猟銃
「お前は北軍か?」
「そっ、そうです」
北軍かと言う問いにロウは素直に頷きそう答えた。
何故ならロウはその兵士から殺意を感じられなかったからだ。
「さっき我々の危機信号弾がこの辺りで飛んだんだが何かあったのか?」
赤い軍服を着た兵士達の一人がロウにそう聞いた。
「え?危機信号弾ですか? ………いや、全く分かりません ………とゆーか、あなた達は一体誰なんですか?僕が北軍て言っても何もしないって事は北軍の人なんですか?その軍服は見た事もないんですが?」
ロウは不思議そうに話しかけて来た兵士を見ながらそう聞いた。
「ははっ、俺たちは北軍じゃないさ、南軍だよ」
赤い軍服を着た兵士が笑いそう答えた。
?!
「えっ?!南軍ですか?!じゃ、じゃあ、北軍の味方ですよね?おっ、お願いします!今すぐ助けて下さい!」
ロウは南軍と聞いて安心し、そう言った。
「助けて下さいって、やっぱりこの辺で何かあったのか?」
赤い軍服を着た兵士が怪訝そうにロウを見てそう聞いた。
「はっ、はい、あなた達が一体誰なのかが分からなかったので言えませんでしたがこの階段の先で今、北軍と王族兵が戦っているんです!今すぐ助けて下さい!」
ロウは階段を降りきって、話しかけて来た兵士にそうお願いした。
すると赤い軍服を着た兵士が階段の上を見た後、ロウを見て、
「そうか、分かった、今すぐ助けに行く、お前は危ないからこの階段から離れてろ」
そう言った。
兵士に離れるよう言われたロウは兵士達から離れた。
すると、赤い軍服を着た兵士達がかけ声と共に馬に乗ったまま凄い勢いで階段を駆け上がって行ったのだった。
その階段を駆け上がって行く赤い軍服を着た兵士達の姿はロウと話していた時とはガラリと様子が変わって殺気立ち、まるで火山が噴火しマグマが空に向かって登り立って行くような様子だった。
戦場に行く赤い軍服を着た兵士達のエネルギーに圧倒され、ロウはその様子を呆然として眺めていた。
(こんな感じは始めてだ……… 6師団の人達や北月師団の人達でさえこんな感じにはならなかった……… この人達は一体何者なんだ?)
ロウがそう考えていた時、ふと、さっき遠くの方で銃声と煙が立ち昇った建物が気になり見て見た。
すると、白髪の老人のような人が身体を振らつかせ屋上にあるドアを開け、去って行ったのが見えたのだった。
(まさか、あんな老人が一人で何かしたんじゃないよね?てか、あの人北軍の軍服着てたな………)
ロウはそう思いながらふと小さい望遠鏡を服から取り出し老人の様な人が去った屋上を望遠鏡で覗いてみた。
すると、猟銃の様な長い銃が屋上の角の上に一つだけ捨てられてあったのをロウは見たのだった。