28.奴隷になりたがるやつなどいないと思ってました
ウェルズの商館にある自室に戻ってくると受け取った報酬の確認を行う。
リフェルが目の前で見せてくれているので確認する必要はないのだが自分でやると確実に記憶に残る気がして毎回やっている。
それに今の自分の手持ちとかも把握しやすくなるし一石二鳥でもある。
「さて、あいつらは訓練してんのかな」
部屋にいないマオとタマキは多分修練場だろう。
ナタリアの指導を受けているマオは最初こそ嫌々だったが指導を受けるたび上達が実感できているのか最近は進んで訓練を受けている。
タマキは俺がいないとまだ字が読めないので覚えている魔法の練習でもしているのだろう。
報酬の確認も終わったので俺も修練場に向かってみよう。
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「ぎゃあああああああああ」
「やってんなぁ」
修練場の近くに着くとマオの悲鳴が聞こえてきた。ナタリアに吹っ飛ばされたんだろうなきっと。
「おーい、調子はどうだ?」
「あ、キョウスケ様!おかえりなさい!」
声をかけるとタマキがぱたぱたと駆け寄ってきた。
この小動物館はかわいい以外のなにものでもない。
「ただいま。練習してたのか?」
「うん!練習するたびにどんどん魔法が使いやすくなってきてるからたのしいよ!」
「そうかそうか。タマキは上達が早いからなぁ」
頭を撫でてやるとタマキは顔を綻ばせる。そしてさらに頑張ろうと気合を入れていた。
「おかえりキョウスケ」
「あぁ、ただいま。派手にやってんなぁ」
「マオのやつがどんどん力をつけるからな。こっちも教えるのが楽しくて仕方ないからついやりすぎてしまう」
気持ちよく笑うナタリアだが後ろには吹っ飛ばされたマオが転がっているのでちょっと心配になる。
「死んでないよな」
「あたりまえだろう。それくらいの加減はできている。まぁ死なない程度にはボコボコにしているが」
容赦ないなぁ。
「それにしてもマオは天才なのかね。上達がはやいのはいいがいくらなんでも早すぎる気もするぞ。その辺の新米兵士だったら多分もう負けないぞあいつ」
「うそだろ。いくらなんでもそれは言い過ぎじゃないか?」
「本当だよ。まぁ見てみろ」
ナタリアはマオに向かって歩いていくと伸びているマオを叩き起こした。
「いってぇ!」
「いつまでも寝てるからだ。キョウスケも帰ってきたしもう1本行くぞ」
「マジかよ…さっきラストって言ってたじゃん」
「知らんな。恨むならタイミングよく帰ってきたキョウスケを恨め」
おい、俺は悪くないだろう。マオの視線が痛いじゃないか。
「キョウスケもよく見てろ。依頼をこなしてるだけだと集中して見れてないだろうからきっと驚くぞ」
「わかったよ」
確かにギルドで受けた依頼をこなしている時は索敵などで他のメンバーを注視していることは少ないのでどのくらい強くなっているかは思ったよりも把握できていない。
鑑定でステータスを見ればいいのだろうが人のステータスを見るのはあまりしたくないのでしていなかった。
「さぁどこからでもこい」
「今度こそぶっ飛ばしてやる!!」
威勢よく吠えるとマオはナタリアに向かって一気に駆け出した。
その時点で俺は驚いた。1週間前俺と手合わせした時とは別人のような速さで動いていたのだ。
さらに接敵してからの槍捌きもかなり上達している。前は振り回しているだけに見えた槍も今はナタリアの指導を受けた成果か様になっている。
型とかがあるのかもしれないがそこまで槍に詳しくないからはっきりとはわからないが動きが洗練されているのは間違いない。
ナタリアも軽くあしらっているが前ほど余裕があるようには見えない。
どんなに物覚えがよくても1週間でここまで別人のようになるのは天才ってだけでは説明できない気がする。
「りゃああああああ!!」
「あまい!」
マオは攻めの一辺倒でナタリアに打ち込んでいる。もうちょっと立ち回りも覚えれば俺より強いのではなかろうか。
「単調すぎるとさっきも言っただろう!!」
「のおおおおおおおお」
また吹っ飛ばされていた。勝負ありか。
「どうだったキョウスケ」
「あぁ、すげえ上達速度だな」
「そうだろう。少し異常とも思えるレベルだよ」
俺もそう思う。
「まだ誰にも話してなかったんだけどな。あいつの上達が早いのは俺のスキルのせいかもしれない」
「そうなのか?」
「俺のスキルの話は聞いたことあったか?」
「ウェルズには簡単には聞いてるが」
なら多少話してもいいな。俺は自分のユニークスキルについてナタリアに説明した。
そしてそれのせいでマオとタマキの成長が速くなっている可能性があることも話した。
「なるほど。つまりキョウスケの奴隷になれば伸びがよくなると」
「確証はないけどな。普通はあんなに早く強くなれないなら多分そうだと思う」
「よしわかった。キョウスケ、私もお前の奴隷にしてくれ」
「………は?」




