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俺と首輪の協騒曲  作者: ふぁふぁに~る
黒影と深森の練習曲
21/56

想愛

一日二話投稿一話目です。


あれ、これやっぱりBLタグ必要? ギリギリ?

「や、やめて……にいちゃん」


「えっ……ご、めん……」


 腕の中のフウは俺の胸を押しのける。


 それだけのはずなのに、何だか妙に心がざわついた。


 だって、今までフウにこうやって拒絶された事なんて無かったから。


「あっ、いやっ! そーじゃなくてっ……オレが、にいちゃんをぎゅーってしなきゃダメなんだ!」


 自分で俺を押しのけたはずなのに今度は自分から俺の身体を締め付けてくる。


 俺が抱きしめるのとフウが抱きしめるの、何が違うのかわからない。けど、フウの中では確かに意味があるんだろう。


「なんで?」


「オレは、もうじゅーぶんにいちゃんにギューってされたし。居てくれるだけでいーの。でもにいちゃんは……オレが居るだけじゃたりないんだ」


 あぁ、そっか……まただ。フウったらまた、俺の事を想ってくれてる。


「にいちゃんもオレみたいにしてあげないと。オレがセキニンもって、さみしくないよーにしてあげないと……だから、だからっ……」


 多分、フウは死にかけた事でちょっと気分がネガティブになってるんだろうな。


 俺が寂しいって……いや、確かに間違ってはいないんだけどフウにそこまで心配させるようなそぶりは見せていないはず。


 ……なんだけどな。


「フウったら……」


 そうじゃなきゃ、ここまで思い詰めた感じに俺を心配しないだろ? 


「オレがわるいから、だから、オレがにいちゃんのっ」


「フウ、大丈夫だから……ね、ギューってして良い?」


「だめっ! にいちゃんに助けられてばっかじゃダメなんだっ! だから……」


「俺ね、フウの事抱きしめると安心するんだ。だからさ……ダメ?」


「うぅ……そーなの?」


 そーなんだよ。普段は恥ずかしいから絶対言わないけどね。


 期待に満ちた眼差し。不安そうな顔をしてはいるもののその瞳の輝きは抑えきれてないし、耳だってピンと立って尻尾が揺れてる。


 分かりやすいなぁ……耳と尻尾が生えてよりいっそう分かりやすくなった。


 フウが俺の事をそこまで考えてくれているのは嬉しい、けどその事でフウが身を削るような思いをするのは俺が許せない。


 だから悪い事以外はフウの言う通り、フウの意思に俺の意思を合わせてやろう。


 そうしたら、もしかしたら……フウが言う通り、少しは俺の寂しさも減るかもしれないしな。


「ん……あったかい」


「にい、ちゃん……ライにいちゃぁん……」


 改めてフウを抱きしめる。空気が抜けたような音を鳴らしながらフウが俺の腕で溶けていく。


 普段はすべすべの肌も、俺とずっとくっついていたせいか少し汗ばんでペタペタする。


 なのに離れようとは思わない。


「ねえ、フウって俺のペットになりたいんだよね?」


「おう……オレにいちゃんのペットになりたい……飼ってほしい……」


 本当に馬鹿なお願いだよ。今までいろいろなお願いをされてきたけど、こんな事は初めてだ。


 けどよくよく考えたら今までと何一つ変わらない気がするんだよな。


 じゃあちょっとだけ、今までと変えてみよう。


「じゃあペットみたいに命令するよ。良い?」


「んっ、わ、わんっ!」


 いや、別に犬じゃなくても良いんだけど……可愛いから良いんだけどさ。


 俺はそんな愛しいペットの頭を撫でながら、優しく語りかける。


「痛い事、苦しい事、嫌な事。それだけじゃなくて何かしたい事、欲しい物、後はそうだな……まあ、何でもいいや。


 とにかく全部、俺に伝えて?」


「えぇ!? でもっ、それっていっつもオレがやってることじゃん! いっつも、オレがにいちゃんに、メーワクかけてる……」


「ばっかだなぁ……」


 迷惑なんて思った事ない。俺が全部好きでやってる事なんだから。


 なのに俺のそんな行動を迷惑の一言で片づけるって? 中々失礼じゃないかと俺は思う。


 それにフウはペットになりたいって言ってるくせに、ペットがどういうものなのか理解してない。


「ねえフウ、知ってる? ペットって日本語で言うと、愛玩動物って意味なんだ」


「あい、がん?」


「そう、愛しくもてあそぶって書いて、愛玩。……いや、もてあそぶって言い方悪いな、俺はフウの事そんな風に思った事ないけど、愛しては……んー、めっちゃ恥ずかしいから言わない」


「……にい、ちゃん……っ」


「とにかくさ、フウは俺の事を癒してくれなきゃいけないわけ。それでさ、前からフウは俺の事を癒してくれてたよ?」


 だから下手に気を使う必要はないんだ。


 俺が求めてるのはいつものフウ、屈託ない笑顔を見せてくれる天真爛漫な幼い幼馴染。


「そんな思い詰めたような顔しないで? 辛いことがあったらちゃんと相談して? 俺のためとか、自分のせいとか……もうさ、フウは気にしなくて良いの。


 フウは俺のペットで、まだまだ子供、そうでしょ? まあ、俺もまだ成人してないけど……無理なんてする必要ないんだよ?」


 無理をするのは俺の役目だ。その無理した分をフウに補って貰えればそれで十分過ぎる。


 フウが死にかけるような目にあったのも多分俺のせいなんだ、何と出会ったのか知らないけど、フウに任せっきりにして一人で行動させてしまった結果のこの惨状。


 力じゃフウに叶わない、俺がフウに勝っているのなんてほんのちょっとの年の功と、魔法が使えるって事くらいなもんだ。


 フウが叶わないような強大な何かだって俺が居れば何かが変わったかもしれない。


 ……けど、足手まといにだけはなりたくないな、俺も明日から鍛え始めてみようか。


「でも、にいちゃん、オレは……」


「はい、お口チャックー」


 そこまで言っても俺の胸から顔を離して顔を見上げて来る。


 だからその唇を片手で優しくつまんだ。


「んー! ふぁにぬーの!」


「唇やぁらかいねぇ……じゃ、もっかい寝よっか?」


 一度目は覚めたといっても何だかまだまだ寝足りないような気がするし。身体の中がなんだか冷たい、回復しきっていないのかな。


 フウは……どうかわからないけど、大怪我したあとなんだから寝た方が良いと思う。


 フウの唇から手を離すともう一度頭を胸に押し付けてやる。


 よし、抵抗しないな。


「おやすみ、フウ。ぜーんぶ、俺に任せな」


「……っ」


 フウが何かを言いたげだったような気がするけど、俺は睡魔に抗えなかった。

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