エピソード7
二人は帰って行くと家の前でサーシャの母と緑色の帽子を被ったエルフの少年が話している姿が見えた。
大体、エルフは全体的に若く見えるので隼人は戸惑っていたがどちらかと言うとサーシャ寄りの歳に近いだろうか?隼人は段々、エルフの多少の違いでどれぐらいの歳か大体、把握出来るようにまではなっていた。
「サーシャ、あのサーシャのお母さんと話してる少年って一体、誰?」
サーシャは怠そうに答えた。
「私の幼馴染みで自称、許嫁。まあ、腐れ縁って奴よ。」
「許嫁!!?」隼人は驚いていた。
「お母様が勝手に決めた事だから気にしなくてもいいわよ。彼は少し本気にしてるみたいだけど、私は興味ないし、幼少期にね多分、私とリリィーを勘違いしてるんだと思うのよね。リリィーは彼に好意を持ってるけど気付いてないみたいなのよね彼は...。本当、誰かさんにそっくり。」
サーシャが言った、最後の言葉に隼人は引っかかったが、まさかそんなはずはないな、と言う表情を浮かべ、そこまで深く考えなかった。
二人は少年とサーシャのお母さんの所に近づいて行った。
「あら、サーシャと隼人じゃないお帰り。」
「ただいま、帰りました。お母様。」隼人は軽く頭を下げ、会釈した。するとエルフの少年が隼人に向かって悪口を言った。
「何故、この神聖なエルフの森に人間風情な奴がいる?ここはエルフ達の森だ。去れ!」隼人は返す言葉もなかった。それを聞いたサーシャは怒りながら言った。
「そんな言い方をする、必要あるのロビン?」サーシャの幼馴染は黙り込んでしまい重い空気が漂うのであった。すると、『パッチ』両手でサーシャのお母さんは重い空気を断ち切るかのようにした。
「もう外は暗くなって来たし、皆んなお腹が空いているでしょ?隼人君はお昼も食べてないから尚更でしょ?」丁度その途端に隼人の腹は『グゥ〜』と鳴るのであった。サーシャはクスクスと笑うのであった。
そのサーシャの笑顔を見た、エルフの少年は何処か嫉妬した仕草をするのであった。
四人は家の中に入って行き、ダイニングがある4階に向かうのであった。中に入るとそれなりに大きい円卓があり、リリィーは既に座っており、食事が既に並べあった。メインはやはり野菜であったが、どれも鮮やかで美味しそうな匂いを醸し出していた。サーシャのお母さんは皆に言った。
「さあ、皆んな椅子に座って、こんなに大勢でご飯を食べるなんて久しぶりでワクワクしちゃう。」サーシャのお母さんは喜んでいるのであった。実際、五人しか居ないのだがサーシャのお母さんにとっては多く感じるのであろう。みんなは各々の椅子に座るのであった。
隼人以外は食事前に行う、恒例の祈りを捧げるのであった。隼人はそれが終わるのを待っていた。皆が食べ始めると隼人は『頂きます』を言ってから食べ始めるのであった。
「ねえ、サーシャそろそろどうなの?年頃なんだしロビンと結婚について少しだけ考えてみたら?」サーシャのお母さんはそう言った。それに対し、聞いていたロビンは嬉しそうな表情を浮かべるのであったが、リリィーは少しだけ悲しそうであった。リリィーの落ちこんだ顔を見てサーシャは返事した。
「私、結婚はしないんだから。」と、サーシャは淡々に返事をした。それを聞いた、サーシャのお母さんは意地悪そうに言った。
「そうよね〜サーシャは隼人君が好きだものね?」
スープを飲んでいた隼人、それを聞きびっくりして咳き込んでしまった。
サーシャは顔を赤くして言った。
「お母様、からかわないで下さい。」
「まんざらでもないのよ、隼人君?」
それを聞いていたエルフの少年は静かに食べていたが急にその場を立ち上がり隼人に向けて言った。
「おい、人間俺と決闘しろ!勝った奴がサーシャを貰うって言うのはどうだ?」
(決闘って...)なんでそうなったという表情を隼人は浮かべながら考えていた。
サーシャのお母さんは楽しそうに言った。
「あら、素敵じゃない二人の騎士が姫を奪う合うなんて。」サーシャのお母さんは左手をほっぺに当てて羨ましそうにしていた。
「私は誰のものでも無いんだからね。ちょっと聞いてる?」
サーシャは頰を膨らませるのであった。リリィーはがっかりしていてため息をつくのであった。
「おい、人間逃げるなよ。決闘は明日の正午だからな。」エルフの少年は残りの食べ物をガツガツと勢いよく食べ、サーシャのお母さんに食事の礼を言うとその場から立ち去るのであった。
隼人は困っていた。正直、内心ではこんな風に思っていた。(えーめんどくさいな、決闘って...戦わないといけないのかよ..)そんな表情が出てしまったのか?サーシャは言った。
「ねえ〜隼人、決闘挑むでしょ?私とロビンの結婚を阻止して、お願いよ。これは私の為でもあってリリィーの為でもあるのよ。」
「んーでも一体どんな風に戦えば良いのか分からないよ。」と隼人は頭をカリカリするのであった。
「決闘って言っても殺し合いじゃないし相手に『参った』って言わせるか、戦闘不能にさせればいいのよ。」サーシャはそう言うのであった。
「そうね、ロビン君は弓が上手いのよね〜サーシャと同等かそれ以上の腕よ。遠距離戦だと勝てないかもしれないわね。」と、サーシャのお母さんが言うのであった。
「でも、ロビンは一つだけ欠点があるわ。」サーシャはそう言った。
隼人は一体、それは何かと尋ねた。
「自信過剰な所よ。何でも出来る、って思ってるからハンデを与えて、戦うはずよ。そこをついて隼人の唯一、得意分野である何かを使って決闘させればいいわ。」
「得意分野か...」隼人は考えていた。(そうなると、やはり剣術ぐらいか....)
「決めたよ..サーシャ。剣で戦う。」
「分かったわ。お母様、聞きましたね。」
サーシャのお母さんは頷くのであった。
「決まったみたいね。残りのご飯を食べちゃいましょう。」
再び4人はご飯を食べるのであった。
今回出てきた、新しい登場人物はサーシャの幼馴染のロビンです。一応、幼少期の頃リリィーとサーシャの3人で遊んだ事があり、リリィーをサーシャと勘違いして覚えています。実際にロビンが好きだったのはリリィーだったんですけれども、リリィーもサーシャもとても似ているので勘違いしているみたいです。