抹殺
キューイはフギの町に向け偵察を30人程放ち、誰にも気づかれる事なく町の情報を仕入れ、その後、キューイ率いる北月師団がフギの町を攻略し始めたのであった。
その間、ロウと6師団は待機をするよう言われ、ロウは物陰に潜みながらその様子を見ていたのだった。
次々とフギの町に潜入して行く北月師団の兵士達の手際の良さにロウもマール達も呆気に取られながら見ていた。
「足音1つつけずにあんなに素早く……… すげぇなあいつら………」
マールはその様子を見ながらそう呟いたのだった。
ーーー
キューイはフギの町に潜入すると真っ先にこの町の数カ所に設置されてある鐘を狙った。
この敵の侵入を報せる鐘を鳴らされると山の上にも響きわたる鐘の音によって王族兵達に町の異変を気づかれる恐れがあるからだ。
そしてこの町の鐘を全て制圧するとフギの町にいた中央軍の兵士達は次々と北月師団の兵士達に抹殺されたのであった。
だが、途中まで順調に進んでいたフギの町攻略だったが突然、事態は思わぬ方向へと動き始めた………
セナをさらった王族兵達がどの辺まで来ているのかを調べる為に放っていた密偵がキューイの元にやって来た。
「報告します、セナさんをさらった王族兵と思われる集団を見つけました」
密偵は額に汗を流しながらキューイにそう報告をした。
「ご苦労だったな、で?その集団は今どの辺にいた?」
キューイは密偵の流す汗を見ながらそう聞いた。
「はっ、はい、もうこの町のすぐそこまで来ています、私が見たのはこの町から3キロ程先で見つけたのですがキューイさんを探すのに時間がかかったので、もしかしたらもうこの町に来ているかも知れません」
密偵は汗を流しながらそう答えた。
?!
「なんだって?!もうこの町に来ているかもだって?!そんなバカな!睡眠も休憩もなしでどんなに頑張って早く来てもあの山を越えるのには2日はかかる!見間違えじゃないのか?!」
キューイは驚きながらそう聞いた。
「はっ、セナさんを確認する事は出来なかったのですが王族兵の一団であったのは間違いありません」
密偵はキューイの目を見ながらそう答えた。
「そうか……… お前が見間違える訳ないか……… いや、王族兵ならそれも十分考えられるな……… 俺たちの敵が規格外だって事をすっかり忘れてた……… だとすると……… マズいな………」
キューイはそう言い、ロウと6師団が待機している方角を見たのだった。