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あれからギルドカードを作り終えたマリアンナさんも加わって、ちょっとした女子会のようになっていた。

お菓子も追加され、どんどん盛り上がるなか、ついに孵化が始まった。




「ほら、がんばれ!もう少しだ!」




ゲームの中とはいえ、生き物の誕生は、なかなか感慨深いものがある。さあがんばれ、後もう少しで殻が割れるぞ!




「キュイ~…」


「お、おおおおおっ?」


「あらあら」


「か、可愛いです~~!!」




生まれたエメラルドグリーンの羽毛の塊を優しく持ち上げる。なんの生き物だろうか。羽毛が生えているから、鳥かなんかか?

にしてはどうも手足が太─────手?




「それはベビードラゴンね。ドラゴンの子供には羽毛が生えていて、成長すると抜けてくるのよ」


「そうなんですか……」




なるほど、確かにドラゴンなら手が生えていてもおかしくないな。よく見たら顔もドラゴンっぽいし、小さいけど角も生えている。今は頼りないけど、成長したら立派なドラゴンになるんだろう。


さてと、それじゃあ次に名前をつけよう。名前をつければテイム完了だ。




―――――――――――――――――――――――


リュウビ Lv1


種族 ベビードラゴン


スキル


【噛みつき】【爪撃】【雷魔法】【ブレス】


称号

スカイの従魔 雷極竜の子


―――――――――――――――――――――――




この子の名前は”リュウビ“で決まりだ。

名前の由来は特にない。何となく閃いてこの名に決まった。


まあそれはともかくとして気になる事がある。

称号のところにある“雷極竜の子”。雷極竜とは何なんだろうか。今度レーカにでも聞いてみよう。




「これからよろしくね、リュウビ」


「キュッ!」




ボクの声に反応してリュウビが元気よく声をあげる。

始めはソロで行こうと思っていたが、思わぬところで仲間が出来た。これからは一人と一匹、楽しくなりそうだ。




◇◇◇◇◇◇◇◇




「………美味しい?」


「ムキュッ」


「よかった。ゆっくり食べなよ」


「大丈夫か嬢ちゃん。目が死んでんぞ」


「大丈夫じゃないから英気を養ってるんです。串焼き、今度はタレで」


「お、おう。30Gだ」




屋台のオジさんから通算10本目の鳥の串焼きを受け取る。

冒険者ギルドを後にしたボクは装備をオーダーメイドで作ろうと考えた。それでさっそく店を探そうと思ったものの、いまいちわからなかったために、レーカに連絡してオススメのお店を案内してもらうことに。それで集いの広場で待ち合わせをしていたのだが………。




「なにもナンパまで集わなくてもいいだろー………」




さっきからボクはナンパ野郎共と、何度も”決闘“を行っていた。


…………”決闘“とは、ようはPVPのことだ。

双方の合意があれば、非戦闘地域でも戦闘が行える他、アイテムなどを賭けたりすることができる。

ナンパ野郎共はそれをボクに吹っ掛けてきた。無視することもできるが、売られたケンカは買い占めるのがボクのモットー。逆にボコボコにして有り金を搾り取ってやった。

それで最初の頃はホクホクだったのだが、ああも大量にこられるとさすがに疲れる。




「しょうがねえさ、なんたって嬢ちゃんは別嬪さんだからな!はっはっはっ!」


「笑いごとじゃないですよまったく。ああ、ボクはレーカが来るまでに何人のナンパ野郎の首を跳ねなくちゃならないのだろうか…………」




戦った連中の大体は首を撥ね飛ばした。こうすると1発で殺せるんだよな。他にも頭に風穴をこしらえた奴もいるが、それは少数。弾が切れたから、ぶち抜きたくてもぶち抜けないのだ。




「さっきので二十九人目か?そんじゃあ後もう一人だな」


「嫌ですよ。そもそもボクはそんなにどんぱちが好きな訳じゃないんです。スローライフが好きなんですよ」


「よく言うぜ。スローライフが好きなやつは人の頭にゼロ距離から発砲したりしねえよ。大体なんだよあの威力、人が挽き肉じゃねえか!」


「銃は威力が破格なんです。命中率は糞同然ですけど、当たる距離までこっちが移動すれば問題解決です」


「遠距離武器が仕事放棄してんじゃねえかよ。というかいいのか?こんなにベラベラ情報喋っちまって。いや喋らせた俺が言うのもなんだけどよ」


「別にたいした情報なんかじゃないんで問題ないです。

けれどそうだな、オジさんは従魔についてなにか知ってます?十三人目のボケナスが気になることを言ってたんですけど」


「あの股から真っ二つにされた野郎か?」


「そうそれです。何でも、従魔がレアだとかなんとか。従魔って珍しいんですか?」


「珍しいな。β時代の時には1000人のプレイヤーがいるのにも関わらず、従魔を所持できたのはたったの一人だ」




なるほど、それは貴重だ。

だけどそれでボクに注目するのはやめてほしい。ボクは別に目立ちたがり屋じゃないんだ。


嘆いているボクの肩に手が置かれる。振り向けばそこには、輝くような笑みを浮かべた、まるで、いや、諸に作りものな顔をしたイケメンが。




「ねえ君、そんなやつと話してないで僕とお茶でも──」




はいシャットアウト。コイツも今までと同じ手合いだ。

つまりは斬首案件。しゃらくさいからこっちから決闘の申請を送りつける。

覚悟しろ、五秒で終わらせてやる。




◇◇◇◇◇◇◇◇




「そんなことが……………。申し訳ありませんわお姉さま。ワタクシがもう少し早く着いていれば」


「気にしなくていいよ。確かにナンパ共は不快だったけど、お陰で得られたものもあったし」




30人目の首を撥ね飛ばし終えた辺りで待ちに待ったレーカが到着。またナンパにあってはたまらないと、直ぐ様南の露店通りに向かうことになった。

それと去り際に屋台のオジさんとフレンド登録も。

そしてこのオジさん、実はただ者じゃないらしい。




「ある時は串焼きを焼く男、ある時もまた串焼きを焼く男、その正体はっ!情報屋『チキン・ザ・ペッパー』さ!!というわけでこれからもご贔屓にな~」




「『チキン・ザ・ペッパー』はβ時代の頃からも名の知れた情報屋ですわ。飄々としてますが仕事は誠実。信用してもいい情報屋ですわ」


「へぇー」




あの男嫌いのレーカが誉めるとは、これは信頼しても良さそうだ。話した感じも嫌な人じゃなかったし。




「それにしても、驚きましたわお姉さま。ワタクシがいない間に、変異種の討伐に、冒険者ギルドでの騒ぎ。そしてドラゴンを従魔にするなんて、お姉さま、めちゃくちゃ満喫しておられるみたいで、ワタクシもFWOを勧めた会があったというものですわ!それにお姉さまのスカート姿という激レアなものが見れてもう……!!たまりませんわ!!!」


「どうどう、そんなに興奮しなくてもいいでしょう。確かにボクは制服以外はいつもズボンだけどさ」




お互いに近況を話しながら歩いていく。

レーカの方はβ時代の仲間と供に、東の門を出た平原の先にある森で、梟狩りをしていたらしい。なんでも仲間に弓使いがいるとかで、森に行けば、矢を作るための材料がすべて揃うのだとか。

それと、レーカの現在のレベルは2。図らずも越えてしまっていた。




「それはソロとパーティーの違いが理由ですわ。パーティーは仲間と経験値を分け合いますが、ソロだと一人に集中するからレベルが上がるのも早いのですわ。そのぶん戦闘もキツくなるのですが」




ということらしい。ソロにも一応利点があったようだ。

ボクの方も色々と報告しようとしたのだが、レーカは既に軒並みのことを知っていた。なんでも掲示板とやらにボクの事が取りざたされていたらしい。…………何て書かれてたかはあまり知りたくないな。




「そういえばお姉さま、初回特典は何でしたの?ワタクシは加速効果のある『そよ風のブーツ』という装備でしたわ」


「ボクは【魔工学】のスキルストーンだったよ。よくわからないスキルだけど、とりあえず取得しといた。ってどうしたの頭抱えて」


「い、いえ。悉く地雷を踏み抜くお姉さまにちょっと目眩がしただけですわ………」


「あら?【魔工学】ってあまりよくない?」


「よくないと言うか、使い方がよくわかってないのですわ。【魔工学】は【鍛治】と【細工】と【錬金】の複合派生スキルなんですけど、使えるアーツが《設計図作製》だけなんですの。色々と検証してもなにもできずじまいだったんで、結局外れスキル扱いになったのですわ」


「へー」




これで3つ目の外れスキルか。まあボクは別に効率を求めている訳じゃない。気楽にやってればそのうち【魔工学】の使い方がわかるときが来るさ。




「と、着きましたわお姉さま」




レーカが足を止め、目的地を指し示す。

そこは周りにある露店とくらべて凄まじいほどに悪目立ちしている。具体的にいうと、なんかケバい。ド派手なピンクが異彩を放っている。




「ここのお店は見た目こそとんでもなくケバいですが、その腕はβ時代から一二を争うほどですの。ワタクシの紅百合クリムゾン・乙女リリー・フローレンスも彼の作品の一つですわ」


「その装備そんなオシャレな名前だったんだ。造りも丁寧だし、期待できそうだな」


「あらぁ~、嬉しいこといってくれるじゃなぁ~い?お姉さん、気に入っちゃったわーん♪」




ボク達の会話に突然誰かが割り込んでくる。誰かと思い振り替えると、そこにいたのはチャイナドレスで生足を晒す妖艶な美女────ではなく、モヒカン三編みのタフガイがいた。

顔は渋くて格好良い。だが残念。こいつおネエだ。

久しぶりに見たわこんな濃い人。




「紹介しますわ。この人は裁縫士のキャサリンさんですわ」


「はじめまして~、キャサリンよ~!あなたが今話題のスカイちゃんかしら?。話は掲示板とレーカちゃんから聞いてるわ~」


「はじめまして、スカイです。今日は装備のオーダーメイドを頼みに来ました」


「……あらやだこの子、アタシのキャラを見ても全く動じないわ。なかなかやるわね」


「さすがお姉さまですわ!」




感心されても全く嬉しくないな。大体ボクが驚かなかったのは、知り合いに変態がいて見慣れてるからだ。その変態はボクの通っていた道場の師範で、常時ブルマーだけど鬼のように強かったな。




「それでオーダーメイドの依頼だっけ?いいわよ~受けてあげる♪それで?素材はどうするのかしらん?」


「これでお願いします」




バッグから風独走狼の全身毛皮を置いたとたん、キャサリンの目が鋭く変わる。ボクに許可を取ると毛皮を手に取り、真剣に吟味し始めた。




「損傷はちょっとあるけど状態はなかなか良いわねぇ。頭は………これはどうしようもないからポイね。けど耳は使えそう…………。ねぇスカイちゃん、装備は全身分作った方がいいの?」


「そうですね、それでお願いします。あとできればロングコートを。一度着てみたかったんです」


「わかったわぁ。スカイちゃんはカッコいい系が好みなのね。それじゃあ次は下ね。ズボンとスカート。どっちがいい?」


「ズボンで。長めでお願いします」


「了解よ~。後は手甲と脚甲ね。リクエストはある?」


「手甲は指貫で。脚甲は膝までで、あと鉄で補強って出来ます?肉弾戦もするんで要所要所に欲しいんですけど」


「出来るわよん、でも高くなるわよー?」


「構いません。飛びっきりいいのをお願いします」


「このキャサリンにまっかせなさい!必ずスカイちゃんが納得するものを造ってあげるわぁ!」




胸に拳を叩きつけ、キャサリンがそう宣言する。

期待が自ずと高まる。これは楽しみだ。きっと彼(彼女?)ならいいものを作ってくれそうだ。




「そうですわお姉さま!よろしかったらこれをお使いになさってくださいまし!」




―――――――――――――――――――


そよ風のブーツ 品質A レア度☆☆☆


スキル【加速】の付与されたブーツ

履くだけで速度が上昇する他、アーツ《アクセル》を使用することができるようになる。


―――――――――――――――――――




「いやいや貰えないよ、これって初回特典のやつでしょ?」


「構いませんわ。ワタクシには紅百合の乙女がありますし、ぶっちゃけそれはもて余してたんですの。売り飛ばすのもアレですし、よければ貰ってくださいまし」


「むぅ」




スキル付きの装備が珍しいのはなんとなくわかる。性能も良さそうだし、貰えるなら貰いたい。だけどそれはボクの良心が絶対に許さない。友達とはいえ、こういうことはしっかりしておかないと。




「レーカ、貰うのは無しだ、やっぱり買わせてもらうよ。キャサリンさん、このブーツは相場でいくらします?」


「キャシーでいいわよん。ん~、そうねぇ。スキル付きだから友達価格でも10万Gは越えるわねぇん」


「よかった、それなら払えるや」




ボクの懐はナンパからむしりとったお金で十分潤っている。

総額ざっと30万G。10万G払ってもまだ余裕だ。




「はい代金。キャサリンさん、これの仕立て直しも一緒にお願いします」


「だからキャシーでいいのにぃ。まあわかったわぁ」


「お金なんていいのに……」


「ダメだよ。金銭関係はきっちりしないと。それじゃあキャシーさん、ボク達はこれで」


「ゲーム時間で明日の10時辺りに来てくれるぅ?それまでに仕上げとくわぁ」




レーカを連れ、キャサリン改め、キャシーさんの露店を後にする。さてと、次は弾薬を補充をしよう。弾がないと【銃】のレベルも上げられないし。

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