エピソード6
森に入った二人は巡回をするのであった。
「なんか平和だねサーシャ。鳥の鳴き声もするし、ほのかに風も吹いて気持ちぃ〜」隼人は両腕を上にあげストレッチしながら歩くのであった。
「そうね、けど油断は禁物よ。ダンジョンとかより豹変はしないけど魔物や獣が隠れてたりするんだからね。」
「豹変?」
「まあ、大体ダンジョンに限った話なんだけど壁が壊れて魔物が急に溢れたり、地面が壊れるって事ぐらいかしらね。」
「へえー、それって結構やばいね。」サーシャは頷き、隼人は苦笑いするのであった。見回りを始めて数分、辺りからは良い匂いがするのであった。
(花の匂いかな?)
隼人はその匂いを辿って行くのであった。着いた先には花びらの大きな綺麗な花が咲いていた。隼人はもっと近づいて匂いを嗅ごうとした瞬間、サーシャは叫んでその花に向かってテニスボールぐらいの大きさの石を投げるのであった。
「危ない!」
石が隼人の横を通り過ぎた、瞬間隼人はびっくりして言った。
「石を投げるなんて、危ないじゃん!サーシャ!」
「あの花をよく見てなさい。」
サーシャの投げた石が花の花弁に当たると、花は急に色を変え、口なようなものが出て、石を食べるのであった。隼人は慌てていた。
「い、一体なんだよあれ!」
「あれは食虫植物の花よ。って言ってもサイズが大きいから人、動物、魔物、見境いなく何でも食べるの。」
石を食べ終わった花は元の綺麗な姿に戻るのであった。
「あまり知らない物にはむやみに近付かない方が良いわよ。この森はあんな感じの植物が結構、生えてるわよ。」
隼人は頷き、出来るだけサーシャから離れずに付いて歩くようにするのであった。
サーシャは隼人に言った。
「ここからずっと真っ直ぐ行くと私と隼人の出会った場所よ。」
「え?もうそんな所まで来たの?」
サーシャは横に首を振った。
「実際、隼人と出会った場所はエルフの森から直進で行ける距離なのよ。私は見回り帰りで隼人の声が聞こえたから駆け寄った感じかな?」
「へえーそうだったのか。」
二人が話しながら歩いているとサーシャと隼人の出会った場所からは騒がしい声が聞こえた。サーシャは隼人に向かって人差し指を立て口に当て、二人はその場所に近づいて行くのであった。そして二人は草木の多い茂みから様子を伺うのであった。そこにはサーシャが殺した横たわるゴブリンと他のゴブリンが数体いた。そして、数体のゴブリンはそれについてまるで話をしているかのように見えた。それを見たサーシャは驚きながら小声で隼人の耳元で言った。
「ゴブリン同士が話しをしてる所なんて初めて見たわ。そもそもゴブリンは知性が低いか個体で行動する事が多いのに...」
それを聞きながら隼人は『ふーん』と軽い返事をしたが、隼人は他の事に意識がいってしまっていた。
(サーシャ近いな、やっぱり女の子が近いとドキドキするな。)
そんな事を考えていた隼人だったが右腕の辺りから気持ち悪い感触が感じた。隼人はまさかと思い、恐る恐る見た。生憎嫌な予感は的中した。隼人の嫌いなムカデらしき虫がよじ登っていたのだ。隼人は声を出すのはやばいと思い必死に堪えていたが腕を振り、虫を振り払うのであった。その動作の所為で草木が風ではなく不自然に動き、一体のゴブリンはそれに気づき茂みにゆっくりと近づいて来るのであった。
近づいて来るゴブリンを見たサーシャは貴方一体、何をやっているのと隼人の肩を揺さぶるのであった。仕方ないと思ったサーシャは弓を持ち、隼人は腰回りに付けていた剣に手を伸ばすのであった。
その瞬間!....ガサガサと他の茂みから音が出て、野ウサギが出て行くのであった。それを見たゴブリンは仲間の所に戻っていくのであった。
それを確認した二人はホッとした。
「隼人ったら何やってるのよ。」
「ごめん。サーシャ」二人は小声で話した。
ゴブリン達は何かを話し終えると同士の遺体を運び持ち去るのであった。
「どうやったら、あいつら行ったね、サーシャ。」
「危うく危ない所だったじゃないのもおー!」
「ごめんごめん。」
隼人は両手を合わせてサーシャに謝った。
「まあ、良いわこれぐらいにしてギルドホールに帰るわよ。」
隼人は頷き、二人はその場を立ち去り帰って行くのであった。後にここで起きたこの出来事が大きな事に発展するとは、誰もが予想してなかった事であろう。
ギルドホールに着いた二人は受付人から報酬を貰うのであった。
「お二人さん、お疲れ様でした。これはクエストの報酬です。」
受付人は銅貨8枚をサーシャに渡すのであった。
「ありがとうね。」
「そちらの隼人様はこちらをどうぞ。」
すると受付人からサーシャと同じマジックポーチを貰うのであった。
「ありがとうございます」(これがマジックポーチか..)
隼人はマジックポーチを腰に付けるのであった。それを見ていたサーシャは言った。
「これで隼人も一人前の冒険者になったね。」
そう言われた、隼人はなんか嬉しくなり少し照れくさかったのである。
「あ、隼人ったら照れてる。」
「て、照れてなんてないよ。」隼人は横に顔を向け言うのであった。
「ふーん」少し姿勢を崩しサーシャは隼人の顔を覗き込むように見るのであった。そんな普段、見せないサーシャの素振りなどが可愛いと、隼人は思っていた。
「とりあえず今日はこれで一旦帰りましょうか。もう時期夕方になるし。」
「うん。」
「ありがとうございました。」受付人はお辞儀をしたのであった。隼人は軽く会釈をして、二人はギルドホールを出て行くのであった。