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「ダイブスタート!」




ボクの呼び掛けにヘッドギアが反応して、ボクの意識を暗転させる。そして少しの間を開けて、目の前にいくつかのアイコンが表示された。

その中のひとつ《FREEDOM WORLD ONLINE》を選択する。


画面が切り替わり、オープニングが流れる。

なかなかに壮大な光景だけど、生憎今は待ち人がいる。問答無用でスキップさせてもらおう。


タイトルロゴが表示された瞬間にスタートを選択。辺りの様子が変わり、目の前に姿見と小さな妖精が現れた。

この子がキャラメイクを担当するサポートキャラのナビーちゃんなんだろう。CMでも出てたっけ。




『FREEDOM WORLD ONLINEへようこそ!これからキャラメイクを行います。ヘッドギアに記録された身体データを使用しますか?』


「それでお願いします」


『かしこまりました!それでは姿見にキャラクターを表示します。微調整はそちらのパネルでしてくださいね』




姿見には現実のボクそのまんまの姿が下着姿で写し出される。

170㎝の高い身長に引き締まって出るところが出たボクの体。

ボクとしてはこのままでも全然構わないけど、あの子が言うには現実そのままだといろいろ面倒があるって言ってたっけ。ストーカーにあったりするとか。


…………めんどっちいな。目だけ緑に変えておけばいいや。




「終わったんで次お願いします」


『かしこまりました!それでは次にスキルを5つ選択してください。今後の活動に関わってくるので慎重に選んでくださいね?』




姿見が消えて今度は目録が表れる。ここから選べってことだろう。

このゲームのスキルは大きく分けると

・戦闘系スキル

・魔法系スキル

・生産系スキル

・その他

の4つになる。

戦闘系スキルは【剣術】などの物理的な攻撃手段。

魔法系スキルは【火魔法】などの特殊な攻撃手段。

最初から選べるのは 火 水 土 風 光 闇の6つ。

生産系スキルは【鍛冶】などの物作りに必要なスキル。

その他は【鑑定】などの、どの分野にも入らないスキル。

と、こんな感じだ。


戦闘系は勿論取るとして、魔法系は…あの辺はいまいちわからん。ここはスルーで、必要になったら取ろう。生産系もひとまず置いといて………よし、こんなもんか。



【刀術】【銃】【格闘】【軽業】【鑑定】



戦闘系からは【刀術】【銃】【格闘】、その他からは【軽業】【鑑定】を取得した。


【刀術】【銃】【格闘】は少しばかり心得がある。これならある程度は戦えるはず。【軽業】は動きの補助だ。ボクはもともと身軽な方だけど、念には念を入れておこう。【鑑定】はあの子がソロで活動するなら持っておいた方がいいと言っていたから取得した。




「決まりました」


『わかりました!それでは確認をしてください!』




―――――――――――――――――――――――


スカイ Lv1


職業 〈無職〉


スキル


【刀術Lv1】【銃Lv1】【格闘Lv1】【軽業Lv1】【鑑定Lv1】

【】【】【】【】【】


称号


―――――――――――――――――――――――




む、無職……………。恐ろしい響きだ。これだけで自分が度しがたいごく潰しになった気になる。


い、いや。気を落とすのはまだ早い。確か職業はレベル5になると就けるはずだ。早急にレベルをあげて無職脱却をしよう。




『終わりましたか?なにか問題があれば今からでも設定し直せますよ?』


「いえ、これで大丈夫です」


『わかりました。それでは最後にこれを。初回特典のアイテムです。中身はランダムですので何が当たるかはゲームが始まるまで解りません。それと特典は初回のキャラメイクでしか受け取れませんので、いいアイテムが出るまでリセットマラソンなどはなさらないでくださいね?』


「わかりました」


『ではこれでキャラメイクは終了になります!それではこの自由な世界を、思う存分楽しんでくださいね!』



ナビーちゃんがペコリと一礼すると、光があふれでてくる。

それに目をつぶり、光が収まったのを感じて目を開けば───


───辺り一体、人だらけだった。


ボクの期待を返せ。ここは目を開けたら異世界が広がってるもんだろ。いや確かに今日はサービス初日だからしょうがないけどさぁ…………。



内心がっかりしながらも待ち人を探す。

あの子の事だからボクがログインする前にはすでにいるはずだ。あの子はβプレイヤーとか言う奴だったらしいし。




「おっねえっさまあああああああああああ!!!!!」




噂をすればなんとやらだ。あの子はどこにいても全力全開だな。

後ろを振り向きながら手を拡げ、飛んできた人を受け止める。腕に収まった女の子はボクの背中にがっちりと腕を回し、ボクの胸に頬擦りをした。




「ああっ!この柔かさ!このほんのり香る甘い匂い‼間違いなくお姉さまですね!お会いしとう御座いましたお姉さま!」


「なにいってんの、いつも学校であってるでしょうに。後なんで判断基準に顔が入ってないんだ、まず顔を見なさい」


「ふみゅっ!?」




飛んできた女の子“高御ヶ崎玲香”をひっぺがし、頬を摘まんでみょんみょんする。

玲香はボクの同級生で、ボクを《FREEDOM WORLD ONLINE》に誘ってくれた子だ。βプレイヤーでは5本の指に入るほどの実力者なんだとか。

ボクにヘッドギアをプレゼントしてくれたのも彼女だったりする。

名前の通りお嬢様で、本来ならボクと関わりを持つこともないような子なんだけど、昔とある事件の時に助けて以来ボクにベタ惚れになっている。

セクハラが激しいが、その本質は素直ないい子だ




「まったく……。そういえば玲香。よくボクがわかったね」


「愛があればお姉さまがどんな姿をしていてもすぐに見分けられますわ!……………と、言いたいところですが。お姉さまの姿が現実とほとんど変わってないからですわ。お姉さまはもう少し警戒心を持ってくださいまし!」




不満げな玲香は特徴的なドリルヘアーを揺らしながらそう言う。

そんなにカリカリしなくてもいいだろうに。ボクの事を心配してくれるのは嬉しいんだけど。




「まぁ、それは一先ず置いておきましょう。それではお姉さま、街を案内しますから着いて来てくださいまし。後ワタクシのゲーム名は”レーカ“ですわ」


「ああ、お願いするね。ボクのゲーム名は“スカイ”だよ」




玲香改め、レーカの後に続いて街を歩いていく。

レーカは時折立ち止まりながら、ボクに基本的なことを教えてくれた。




「いいですかお姉さま、この始まりの街“ファウスト”には基本的な物が軒並み揃っています。ログイン地点の集いの広場を中心として東西南北に大通りが出来ていますわ。東はギルド通りといって冒険者ギルド、商人ギルド、魔術ギルドなどがありますわ。

西は職人通りといって、生産職に関係のある施設がありますわ。私たちにはあまり関係ないところですわね。

南は露店通りといって、毎日露店が並んでとても活気がありますわ。品質はそこそこですが、たまに思わぬ掘り出し物があったりしますわ。お姉さまも懐に余裕ができたら行ってみるといいですわよ。

最後に北、通称冒険者通りですが、今は空き家だらけで行っても旨味はないですわね。もうしばらくすればこの世界の住人やプレイヤーをお店を開いたりすると思いますわ。…………ここまではいいですか?」


「大体頭に入ったよ」


「それなら次は戦闘についてですわ」




レーカに連れられ、北の冒険者通りを進んで門を目指す。

北門に着いた所でレーカが振り返った。




「さてお姉さま。街の外は基本的に危険地帯ですわ。門を出た瞬間に戦闘になることもありますから、今のうちに準備を済ませてくださいまし。初期装備はバッグの中に入ってますが、まずはメニューから確認して取り出してみましょう。メニューの開き方は先程教えた通りですわ」




レーカから教わった通りにメニューを開いて見せる。

そしてアイテムのアイコンを選択すると、リストが現れた。




―――――――――――――――――――


マジックバッグ 品質C レア度☆


ウエストバッグ型のマジックバッグ

持ち主のレベルによって入れられる量が変わる。

現在は十キロまで入れられる。


―――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――


初心者の刀 品質C レア度☆


異世界人に支給された刀。

切れ味は余り良くない。


―――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――


初心者の銃 品質C レア度☆


異世界人に支給された銃。

回転式拳銃。性能は余り良くない。


―――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――


鉄の弾薬 品質C レア度☆


鉄で出来た弾薬。6発1セット。

拳銃用。


―――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――


牛皮のガンベルト 品質C レア度☆


銃を吊るすためのベルト。

ホルスターの位置をかえることができる。

―――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――


剥ぎ取りナイフ 品質C レア度☆


モンスターに突き刺すことで、モンスターをアイテムに変換する。損失率50%


―――――――――――――――――――




リストからアイテムを選択して取り出し、装備する。

まずガンベルトを巻いてホルスターに銃を収める。次にガンベルトの上にマジックバッグを装着して剥ぎ取りナイフをマジックバッグに重なるように付ける。最後に刀の鞘を腰に差して完成だ。




「出来ましたかお姉────!…流石お姉さまですわ。地雷を盛大に、それも二個同時に踏むとは」




どっかのマンガで見たような驚き方を見せる玲香。金髪ドリルのお陰かすごいマッチしている。

しかし地雷か。一体どれが地雷なんだろうか。もしかして銃か?それとも刀?




「その両方ですわお姉さま。刀、弓、銃は三大外れ武器と言われていますわ」


「……………理由を聞いていい?」


「いいですわ。まず刀ですが、これはすぐ折れて使えなくなってしまうのが原因ですわ。買い換えようにもファウストにも次の街のセカンディアにも売ってない。そのせいでスキルレベルがあげられない事態が続出したからですわ。

次に弓ですが、これはコスパの悪さが原因ですわね。矢は射ると返ってこないし、しかもなかなか当てづらい。…………まあこれに関しては、正規版で矢が返ってくるように変更されたからそのうち評価が変わるでしょう。

問題は銃ですわ!銃は別名、パーティー殺しと言われてますわ‼その命中率の悪さは天下一品。敵を目掛けて引き金を引けば、隣の仲間に風穴ができる。弾は勿論返ってこない、しかもコスパは弓よりも悪いと欠点だらけですわ!!!」


「ボロッカスだね」




だけど、ここまでけなされると逆に面白くなってくる。

それにだ。刀についてだけど、さっき確認した感じだと、この刀は質は良くないがそうボキボキ折れるような代物じゃない。

大方使い手が糞だったんだろう。

それに銃は命中率が悪いだけで他に問題点は感じられない。これならなんとかなりそうだ。




「それでは行きますわよ、お姉さま」




レーカが門に触れると、独りでに開いていく。そしてそこに広がるだだっ広い荒野。所々で、プレイヤーらしき人達が狼と戦っていた。




「ここはファウストの街近辺にある戦闘可能地区の中で一番難易度の高い北の荒野ですわ。出現モンスターはβ時代と同じなら“ロンリーウルフ”というモンスターですわ」


「ほうほう、そのロンリーウルフの特徴は?」


「名前の通り、一匹で活動していますわ。後動きが早いので注意、と言ったところでしょうか。まずはワタクシが戦って見せますので、お姉さまは見ていてくださいまし」




レーカが腰に提げたフルーレを抜く。

今のレーカの装備は真っ赤なバトルドレスで、フルーレにも紅ユリの装飾が施されている。何でも、βプレイヤー限定の特典らしい。スキルか装備を性能を落として引き継げるんだとか。


そんなことを考えている間に、レーカが敵と相対する。

飛び掛かるロンリーウルフだが、レーカは構えたまま動かない。

その牙が届く直前、レーカの口が開いた。




「《エスキーヴ》!」


「ガウッ!?」


「《トゥシェ》!」



淡い光を纏ったレーカが真横にスライドするように動き、ロンリーウルフを回避。攻撃が空振り戸惑うロンリーウルフの首を、今度は鋭い光を纏ったフルーレが指し貫く。

倒れ伏したロンリーウルフは、そのまま動かなくなった。




「今ワタクシが口ずさんだのがアーツですわ。これは大抵のスキルにあるのでこまめに確認してくださいまし」


「なるほど。アーツは口に出さないと発動しないのかな?」


「スキルのレベルが上がれば必要なくなりますわ。せっかくですから練習してみましょう。お姉さま、そこのロンリーウルフの死体に【鑑定】のアーツを使ってみてくださいまし。メニューから選択できますわ」


「えっと、こうかな?《鑑定》!」




〔ロンリーウルフ Lv3 死体〕




アーツを発動すると、空中に情報が写し出される。

これは左から、名前、レベル、状態といったところか。分かりやすくていいな。




「【鑑定】は上げておいて損はないスキルですわ。積極的に使ってくださいまし」


「わかったよレーカ。それじゃあ次は………」


「戦闘ですわね。お姉さま、頑張ってください!」




辺りを見渡せば、こちらに迫るロンリーウルフの姿が見える。

血走った目に涎でデロデロの口許。こちらをご飯にする気満々だ。

だけどご飯になるのはボクじゃない。

お前がボクの糧になるんだよ!




「お、お姉さま!武器を!?」


「素手で十分だ!!」




ロンリーウルフの牙を体を引いてスレスレで回避する。

ガチンッと鳴る顎に戸惑うロンリーウルフ。その首を、膝と肘とでプレスする。

骨をへし折る嫌な感触。ロンリーウルフはその場に崩れ落ちた。


おっといけね。《鑑定》してなかった。



〔ロンリーウルフ Lv2 死体〕



死亡確認。《鑑定》はこういうときにも役に立つな。


ともかく、はじめての戦闘はなかなかいい感じだった。

この次もこの調子で行こう。

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