え、我に返ると身体の中の魔素の存在を確かめ始めた。


「た、たしか……こうやって、首輪から……」


 身体の中の魔素を操って、首輪へと集めていく。


 そうしたら何だか、オレの身体の真ん中に魔素が移動するようなそんな不思議な感覚がオレへと伝わってくる。


 これが、にいちゃんの言ってた魂ってやつか……じゃあこの、繋がってる線みたいなのが……。


 オレがどうにかしてその線の先へと魔素を送り込もうとしていると、線が一瞬揺れた感じがした。


 慣れ親しんだ、オレが安心出来る気配がオレの中に入り込んでくる。


「にいちゃん……!」


『フウ! 聞こえる!? 大丈夫!?』


「にいちゃぁん!!」


 大好きなにいちゃんの声が、オレの頭の中で響いた。

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