32.こどもと子供と
「おい待てキョウスケ」
ウェルズの部屋を出て自室に向かう途中で追いかけてきた3人に呼び止められた。
「ウェルズのあの見透かした感じが嫌なのはわかるけど自分の配下を放置していくな。そもそも商会の会長のところに奴隷を連れて行くことが間違ってるんだから」
ナタリアにもっともらしい説教をされてしまった。だがしかし
「その会長の前で奴隷になった人間に言われても説得力ないぞ…」
「それはそれだ!気にするな」
カラカラと笑うナタリアにため息をつきたくなる。しかし嫌な気分にならないのはナタリアの性格が裏表がないようにみえるからだろうか。
「適当だなぁ」
「それよりキョウスケ、明日は休みってなんでだ?」
マオが口を挟んできた。
「さっき言ったろ。いい依頼がなかったんだよ」
「いい依頼の基準がわからないけどそんなに微妙だったのか?」
「あー、俺らのレベル的にちょっときついなぁって感じの依頼か弱すぎるか採取依頼かって感じだったんだよ」
「ちょっときついってどれくらい?」
「俺らの今の冒険者としてのランクはFランクだろ。今日あったのはDとかCのランクの依頼がほとんだったんだよ」
「Dランクなら私がいるから受けられるぞ?」
ナタリアはなぜ受けないのかと不思議そうな顔をしていた。
「いや、ナタリアはCランクだろうけど俺らはFランクだぞ。しかもギルドに行ってたのが俺だから受けられないだろ」
「受けられるぞ?パーティにいるメンバーに高ランクがいる場合は実力に見合っていると判断されれば普通に受けられたと思うが」
マジかよ。リフェルはそんなこと言ってなかったのに。教えてくれてもいいのに…
「ねぇキョウスケ様、ならちょっときつくても受けても良かったんじゃない?」
「俺はその制度知らなかったからなぁ。それにリフェルに休みも必要だーみたいなこと言われたしまぁいいかなって」
「俺は休みなんていらないけどなぁ」
「私も早くキョウスケ様の役に立てるようになりたいからいろいろやってみたい…」
「私はお前の奴隷になった成果を早く実感したい。さっきから体が軽く感じてちょっと動きたい気分なんだ」
マオとタマキはいい子だな。ナタリアは…テンション上がってるのはわかるけどなんか一番子供みたいだった。なんか目が輝いてるし。
「マオとタマキはじゅうぶん頑張ってるからたまには休め。明日はなんかうまいもんでも食おう」
そういうと2人は照れ半分、明日の楽しみ半分といった感じで途端に浮き足だっていた。その辺はやっぱりまだ子供だよなぁ。
「おい、キョウスケ、私は頑張ってないとでも言うのか」
「年下の、それも自分より弱い人間にそんなこと言われても不愉快だろ普通」
「なにを言っているんだご主人様。お前は私のご主人様だろう」
ニヤニヤと自分の立場をここぞとばかりに利用している。
「やかましい。そう思うなら敬意を感じる態度でいてくれよ」
そんな態度とられても嫌だけど。
「そんな接し方はお前が嫌がるだろ。だからやらん」
……俺ってそんなにわかりやすいのだろうか。
「しかし、どうするか。私としてはちょっと体を動かしたいんだけどな」
「じゃあマオの訓練でもしてきたらどうだ」
というとマオはぎょっとした顔で俺の方を見た。首の回転速度がすごかった気がする。
「キョウスケ!俺はやっぱ疲れてるみたいだからもう今から休みに入るな!それじゃ先に部屋に戻ってるよ!」
言うだけ言って脱兎のごとく走り去った。逃げたな…
「わかったぞ!じゃあキョウスケ、立ち合いしよう」
「はぁ!?俺はお前より弱いんだぞ?さっき言ったろ」
「言ってたな。だが知らん!修練場に行くぞ!」
「お、おい!タマキ!ちょっと助けてくれ!」
「キョウスケ様、がんばです!…あとちょっとキョウスケ様の本気が見てみたいから」
タマキの助けを得ることはできず俺はナタリアに引きづられて行くのだった。




