エピソード3
サーシャの後に続いて螺旋階段を上って行く隼人。よくよく隼人は思うのであった。綺麗な後ろ姿、そして階段を上る際、左右に揺れる銀髪のポニーテール。胸以外、除けば隼人の好きなタイプにドンピシャだった。
部屋の前に着いた隼人。隼人はサーシャに自分の鼓動が聞こえてないか?というぐらいドキドキしていた。サーシャがドアノブを回した。
(いざ女の子部屋に出陣!)
隼人が想像してた感じとは違うが、とてもお洒落であった。
家族一家が描かれた絵が飾っており、装飾品、箪笥、ベッド、テーブル、家具はほぼ揃ってあった。サーシャは隼人に言った。
「椅子に座っていいよ。」
隼人はテーブルの所にある椅子に座り家族の絵を見ていた。サーシャのお母さんの隣には人間らしい人が居た。サーシャとその妹はまだ幼く6、7ぐらいだろうか?そして執事もいた。隼人は恐る恐るサーシャに聞いた。いや、隼人はなんとなく分かっていたが聞けずにいられなかったのである。
「ねえ、サーシャ。」
「何、隼人?」
「飾ってある絵でサーシャのお母さんの隣にいる人ってお父さん?」
少し重い空気になったがしばらくしてサーシャが言った。
「うん...私のパ..お父さんはね人間だったの。ある時、若かった頃お母さんが森の中で散歩してる時、獣が襲って来てその時助けられたんだって。その人が私のお父さんだった訳なんだけれどもお母さんはお父さんに一目惚れしちゃったみたいで。しかもお母さんはハイエルフ言わば、エルフ族の中で長の立場にいる家系の出身みたいで、家族から反発があったらしく二人の恋は受け入れられないから逃げて来たって、事はお母さんから聞いてるの。」
「そうなのか。若い時って言うけどお母さんまだ若くない?」
「お母さんはもう結構な歳よ?450歳かな?私も歳は気が遠くなるから数えてないけど。」
(気が遠くなるって、やっぱりエルフが長生きって事は本当だったのか。って事はサーシャも歳上なのか、幼く見えるけどな...)
「それより隼人〜今後はどうするの?元いた世界に帰る手段でも探すの?」
そう聞かれた隼人は悩んだ。何故なら元いた世界には特に未練がなかったのである。強いて言えば親が心細いぐらいだ。少し考えた上で隼人は返答した。
「まあ、元いた世界に帰る手段はあると思うから気長に手掛かりを探してみるよ」
その言葉を聞いた、サーシャは表情には出ていなかったが何処となく嬉しそうだった。
ドアがノックする音がした。
「入って、良いわよ」
隼人はレオがご飯を持って来たのかと思ったが違った。
ドアを少し開け隙間から覗く視線があった。一体、誰なのかと隼人は思った。レオでないのは開けた時に確信した。
「リリィー入ってくれば良いのに。そんな所に立って覗いてもつまらないでしょ?」
そう言われ、部屋に入って来たのは先程部屋を間違えて入ってしまった時の少女だった。
「し、失礼します。お姉様。余りにも二人が楽しそうに話してるのでつい来てしまいました...」
少女は恥ずかしながら自分のお姉さんが座っているベッドの所に行きお姉さんの隣に座った。
「隼人。改めて紹介するわね私の自慢の妹のリリィーよ。」
「は、初めまして。」
「初めまして。」
サーシャとサーシャのお母さんとは違い、髪色は茶色で絵に描かれているお父さんと一緒だった。顔半分は前髪で隠れていたがやはり親子全員そっくりであった。
三人は色々な事を話していくうちに分かち合うようになっていった。時間が過ぎていく事を忘れるぐらい夢中になって話していた。
コンコン、とドアを二回ノックする音がした。
「どうぞ。」サーシャがそう言うと
「失礼します。お食事の用意が出来ましたがどう致しますか?」
サーシャは悩んでいた。それを見ていた隼人はサーシャに提案した。
「せっかくなんだし、三人でご飯食べようよ?」
「良いわね。そうしましょう。レオ、悪いんだけれども三人分の食事をここに持ってきて貰えるかしら?」
「はい。サーシャ王女様、かしこまりました。」
しばらく経つとホテルで見るような台車を押しながら食事を持ってきたのである。サーシャとリリィーはテーブルに行き各々の椅子に座った。
色々な食事が並んだが、どれも野菜や果物がメインであった。食事の前にサーシャとリリィーは祈りらしき事をするのであった。流石に先に食べるとマズイと思った隼人はそれが終わるのを待っていた。
サーシャ達が祈り終えた。
「あ、ごめんね。隼人待たせちゃった?」
隼人は横に首を振った。そして二人が食べ始めたのを見ると隼人も食べるのであったが日本人だったら大抵が言う事を言った。
「頂きます。」
その言葉を聞いた、リリィーは隼人が何を言ってるんだと思い隼人に尋ねた。
「あ、あの〜隼人様『頂きます』って、どう言う意味何ですか?」
「簡単に言うと祈りに似ているかもしれないね。『頂きます』って言うのはこの料理を作ってくれた人への感謝の気持ちと食材への感謝だよ。」
サーシャとリリィーは納得した表情を浮かべていた。そして皆ご飯を食べ始めるのであった。
隼人は豆と野菜スープらしき料理を最初に飲み始めた。
(美味しい)
ひよこ豆、レッドキドニー、そしてそら豆だろうか?色々な豆の食感が活かされつつ、甘酸っぱい味付けだった。とても爽やかな味わいだがとてもどこか味わい深い物を感じるのであった。
そして食卓の中央に置いてあったパンを取りちぎって、パンにスープを吸わせて口の中に頬張るのであった。
それを見ていたサーシャは思わず笑いを堪えた涙目顔で言った。
「顔がリスみたいになってるわよ。そんなに急がなくても、沢山あるからゆっくり食べなさい。」
そう言われた、隼人は少し恥ずかしかった。美味し過ぎてガツガツと食べていたらしく、少しペースを落として食べるのであった。
隼人は食事を終えると「ご馳走様でした」と言うのであった。
食卓に並べられた料理はどれも美味しかったので隼人は満足するのであった。
「隼人。『ご馳走様でした』ってどう言う意味なの?」サーシャが尋ねた。
「大変な思いをして料理を作ってくれた人への感謝の言葉だよ。」
「ふーん、そうなんだ。満足してるみたいだし、良かったわ。お口に合うかどうか心配してたけど問題なくて安心したわ。」
そして食事が終わり数分経った頃合い、またドアがノックされるのであった。
「どうぞ〜」サーシャはそう言うと、レオが扉を開け台車を押しながら他の物を持ってきた。
「食後のお飲み物を持ってきました。」
「ありがとう。」
レオは三人の所に一個ずつソーサーとティーカップのセットを置くのであった。
そしてお茶を入れ始めるのであった。匂いからしてハーブティーだろうかとても落ち着く匂いがした。
「そう言えばレオ」
「何でしょうかサーシャ王女様?」
「隼人が貴方の作った料理を『美味しい』と満足してたわよ。」
それを聞いたレオは軽いお辞儀をして言うのであった。
「ご満足していただき、有難い限りです。」
隼人はレオにお礼を言うのであった。
「ありがとうございました。美味しかったです。」
レオは再度お辞儀するのであった。三人のお茶を淹れ終わるとレオは食べ終えた食器を集め台車に乗せ退室するのであった。
「この世界にいる間お金が必要になる上でクエストいわゆる仕事を貰う事の出来る、ギルドホールを案内するわね。」
サーシャはそう言ったので隼人は頷くのであった。
「じゃあ、みんなお茶も飲み終えた事だし解散にしましょう。くれぐれも隼人寝坊はしないでね。お休みね〜」
「うん。お休み。」
そして各々部屋に行くのであった。隼人は部屋に着くと直行でベッドの上に飛び込むのであった。
「なんか今日は疲れたな。寝たら元いた世界に戻ってる、って事ないよな...」
そう考えているうちに知らず知らず、ベッドの心地良さのお陰と疲労の所為で眠りに着くのであった。
そして異世界での1日目が過ぎたのであった。