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幕間 副将ギェルフスト①

 勇者の戦死。

 それは長い間第3軍団の侵攻を阻んできたクラムフト要塞の守護神の喪失に他ならない。


 勇者を失った連合軍など有象無象の集団に過ぎない。


 予想通り、士気の瓦解した連合軍の砦は次々に陥落、要塞も消し飛びされた正門から雪崩れ込んだロロンドの部隊に完全制圧され、東方の連合軍どもの防衛線は要を失った。


 クラムフト要塞は防衛線の要。

 この要塞が陥落すれば、各地の防衛拠点は補給線と連絡線を失い孤立する。


 連合軍は要塞陥落を知るなりすぐに各地の拠点の部隊と民間人の撤退を行ったが、すでに多くの拠点が孤立している。


 勇者さえなければこっちのもの。

 あとは、邪神軍の仕事である。


 勇者との戦いを見たわけではないが、ギェルフストが駆けつけたときにはすでに勝敗は付いていた。

 それも、軍団長の方は無傷という結果で。



「いやいや、我らの大将殿は流石だぜ。まさかマジで勇者を倒しちまうとはな」



 始祖には、今まで確認した全ての勇者よりも強い力を感じる存在だと聞く。


 寺門のエクスプロージョンの前に、戦わずして毎度集めた軍勢を壊滅させられてきていたギェルフストはその言葉を正直なところ疑ったものだが、実際に異邦人はやって見せた。


 こうなれば疑う余地などない。


 邪神軍は勇者にとって天敵と言える存在を手に入れた。

 もはや邪神軍の勝利は疑いようがないだろう。



「勇者さえいなければこっちのもんだ。あとは我らの仕事だぜ」



 ロロンドの指揮のもと、孤立した拠点の攻略を進めるギェルフスト。


 大陸東方はすぐにでも制圧できるだろう。


 今まで散々に溜まってきたウサを払うように、ウイリンセンやロロンドなんかは張り切っている。



「行っちゃえみんなー!」



 クラムフト要塞は邪神軍の侵攻を押し返す防衛の要から、大陸東方の侵略を進めるための一大拠点に変貌した。


 これにより前線を大きく下げることになった連合軍。


 この戦いで連合軍が失うこととなった領土と戦力はあまりに大きい。

 こちらも急激に上がった前線、そして占領地の掌握に時間がかかるとはいえ、連合軍の立て直しより早く次の大規模侵攻の準備が整うのは確実であった。


 クラムフト要塞にて、前進を続けるロロンドの率いる軍の姿を眺めながら、ギェルフストは口元に笑みを浮かべている。



「ちっせえくせに張り切りやがって……ケケケ」



 ギェルフストは勇者のエクスプロージョンを受けた際の怪我があり、要塞にとどまって前線の戦いには参加していない。


 ただし、それはもう1人。

 彼らの主、第3軍団長である班目(まだらめ) (つとむ)も同じく参加していなかった。


 こちらはギェルフストと違い、体の方は全く問題ない。

 ただし、勇者という同郷の存在を手にかけたことにひどく心が疲弊している様子だった。



「……繊細なのはいただけねえな」



 班目の休んでいる部屋の方を見ながら、ギェルフストがつぶやきを漏らす。


 班目は人質のためなら何でもする。

 そう始祖から聞いていたのだが、いざ戦場に立たせてみたら勇者ども以上にその中身は傷つきやすかった。


 たしかに、班目は人質としている女のためなら命も投げ出すだろう。

 それは隣に立っていたギェルフストにもよくわかる。


 ただし、内面が優しすぎる。

 人質を取って戦わせている造形のかけ離れた異形の姿の邪神軍にも、彼は1個の相手として接してきた。


 あの始祖が与えた鎧に仕込んだ細工のおかげで幾らか精神に弄っている箇所があるとはいえ、普通ならばそんなことはない。

 勇者どもなど、異形の邪神軍には一片の情けもかけないというのに。


 そして兜を取った途端にこれである。

 細工も今回ばかりは効かなかったらしく、ここしばらく抜け殻のような状態となっていた。


 これでは、しばらく立ち直れなさそうである。



「……なんかいい方法ねえか始祖に相談してみっか」



 ギェルフストは一度前線から本拠地へと戻ることにした。


 彼が目を向けていた部屋の中には、未だに立ち直れていない異邦人が1人。


 勇者を討った存在、それはこのとき動ける状態ではなく、なおかつギェルフストも不在となる。

 クラムフト要塞はこの時だけ、勇者1人が出れば確実に奪還できるような状態となっていたのだが、そんな邪神軍の実情を連合軍が知る由もなく。


 戦場は常に情勢が動き続ける。

 両軍の本陣はそれを見極めようと躍起になっていた。

評価をつけていただきました。

それも10ポイント。


……何ということでしょう。

感謝の言葉もありません。ありがとうございます。

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