エピソード1
*この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ございません。
少年は森の中に立っていた
前方には弓を持つゴブリンがおり、少年に向かって矢を放つのであった。風を切る様な音はさながら現実感があった。放たれた矢は少年の頬を掠って 後ろの木に深く刺さった。少年の頰からは、血が滴り落ちる。少年は腰が抜けたのか、その場に座り込むのであった。ゴブリンは自ら放った矢が少年に当たったのを見て喜んでいた。そしてまた、弓を放つ姿勢に入った。少年には何が起こっているのか把握出来なかったが、直感的にやばいと感じ、直ぐに立ち上がり逃げるのであった。
「痛えッ、何だよこれ、何なんだよ!!笑えねえよ。これって夢じゃないのかよ、夢だったら早く起きてくれ!誰かぁ〜誰かぁ〜助けてくれ。一体、俺が何したって言うんだ?」
叫びながら逃げる少年を嘲笑うかの様にして一定の距離を保ちながら、不気味な笑い声を出して追いかけるゴブリン。
「キェ〜 ケッケ」
少年は必死に助けを呼び求めた。その声が聞き届けられたのか、走っている前方の草木の茂みから声がした。
「地面に伏せて!」
少年は言われるがままに地面に伏せた。その瞬間、茂みの方から矢が飛んで来た。矢は頭上を通りすぎ、ゴブリンの胸に命中して倒れるのであった。少年は立ち上がり、恐る恐るゴブリンに近づき様子を伺った。
目は開いており口からは血らしき青紫色の液体を吐き出していた。
―――時は遡る
神奈川県の某高校に通う高校一年生。少年の名は、龍炎寺 隼人。さながらどこにでもいる平凡な学生だ。唯一違う点があるとしたら家系は代々の武術家で色々な武術を叩き込まれたことだ。
隼人は普段通りに学校が終わると、帰宅するのであった。部活には入っているが俗に言う幽霊部員である。
剣道部に所属しているが、先輩と部の空気に馴染めず、行かなくなってしまっていた。けれどもそんな隼人にも唯一の楽しみがあった。それは家に帰って遊ぶバーチャルオンラインゲームだ。
今日は有名なゲーム会社ユニックとポニー、2社による共同開発したゲームのオープンベータの日であった。ゲームの名は………
「エファセ・リトス」
大まかなゲーム内容は色々な役職と種族があり、ゲーム世界を冒険してクエスト・隠しクエスト・イベントをこなして隠された、七つの石を探し集めたものが願いを叶えられると、言う設定のVRMMROPGだった。
隼人は家に着くと即効で宿題、風呂、ご飯を済ませて自分の部屋に行った。隼人はヴァーチャルギアが置いてある机に行き、ゲーミングチェアーに座りヴァーチャルギアをオンにした。ヴァーチャルギアを着け、事前にダウンロードしといた、エファセ・リトスをボイスコマンドで開き、ログインIDとパスワードを入れると、パッチ画面が始まった。
パッチ画面中はゲーム内世界を空を飛んでいる視点で味わう事ができた。隼人は鳥になった気分でそれを味わっていた。
「よし、始まった。キャラ名はHayato、役職は結構あるなー、色々な武器が使えるオールラウンダーがいいな。」
隼人は難なくチュートリアルなどこなして行き、クエストをやろうとしていた。
「ゴブリン40体か結構多いな、まあ気長にやって行くか。」
隼人はクエストをやっている途中、睡魔に襲われ、ゲーミングチェアに座ったまま、寝落ちしてうまうのであった。
―――そして現在に至る
茂みからは少女らしき人影が出てくるのであったが、隼人がゴブリンにあまりに近づき過ぎているため、隼人に向かって少女は言った。
「危ないよ!」
その瞬間、ゴブリンは最後に力を振り絞るかの様に、隼人に襲いかかるのであった。驚いた隼人は尻もちをついてしまった。しかし、少女はそれを悟っていたかの様に矢を放つのであった。その矢は見事にゴブリンの頭に刺さった。
「君、大丈夫?」
隼人は振り向くと驚いていた。少女の容姿は人間に似ているがそれとは異なっていた。耳は後方に長く尖っており、髪の色は白銀色で紐で結ばれ整えられており、綺麗な服装のおかげで肌は一層白く際立っていた。年齢は隼人と同じぐらいだろうか?可愛い顔つきをしていた。隼人は心の中で呟いた。
「(本物のエルフだ!)」
思春期の所為か?隼人の目線は胸の方に行ってしまった。それを見た隼人はがっかりした表情を浮かべてしまった。
「ちょっ....!今、私の胸見たでしょ?見たでしょ!そしてがっかりしたでしょ?!信じられない。助けた恩人を胸で判断するなんて!」
少女は腕で胸を隠して赤面顔で怒るのであった。そして言うのであった。
「私、これでもまだ成長期なんだから!」
隼人は慌てて手を振り、少女に言うのであった。
「む、胸....いや違う。助けてくれてありがとう、俺の名前は龍炎寺 隼人。」
少女は全く話を聞かず怒っていた。隼人は少女が傷ついたのを感じ取ったのか、誠意を込めて何回も謝るのであった。それを見た少女は呆れた顔で仕方なく許す感じを見せ、口を開くのであった。
「まあ、良いわ私の寛大さに免じて許してあげる。そもそも私みたいな、エルフが人間と話すなんて有り得ない事なんだからね!感謝しなさい。それはさておき、私はサーシャよ。貴方、何処から来たの?変わった名前に変わった服装してるわね?」
隼人は自分の服を見た瞬間に驚いた、学校の制服姿であったのだ。隼人は頑張って色々と起きている出来事を把握しようと一旦、大きく深呼吸するのであった。そして隼人はサーシャに返事をした。
「日本。」
「ニホン?変わった王国の名前ね。」
「サーシャ、ここは一体何処なんだ?」
「ここはエルフの森付近に位置する外れよ。ロクな装備も無しで一体ここで何をしてるの?ここにはゴブリンや獣がいっぱい、住み着いているんだから!運良く私が見回りしてたから助かった物の一人でウロウロしない方が良いわよ。」
「気づいたら、ここにいたんだ。そしてあのゴブリンが目の前にいて、急に矢を放って来たから逃げて来たんだ。」
「ふーん、どうやら貴方何らかの転移魔法を受けたみたいね。」
「転移魔法!!??そんなの漫画だけの話かと思ったのに....」
「マンガ?」
少女は首を傾げて興味を持っていた。
「積もる話はあると思うけれども、ここは危ないから一旦私の住んでる場所まで行くわよ。」
サーシャの言われるがままに隼人は後について行った。茂みと言う茂みを掻き分けながら進み、数分だろうか?サーシャが言った。
「着いたわよ。」
隼人はポカーンとし、驚きの表情を隠せなかった。普通にそこは何もなく今まで通って来た茂みだらけの森林であったのだ。そんな阿呆面を見たサーシャはクスクスと笑った。
「面白い反応してるわね。良いから後について来てね。」
サーシャがまた前に歩き始めたその瞬間、急に消えたのだ。驚いた隼人は透かさずサーシャが歩いた方面を歩いた。まるで別の空間に入った感触が少し体で感じ受けられ、隼人は少しの間目眩に襲われたので目を数秒瞑った。目を開いた瞬間隼人はその光景に驚いていた。
サーシャと似たような容姿をした男女があちらこちらにおり、生活をしているのであった。そして大きな木が数百本も生えており、その木とかにはドアや窓らしき加工が施されてるのであった。サーシャは隼人を見つめていた。
「隼人、目眩は大丈夫?エルフ以外がここに入る時、大概の他種族は目眩がするのよね。まあ外部から、ここに入るにはエルフが一緒じゃないと入れないって言う条件付きなんだけどね。」
「へえ〜そうなのか。」
二人が大通りらしき道を通ってるいると、隼人は多くの視線を感じるのであった。隼人は辺りを見渡すと他のエルフの住民が睨みつけるような視線をしていた。少し怯えた隼人はサーシャに尋ねた。
「ねぇ、サーシャなんかすごく睨みつけられる様な視線を浴びてるんだけど、大丈夫かな?」
「あんまり気にしないで良いわよ。さっきも言った通りエルフが人間と一緒に居るってことは滅多に無いし、エルフの大半は人間が嫌いなのよ。」
二人が歩きながら話しをしていると、前方から砂埃を上げて走ってくる人影が見えた。
「王女様〜王女様」と、声を叫ぶ人が段々と二人に近づいて来た。サーシャはやばいと言う表情を隠せなかった。その言葉が聞こえた隼人はそんなまさかと、言う表情を見せていた。そして二人の前に息を切らせるエルフの執事が来たのである。
「ハァハァ。これは失敬。サーシャ王女様、勝手に一人でぶらつくのは辞めて下さいと何度も言いましたでしょうに。もし何かあった時には、リリィー女王様に何と申し出たらいいか私は分かりません。」
エルフの執事は自分の汗をハンカチらしき布で拭きながら困り顔でサーシャに優しく言うのであった。
「だ、大丈夫よ、私だってもう子供じゃないんだから。弓だって一人前に使えるんだから!」
サーシャと執事が話し終えると執事は隼人の方を見た。そして本当だったのかと、言う表情を浮かべて言った。
「人間よ悪い事は言わない、今すぐここから立ち去れ。ここはお前が来るような場所ではない」
先程の優しそうな表情の執事の顔とは一変してものすごく怖い顔になった。そう言われた隼人は背中に冷たい水を掛けられたかのように冷や汗を流すのであった。それを聞いていたサーシャは執事に言った。
「そんな言い方、ないんじゃないの?せっかく私が窮地にいた、彼を助けてここ迄連れて来たのにそれを無駄にする事は私が許さないわよ。」
「しかし、サーシャ王女様...人間は何を仕出かすか分かったものではありません。万が一の自体を考えてここは最新の注意を払うべきかと....」
「それ以上、口答えすると母上に言いつけるわよ。今亡き父上の言葉を侮辱する事に値するわよ?」
そのサーシャの言葉を聞いた執事は深く頭を下げて言った。
「大変失礼しました、サーシャ王女様。この私、執事の分際で飛んだ出過ぎたご無礼をお許しください。」
「いいわ。」
執事はサーシャに感謝の意を表してから隼人に向かって言った。
「サーシャ王女様に後で感謝するのだな」と少し不機嫌そうに言うのであった。
「サーシャ王女様、これからどう致しましょう?」
「そうね、今から帰るわよ。母上に大事な報告もしないといけないし....そこにいる彼..いいえ、隼人は丁重にお客様として接しなさい。」
「かしこまりました。サーシャ王女様。では僭越ながら私がお家まで一緒にご案内致します。」
執事が先頭に立ち、大通りを歩き始めた。二人は執事の後について行くのであった。隼人はサーシャに近づきお礼を言うのであった。
「ありがとう。サーシャ」サーシャは首を横に振り微笑んだ。
歩き始めて数メートル、道は大通りから外れ、狭い道を数百メートル進んだ所だろうか?やがて大樹が三人の前に姿をあらわした。大樹のすぐ真後ろ近くでは滝も流れており綺麗であった。大樹の根元付近には入口らしきドアが付いてあった。
「さてと家に着きましたぞ。隼人様は少し汚れているので浴場に連れて行っても大丈夫ですか?サーシャ王女様?」
「うん。よろしくね。レオ」
(レオって言うのか...)隼人は思うのであった。
「かしこまりました。では隼人様は私に着いて来て下さい。」
ドアを開け、三人は家の中に入っていった。外見と違い、中はとても広く、螺旋階段・床・窓・壁などしっかりと出来ており、壁には綺麗な装飾までされていた。螺旋階段は各階に繋がっていた。三人は途中まで螺旋階段を上っていたが、隼人とレオは三階で止まった。それを見た、サーシャは言った。
「じゃあ、身体を洗ったら準備が出来次第7階に来てね、お母様に会わせたいから。」
「うん。分かった。」
隼人は頷くのであった。サーシャは手を振ってから、また螺旋階段を上って行くのであった。
レオに案内され風呂場に着いた。まるで旅館の様な作りで脱衣場もしっかりしていた。
「では隼人様、服は準備して外に置いときますので。隼人様の部屋は8階の一番奥側です。私は用事が有りますので、それでは失礼します。」
「ありがとうございます。」
執事は軽く会釈して外に出て行くのであった。
隼人は汚れた制服を脱ぎ、浴場の扉を開き入って行った。床には石のタイルが敷き詰められておりとても綺麗であったが、隼人は見回した。異世界でもシャワーはあるのかと隼人は感心していた。隼人は汗だくに汚れた身体をシャワーでよく洗い、風呂のお湯に浸かるのであった。とても気持ちよくオッサンみたいに一息つくのであった。この時、隼人は気付かなかったが、このお湯のお陰で顔の頰、切り傷は治るのであった。
読者様の貴重な時間を使って読んで下さり、ありがとうございます。m(_ _)m 作者のニート太郎です。趣味で初めて小説を書くので句点や描写が少ない部分もありますが、出来るだけ定期的に出せるように頑張っていきますので、暖かく見守って頂けると嬉しいです。今後ともよろしくお願いします。助言または感想も待っております。中傷的なコメントは勘弁して下さい。一応初心者なので。苦笑(本文修正などが度々入ることもあるかも知れませんが出来るだけ何回も自分で読んで、無いように努力しますがやむ得ない場合も有りますので、ご了承下さい。)