天国に行った人
徳を積んで、一生を終えた人がいた。
ご褒美として、神様が願いを叶えてくれることとなった。
彼は世界平和や人類の幸福を願ったが、神は優しく首を振り、個人的な願いしか叶えないと言った。
いろいろ考えても、死んだ今となってはやりたいことなどない。
彼は仕方なく、天国に行きたいと願った。
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「ねぇ、パパ。天国ってどんなところ?」
家族で夕食中、息子が唐突に聞いてきた。
息子曰く、地獄は怖いところだと想像できるけど、天国についてはよく分からないという。
なんとなく曖昧なイメージしか浮かばないので、具体的に教えてほしいと、上目使いで聞いてきた。
「天国はここだ」
俺は家族を指さしながら言う。
息子は「え?」と驚いたまま俺の言葉を待つ。
「ママの作ってくれた料理を皆で食べ、元気に学校に行き、かわいい妹もいて、ばぁばやじぃじも近くに住んで可愛がってくれる。
暖かい家に住んで、テレビやゲームもあり、家族みんなで寝て、お風呂に入り、たまに旅行に行く。
だからここが天国だ」
「よくわかんない・・・」
「だったら、神様と一緒にお花畑で暮らすのと、この家族と仲良く暮らしている今はどっちが良いんだ?」
「いまの生活」
「そうだろ。それに、虐待で苦しんでいる子に対して、どうなってほしいと思うんだ?死んで天国に行ってほしいと思うか?それとも幸せな家庭で過ごしてほしいと思うか?」
「幸せな家で育ってほしい・・・」
「その幸せな家とは、いまのキミの生活だろう?神様は天国に行きたいという願いを叶えてくれたんだよ」
「? 僕じゃなくて、可哀想な子の話でしょ」
「いや、俺の話だ」
息子も娘も妻も、俺の言葉に不思議そうな顔をしていた。