"赤羽美園"
少女の名前は赤羽美園。
普通の高校に通う一見普通のどこにでもいそうな高校一年生だ。
ただ、少女の素性は異質だ。
まず、少女には肉親である母親の他にもう一人実質母親の存在の者。いや、物がある。
それは人型アンドロイド。見た目は普通の人間そのものだ。
飲食ができない。人間と同様の手段では子孫を残せない。人間より運動能力が高いこと以外は人間とほぼ同レベルと言ってもいい。まさに"今"という時代を感じる逸品だ。
そして、少女は物心ついたころから小学校卒業の年齢になるまでずっと無機質なコンクリートの壁の"部屋"に住んでいた。"部屋"というよりは牢獄の方がお似合いだろう。
"ママ"と言ってもなにも返ってこなかった。
一人ぼっちだった。それが二年くらい続いていたらしい。これは母親から聞いたことだから本当かはわからない。
ご飯時になると黒服の人が現れて私少女にご飯を食べさせる。風呂は来宅の老人介護で使うような湯舟と先ほどのような人が二,三人現れて私の体を洗う。
とにかく少女は部屋から出してもらえたことは無かった。
その二年が終わった頃、少女の部屋に初めての"黒くない人"が現れた。それが先ほどのアンドロイドだ。
少女はそのアンドロイドと遊んだり、勉強したり、話したりした。
ただ、そのほかの事に関しては今までと同じ。小学校卒業する頃の年齢になるまで部屋からは出られなかった。
そして、極め付けにはなんと"赤羽美園"という名前は私の本名ではないのだ。
知ろうにも少女の過去の写真はほとんどなく、生まれたころの写真は意図的に名前が書いてあったと思われるところだけ切り抜かれているのだ。
今まで願ったことはほとんど大人の力によって踏みつぶされてきたが、これだけはどんなに踏みつぶされても真実を知りたい。そう思った。
カミサマが本当にいるなら間違いなく願うだろう。自分の本当の名前を教えてくれと。
だから少女はカミサマがいないこの世界でも願う。
この物語は、約十年間部屋に閉じ込められていた少女"赤羽美園"が家族であるアンドロイドや友人と少女の隠された過去を突き止める過程で、少女の"人間としての成長"を描く日常的だが、ちょっぴり切ない物語である。
現実世界物を書いてみたいと言ったので書いてみました。
事実上本家である"曰く付きの友人と行く異世界冒険記"とは打って変わり日常系(?)です。
更新頻度は本家より低くなる可能性がありますが、"曰く付きの友人と行く異世界冒険記"同様応援していただけたら幸いです。