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「いいですかお姉さま、絶対に!ぜぇったいに!!無理はなさらないでくださいましね!ワタクシはβ時代の仲間と合流しなくてはならないので外れますが、何かあったらすぐに連絡をしてくださいまし!!」




レーカはボクにそう念を押すと、フレンド登録をして名残惜しそうにしながらも北の荒野から去っていった。

レーカは心配性だな。この程度の相手ならそう簡単に遅れはとらないのに。


さてと、さっそく次の相手をと思ったが、まずは剥ぎ取りだ。

剥ぎ取りの仕方は、剥ぎ取りナイフを死体に突き刺すだけ。お手軽だ。

へし折ったロンリーウルフの死体にナイフを突き立てる。すると死体はポリゴン状になって砕け、その後には…………何もない?


…………………そういえばこの剥ぎ取りナイフは損失率とやらが50%だったな。その通りなら二体に一体はなにも剥ぎ取れないということだ。ボクも運が悪い。

こうなれば剥ぎ取れるまで狩り尽くすまでだ。

どのみち刀と銃の使用感を知りたかったし。アイテムが手に入る頃には大体の感じが掴める筈だ。




「さて、と」




鞘に手を当て、刀を抜く。

まずは刀からだ。10匹くらい切り捨てて、それから銃を試していこう。




「まずはお前だぁぁあ!!」




振り向き様に刀を投擲、それと同時に走りだして後を追う。

投げた刀は遠くから様子をうかがっていたロンリーウルフの脇腹に刺さっている。激痛で動けないロンリーウルフに駆け寄り、刀を引き抜いて返す刀で首を断つ。


なんだよ、全然切れるじゃないか!

やっぱり使い手がヘボかったんだろう。やっぱり情報は鵜呑みにするもんじゃないな。まずは自分で試してからだ。


というわけで次は予定を変更して銃を使おう。刀の感覚は大体つかめた。




「よっ、と」




刀を納めてホルスターから銃を抜く。

持ち方は片手ではなく両手でだ。

狙いはあそこのロンリーウルフ、ドタマぶち抜いてやる!



バンッ!(発射音)



チュンッ!(ボクの頬を擦る)



タラ~…(ボクの血が垂れる)



う、嘘だろ………?

どんな弾道したんだこの銃!

こっちがドタマぶち抜かれるわ!?



銃に関しての話はガチだったことがよくわかった。

それと弾がどんな動きをしたのかもだ。

銃弾は発射した瞬間はまっすぐ進み、そこから急な変態軌道。

正常に進むのは目測30㎝といったところか。遠距離武器としてはとんでもない欠陥だ。


だけどボクの戦闘スタイルならなんの問題もない。

だって、当たらないなら当たる距離まで寄ればいい。ただそれだけのことだ。




◇◇◇◇◇◇◇◇




それからボクはひたすら戦った。

迫り来るロンリーウルフ達を千切っては投げ………いや違うな。斬っては潰し、潰してはブチ抜きを繰り返していた。

倒した数なんて覚えてはいない。ただひたすらに戦い続け、そのお陰で色々と成果があった。




―――――――――――――――――――――――


スカイ Lv3


職業 〈無職〉


スキル


【刀術Lv4】【銃Lv3】【格闘Lv5】【軽業Lv4】【鑑定Lv6】

【】【】【】【】【】


称号

Newビーストキラー New下克上


―――――――――――――――――――――――




まず、レベルが大分上がっていた。そして称号にビーストキラーと下克上なる物の追加だ。

称号は獲得すると、称号によって様々な恩恵が得られるとか。

このビーストキラーは動物系に対してのダメージ増加。下克上は格上の敵との戦闘時に能力上昇の効果がある。


獲得条件だが、ビーストキラーは動物系を大量に狩る。下克上は自分よりレベルの高い奴と殺り合えば獲得出来るらしい。


格上…………そういえばいたな。

他のパーティーを食い殺してこちらを襲ってきた、ひときわ大きいロンリーウルフ。こいつがなかなかのくせ者だった。

こいつに飛び乗って首を刀で貫き、脳天目掛けて全弾発射で漸く仕留めたんだったか。確か死体がこの辺にあった筈だ。




〔トップロンリーウルフ・ウインド Lv10 死体〕




やっぱりでかいなこいつ。

そして今気が付いたが、こいつ、多分変異種だ。

レーカが言っていたが、モンスターにはたまに、本来は持ち得ない能力を持った個体が生まれることがあるらしい。

普通のロンリーウルフはくすんだ灰色だが、こいつは淡い緑色だ。

それに名前にウインドってついてるくらいだから風を使ったりするんだろうが、見る前に仕留めてしまったな。まだ魔法は見たことないからちょっと興味があったんだが。


まあそれはともかく、問題は他にある。

変異種はレアなアイテムを落とすらしいんだが、ボクの持つ剥ぎ取りナイフだと、二分の一の確率でなにも落とさない。それは切なすぎる。何かいい方法があればいいんだけど………………。




「─────あっ!」




そうだそうだ思い出した!冒険者ギルドに持ち込めばいいんだ!

レーカ情報によると、冒険者ギルドに獲物を持ち込んで代金を払えば、解体専門の人が解体してくれるとか。それを利用すれば確実にドロップアイテムが手に入るらしい。

よっし!そうとわかればもうここに用はない!


まわりに散らばるロンリーウルフの死体にナイフ突き立てアイテムを回収。次にトップロンリーウルフ・ウインドを担ぎ上げる。

パーティーなら何人かが見張りに残っていればいいが、ボクはソロだ。呼びにいってる間に横取りされる可能性がある。

現に今も周りの視線がボクに集中している。手を出してこないのはボクが返り血まみれだから、おじげづいているのだろう。

これは好都合だ。




「よいっ、しょっ、と!」




重たいトップロンリーウルフ・ウインドにふらつきながらも、ゆっくりと歩く。目的地は東大通り、冒険者ギルドだ。




◇◇◇◇◇◇◇◇




そんなわけで特にトラブルもなく無事に着いたボクだったが。




「はふ~~」


「スカイさーん。着替え、ここ置いときますねー!」


「あー、ありがとうございますー」




何故かお風呂に浸かっていた。

まあ、こうなった原因はボクなんだけど。


道行く人にドン引きされながらもギルドに着いたのはよかったが、その後が悪かった。

プレイヤーやら住民やらでごった返す冒険者ギルドに現れた、全身返り血だらけの女。それを見て固まる人々をスルーして空いてる受付を探していると、ちょうどよく奥から出てきた新人さんらしき人がカウンターについた。「次の方どうぞー」と言うが誰も動かないことに訝しげな表情の新人さん(仮)。誰も行かないならとボクがそこに向かう。

人が来たことに気付いた新人さんが顔をあげ、笑顔を浮かべて────気絶した。


そこから先はもう大騒ぎ。新人さんと何故かボクは医務室に放り込まれ(ボクは重傷者だと思われたらしい。処置をするために女医さんに服をひっぺがされた)、その後ボクの血は唯の返り血だと判明。お風呂に放り込まれて今に至る。ボクの初期配布の服は犠牲となったのだ。




「さっぱりしたー!」




お風呂から上がり髪をタオルでぱっぱと拭いて服を着る。あ、この服ギルドの制服だ。しかも童貞を殺す服。流石受付嬢、あざとい。

有り難いことにヘアゴムが置いてある。これは髪をまとめるのに使わせてもらおう。うなじの辺りでこうキュッと、一纏めだ。

これが一番落ち着く。




「スカイさん、こっちに来てもらえますか?解体結果と査定のことで話があるそうです!」


「わかりました。えっと……」


「スティラです!私は見習いギルド嬢のスティラといいます!」


「改めまして、スカイです。すいません、先程は驚かせてしまって」


「いえいえ!私が未熟だっただけですからお気になさらず!それよりも早く行きましょう?先輩が待ってます!」




スティラちゃんに連れられてギルドの個室に入る。

部屋の中にはほんわかした感じのお姉さんがボクを出迎えた。




「お待ちしておりましたスカイさん、こちらは解体で得られたものと、査定の結果です。御確かめください」




―――――――――――――――――――――――

査定結果


独狼の牙×56=50


独狼の皮×62=300


独狼の骨×34=100



24800G

―――――――――――――――――――――――




独狼とはロンリーウルフのことだ。ロンリーウルフのドロップアイテムには全て独狼と記載されている。

それにしてもあまり高く売れなかったな。やっぱりプレイヤーが大量に持ち込んで価値が下がっているんだろうか。こればっかしは仕方ない。


気を取り直して、次はメインのトップロンリーウルフ・ウインドのドロップアイテムだ!




―――――――――――――――――――


風独走狼の全身毛皮 品質B レア度☆☆☆


トップロンリーウルフ・ウインドの全身毛皮。

フカフカで打撃に強い。風属性の魔力を帯びている。


―――――――――――――――――――


―――――――――――――――――――


風魔石 品質B+ レア度☆☆☆


魔物の体内に生成される魔力の塊。

錬金術や魔法の媒体に使われる。

風属性の魔力を帯びている。


―――――――――――――――――――




手に入った全身毛皮、これはボクの新しい防具にしよう。調度新しい装備がほしかったところだ。

風魔石に関しては、一旦保留にしとこう。その内なにかに使えるだろう。

さて、では問題の解体費用だけど。




「そこでなんですがスカイさん、提案したいことが………」




提案したいこと、その内容は冒険者ギルドに入らないかということだった。ギルドとしても、優秀な人は取り込んで置きたいらしい。ギルドに所属すれば、ギルド内の売店や解体費用がいくらか安くなるらしい。

これはありがたい。ボクも元から入ろうと考えていたのだ。ここは乗らせていただこう。




「ありがとうございます。それでは私はギルドカードを作ってきますので暫くお待ちください♪」


「あ、はい。ところであの……この服なんですけど」


「それでしたら、よろしければどうぞ。それと私はマリアンナです♪」


「あ、どうも。スカイといいます。これからよろしくお願いします」


「よろしくね~♪」




ルンルンとした足取りで部屋を出ていくマリアンナさん。最後には口調が崩れていたが、あれが本来の彼女なんだろう。




「よかったですね!先輩に気に入られたらこの先安泰です!」


「え、そうなんですか?」


「そうですよ!先輩は普段受付嬢をしてますが、本当の役職は冒険者ギルド・ファウスト支部ギルド長兼ギルド暗部・違反粛清部隊の隊長をやっている重鎮中の重鎮です!『破城槌』のマリーは先輩のことですよ!…………あ、年齢のことは聞いちゃダメですよ。この前それでひとりが謎の失踪を遂げました」


「──────」




まったく嬉しくない情報をありがとう。お陰で不安が募るばかりだ。


まあ、それはともかくだ。

今は確認したいことがある。

そう、初回特典だ。


すっかり忘れていた。完全に忘れきる前に確認しておかないと。それともう一つ、気になるアイテムを北の荒野で拾ったんだった。




―――――――――――――――――――


【魔工学】のスキルストーン 品質A+ レア度☆☆☆☆☆


スキル【魔工学】が結晶化したもの。

使用することで【魔工学】を取得することができる。


―――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――


翡翠の卵 品質? レア度?


モンスターの卵。【従魔術】で孵すことが出来る。


―――――――――――――――――――




スキルストーンはこのゲームでのスキル取得方法の一つだ。本来ならスキルショップで大金をはたいて買うようなものだが、思わぬところで手に入ったな。

【魔工学】がどういうスキルかはわからないが、どことなくロマン溢れる感じがする。後で取得しておこう。


問題はこの翡翠の卵だ。折角だから孵してみたいのだが、肝心の【従魔術】とやらをボクは持っていない。取得しようにもファウストの街にはスキルショップはない。その代わりに冒険者ギルドの売店でスキルストーンを販売しているのだが、戦闘系スキル等しかないから宛にならない。どうしたものか……。




「どうかしましたか?」


「いえ、ちょっと考え事を。モンスターの卵を拾ったんですけど、【従魔術】を持ってないんでどうしようかなと」


「【従魔術】…………?それなら確か在庫があったはずです!ちょっと待っててくださいね、今先輩に聞いてきますので!」




話を聞いたスティラちゃんは、すぐさま部屋を飛び出していく。

呆然としていると、扉が再び乱暴に開けられる。




「ありましたよ【従魔術】のスキルストーン!先輩が特別に売っていいそうです!」




手に持っているのは青い拳ほどの大きさの石。ボクの持つスキルストーンとそっくりだが、一応《鑑定》させてもらおう。




―――――――――――――――――――


【従魔術】のスキルストーン 品質B レア度☆☆☆


スキル【従魔術】が結晶化したもの。

使用することで【従魔術】を取得することができる。


―――――――――――――――――――




確かに【従魔術】のスキルストーンだ。

これはぜひとも買おう。




「買います。いくらですか?」


「5000Gです!」


「ごせっ───!」




高っ!?初期の所持金の全額じゃないか!

レーカも言っていたが、いくらなんでも高すぎるだろう。

だけどこのチャンスを逃せば次いつ買えるかわからない。

───ぬぅ、致し方あるまい。使ったぶんはまた稼ごう。幸いまだ今日の稼ぎが丸々残っている。




―――――――――――――――――――――――


スカイ Lv3


職業 〈無職〉


スキル


【刀術Lv4】【銃Lv3】【格闘Lv5】【軽業Lv4】【鑑定Lv6】

New【魔工学Lv1】New【従魔術Lv1】【】【】【】


称号

ビーストキラー 下克上


―――――――――――――――――――――――




というわけで【従魔術】のスキルストーンを購入。【魔工学】のスキルストーンも同時に使った。


ではさっそく翡翠の卵を孵そう。

バッグから卵を取り出して腕に抱える。




「ほぇ~、綺麗な卵…………こんなの見たことないです」


「そうなんですか?」


「はいっ、職業柄、モンスターのことは軒並み頭に叩き込んでますが、こんな見た目の卵は見たことないですよ!」




なかなか興味深い話だ。ますます中身が気になってくる。

えーと、孵し方だが、卵に手を置いて【従魔術】のアーツ《テイム》を使えばいいらしい。




「《テイム》!…これでいいのかな?」




―――――――――――――――――――――――


翡翠の卵のテイムに成功しました!


孵化まで[01:00:00]


―――――――――――――――――――――――




表示された内容を見る限り、卵が孵るまで一時間は掛かるらしい。一応、卵は出しっぱにして置こう。こういうやつは大抵が仕舞ったらやり直しというやつだからな。




「スカイさーん、お茶いれたんでよかったらどうぞ!」


「頂きます。それと、すいませんが一時間ほどここに居させてもらってもいいですか?卵が孵るのに時間がかかるみたいで」


「いいですよ!この部屋普段は滅多に使われないんでいくらでもいて大丈夫ですよ!」




いやいくらでもは駄目だろ。

だけど居させてくれるのはありがたい。ここはお言葉に甘えるとしよう。

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