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番外編① リアと勇者


リアのその後のお話。

思いつきでサーっと書いたやつです。そのうち少しずつ修正入れると思いますが、とりあえずこれでよろしくお願いします。




この地に移って早くも1年がたった。


ここ、最果ての地は意外にも自然豊かでとても暮らしやすい場となっていた。それは、きっとこの島全体が純度の高い魔力で溢れているからなのだろう。

というのも魔獣は、人間の負の感情と魔力から生まれる。最初とても小さなそれは、だんだんと増え続け大きくなってゆくと魔力と反応し魔獣が生まれる。

魔獣とは、要は魔力の塊なのだ。その為、魔力に溢れたこの地は魔獣にとってとても過ごしやすい。


かつて最果ての地と呼ばれ恐れられたこの地は、今では魔獣達の楽園の地となっていた。

この地は元々人は疎かどの生き物もこの地では暮らすことが出来ないと言われ、1度この島に入れば生きて出ることは叶わないため犯罪者の流刑地としても扱われてきた。

しかし人間や、他の生物がここで生きられないのはその純度の高すぎる魔力に体が耐えられないからだ。

もし、それに適応出来ればここはとても過ごしやすい地となる。が、出来なければ数時間ほどで苦しみの末死に至る。それが、生きては戻れぬと言われている所以だった。


※※


最果ての地に魔獣達と移ってすぐ、人の国から調査団と名乗る者たちが訪れた。

彼らは何とただの調査員ではなく犯罪者…それも最も罪の重い死刑囚だった。

生きては戻れないと言われたこの地に今は魔獣達がいる。こちらの動向を伺いたくともなかなか手が出せないこの状況に各国の首脳陣は悩んだ末、死んでもいい人材として死刑囚を差し出してきた。恐らく、生きて戻れたら罪を軽くしてやるとでも言われたのだろう。彼らは堂々とした出で立ちでこの地に舞い降りた。


私はルドと共に彼らを迎え入れた。


ぞろぞろと船から降りてきた彼らの前に、意外にも爽やかな面立ちの男性が立つ。一見、人の良さそうな笑みを浮かべる彼はとても死刑囚には見えない。

しかし…その体からは拭いきれないほどの死臭がする。

彼は、一体どれだけの人を殺したのか…?

そっとその瞳を伺えば、彼はニコリと微笑みを浮かべた

その顔を見た瞬間、私の体にはゾクリとした悪寒が走った。


あれは、人を殺して喜ぶ者の眼だ…。


本能的にそう感じた私の肩は恐ろしさからか少し震えてしまった。そんな私に気付いたルドがさり気なく寄り添ってくる。その温もりに、少し落ち着いた私は1つ深呼吸をした後しっかりと彼の目を見つめ他の人にも聞こえるように声を張り上げた。


「ようこそ、最果ての地へ。単刀直入に言わせていただきますね。私達、魔獣はあなた方が心配するようなことをするつもりはありません。今後一切、此方から人間に危害を加える気はありません。大群を率いて攻め込もうとも思っていません。信じられないかもしれませんがこれは本当です」


一気に要件を述べれば、彼は微笑みながらも首を傾げた


「それを、君は証明出来る?僕らがその言葉だけで納得すると思ってるの?」


証明…?そんなものとっくにできているではないか。

それは彼自身、既にわかっているはずだ。


「…今、あなた達が目の前にいる魔獣に襲われていない事が何よりの証拠では無いですか?」


「あは。それもそうだね。じゃ、僕らは帰るとするよ。こんな所に長居するつもりは無いからね」


「ご理解頂けたようで何よりです。あなた達はこの地に長居しない方がいいですから一刻も早く立ち去ることをお勧めしますよ」


安堵と心配から私は余計なことを口走ってしまった。

彼は訝しげに此方を伺うと、興味津々に聞いてくる。


「…それはどういう意味?魔獣がうじゃうじゃいるから?それともここが最果ての地と呼ばれてることに関係あるのかな?そもそもなんでここに来た人は生きて帰れないなんて言われているんだろうね、君はそれを知ってる?」


「…早く船に乗った方がいいですよ」


「いいじゃん。最後に教えてくれたってさ、ね?」


「…」


「えー、黙り?僕が聞いてあげてるのにそれはないでしょ…やだなぁ、殺したくなっちゃうじゃないか」


そう言って彼は私の目の前まで近づいてきた。

隣にはルドがいるというのに、その瞳には一切恐怖はない。代わりにあるのは、楽しそうな狂気のみ。

私は負けじとその瞳を見詰める。


「今すぐ船に戻った方がいいですよ?でないと…」


「でないとどうす、るっ…て??」


私の心配した通り彼は突然、頭を押え蹲ってしまった。

彼の後ろに控えていた人々も蹲ったり、ある者は吐いたり、酷い者では血を流している者までいる。

その光景に、胸がズキンと傷んだ。

しかし私はその痛みを無視して、目の前の彼を静かに見下ろすと、言葉の続きを零す。


「でないと…死にますよ?」


「っは…なんだ、これ」


「この地の魔力は貴方達には毒なんです、生きてこの地を出られないとはそういうことですよ…途中まで私達が送ってあげますから、船に乗ってください」


「…くそ、なん…お前はっ、平気、なんだ…よ」


「私は…魔獣ですから」


その言葉を最後に彼は意識を失った。私達は動けなくなっている彼らを全て船に乗せて人間の地へと送り届けた。幸い、死者が出ることはなく私はほっと胸を撫で下ろした。


「誰も死ななくてよかった…それにしてもこれで一応証明したことになるのかな?」


『恐らくな。…リア、言っておくが奴らが苦しんでいたのは自業自得よ。リアが気に止めることではない良いな』


「うん…そうだね」


その後、死刑囚では無い正式な使者が訪れた。

世界にこのことを示すため魔獣達の代表として人間の国に行き不可侵条約を結んで欲しいと頼まれた。

それで人も魔獣も安心して暮らせるならと、私はルドと共に各国首脳会議が行われている場へ訪れ、その場で魔獣から人間に危害を加えることはしないとの内容で署名を行った。最果ての地は今後魔獣の国として扱われ、魔国と名付けられた。

私は魔国の代表、魔女のリアと名乗り人間の国から干渉を受けないことを条件にその地をあとにした。



それからこの地に人間が訪れることは無くなる、筈だったのだが…ある日、1隻の船がこちらに向かってくるのが見えた。

また使者の方でも来たのだろうか?とルドと共に船の訪れるを待った。すると船から降りてきたのは使者ではなく武装した4人組の冒険者たちと唯一船に残っている役人のような出で立ちの男性が1人。


私達の前に一際大きな体格を持った男が立った。

彼は恐らくメンバーのリーダーなのだろう。


「貴様が魔女か!」


「はい…あの、どちら様でしょう?」


私が問いかけると、彼らはそれぞれ胸を張って名乗りを上げた。


「俺は貴様ら魔獣を退治しこの世界に安寧を齎すために来た!俺の名はダリア!貴様を倒す勇者だ!!」


「僕は魔法使いのウィプス!」


「拙者、剣士のヨーデルでござる」


「私わぁ、聖女のルリアちゃんでぇす」


自称、勇者御一行は私を倒すために態々この地に赴いたという。


「はぁ…あ、魔女のリアと申します、彼は魔獣のルド。あの、船に残ってるあの方は…?」


船の方に目線をやると、役人のような彼は深々と頭を下げてきた。


「馬鹿4人がすいません!申し遅れました、私は彼らを監視する為に国から派遣されたルイスと申します。魔女リア殿にはこんなアホ共を連れてきてしまい本当に申し訳ありません、なまじ実力があるものですから私では止められず…」


「はぁ…大変、ですね」


ルイスは疲労からか目の下には大きな黒いクマができている。よく見ると、心做しか服もよれてしまっていた。

まさに、苦労人っと言った出で立ちの彼に思わず声をかけると、ルイスは分かります?!と船から落ちんばかりに身を乗り出してきた。その食いつきように思わず後ずさってしまった。


「そうなんですよ!こいつら全っぜん人の話聞かないし!上司も私に面倒なこと次々に押し付けてくるし!それなのに給料はやっすいし!なんなんだよ!くそが!!俺にどうしろと?!…とすみません、こいつらのせいで最近全然寝れてなくて、つい…」


「い、いえ…」


ルイスは1つゴホンと咳払いすると、とてもいい笑顔で語り出した。


「ということで、こいつら1回〆てもらってもいいですか?そうすれば、今後こんな面倒なヤツらが出て来ることもなくなると思うので。そちらとしても、こんなの毎回相手にしてられないてましょう?なので、もうギッタギタに殺っちゃってください!!お願いします!」


相当ストレスが溜まっていたのだろう。

最後には興奮して叫び出している。


「えーと…」


私が返答に困っていると、イライラとした様子のルドがサッと前に出てきた。


『黙って聞いてれば何を勝手な、これはそちらの問題だろう。我らに面倒事を押し付けてくるな人間』


「そこをなんとか!」


ルイスさんは未だ船の上から叫び声を上げている。

そんな私達に遂に痺れを切らしたのか自称勇者ダリアが割り込んできた。


「ええぃ!何をゴチャゴチャ喋っている!俺達を無視するな!寂しいでしょ!…さぁ、ゆくぞ魔女!俺の剣のサビとな…」


そう言って剣を振り上げた瞬間、バタン!と勇者と名乗るえーと、意外と可愛い名前の…確か3文字の花の名前だったはず…あ!ダリアは勢いよく前に倒れてしまった。

他の3人もそれぞれ地に伏せってしまっている。


「…あー、やっぱり」


「…くっ、さすが魔女。これ程強力な呪術を操るとは…」


「私、何もしてないんだけど…」


勝手に納得して、悔しそうにしている勇者ダリアを見て何だか疲れてきてしまった。


ルイスさん、ずっとこんな人を相手にしてたのね…

本当、お疲れ様です…


私は倒れてしまった勇者の前にしゃがみこみ、目線を合わせる。


「あの、この島の魔力は人間に取って毒なんです。早く船に戻ってこの地を去った方がいいですよ」


「な、に?まさかこの島全体に呪いをかけているのか…?さすが魔獣を引き攣れる魔女…恐るべし」


「いえ、違くて…」


訂正しようとしても彼は全くこちらの話を聞いてくれない。


「…ふっ、俺はまだまだだったようだな…修行をし直し次こそ貴様をたおしてや、る…」


そして遂に耐えられなくなったのか、彼は意識を失った。このまま放置しても、彼は死ぬだけなのでルドや他の魔獣たちに頼み自称勇者一行を船にのせてあげた。


ルイスさんは船に乗っていたため辛うじて正気を保っている状態だった。


「魔女殿、お手数をお掛けしてしまい申し訳ありませんでした。これでやっと国に戻れます!ありがとうございます!」


「いえ、本当に私何もしていないので…」


「それでもですよ。では、私は馬鹿を連れて国に戻りますね!これで恐らくここに訪れる人間は…少なくとも今回のような馬鹿は居なくなるはずですのでご安心ください!」


「そうですか、ならいいのですが…ルイスさん、お疲れ様でした。帰りは私達が送っていきますので少し仮眠を取られてください。クマ、酷いですよ」


「え、で、ですが…」


「彼らは恐らく数日は目を冷まさないと思いますので、その間に体を休めないと倒れてしまいますよ。私達の今後のためにも今は休まれてください」


「…っ!魔女殿ありがとうござい…ま、す」


ルイスさんは感動したように涙を浮かべ私の手を取るとそのまま眠りに落ちた。

船にいたとはいえ、その体には魔力を浴びていたのだ。

疲労も相まって彼は限界だったのだろう。


「本当にお疲れ様です」


そうして自称勇者一行を送り届け私達は魔国へと戻った


その後、ルイスさんのお陰でこの地を訪れようとする変な正義感に溢れた方々はいなくなった。

それどころか、魔国の魔女はとても慈悲深く優しい人だという噂が流れ始め元々、救国の魔女と呼ばれていた私はその事でより人間から親しまれる存在となったのだった


そんな事を露とも知らず、私は魔国にてルド達魔獣と賑やかで楽しい日々を送っている。









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