魔法のホウキ普及委員会
なぜ、魔法使いはホウキで空を飛ぶと思う?
空を飛ぶには道具は何でもよかった。掃除機でもトイレ掃除で便器に入れてキュッポンするヤツでも、またげれば何でもいい。
でも、それでやってもしっくりこなかった。
掃除機にまたがって行くと騒音で苦情が来るし、キュッポンで行けば悪臭で苦情が来るし、うまいこといかなかった。
そこで手にとったのはホウキというわけだ。
しっくりくるし、苦情も来ないし、優秀な乗り物だ。
これでボクの研究"魔法の力で空を飛ぶのに相応しい乗り物についての考察"が完成した。
その研究によって、魔法使いはホウキで空を飛ぶようになったというわけだ。
今日の魔法使いはというと……。
自動車なる化石燃料で動く乗り物やら飛行機やらと、魔力を使わずして移動したり空飛んだりしている。
深刻な魔法のホウキ離れが発生している。
これではいかん。
ボクは世間にリサーチをかける。すると「古くさい」だの「お尻が痛くなる」だの、ホウキに対する不満しか出てこない。
確かに車のようなフカフカした座り心地じゃないけど、あの当時はコレが最高だったんだよ。
そこで大々的に魔法のホウキを再度、凄いものだと教え込んでいこう。
まず、ホウキは自分の好きなようにカスタマイズできる。スタンダードのものからハイカラなものまで無限大に組み合わせがある。
そして、スピード調整は自分の意思でコントロールできる。車のアクセルやブレーキペダルのように足を使って調整しなくていい。自分の思うまま、それに応じてスピードは変わっていく。
あと、ホウキは稀に八百万の精が宿ることがある。
するとホウキは、今で言うところのお掃除ロボットより遥か上の性能を発揮する。
掃除全般はもちろん。炊事、洗濯もなくなくこなせる。家に帰ってくる時は正座して礼で出迎えてくれる。良妻賢母なホウキにもなる。
さぁどうだい。ホウキに乗りたくなっただろう?
ならないかい。なら、今ならこの空飛ぶじゅうたんもやろう。
何? 通販番組みたいだと? 確かに……言われてみればそうだな。
じゃあ、どうしたらホウキに乗る人は増える?
ここでボクはいいことを思いつく。
「わー!! このホウキすごーい!!」
ここはとある小学校。新一年生に掃除の大切さを伝えるついでに、ホウキで空を飛んでみようと呼びかけの活動をすることにした。
近年ホウキで空を飛ぶ人が減ったせいか、存在を知らない小学生もいる。
むしろ無知の方が好都合だ。興味が湧いて、ホウキに乗る確率も上がるから。
ボクの目にはホウキを楽しそうに乗る小学生が入り込んでくる。懐かしい、歳のせいか、涙もろくなっているようだ。
でも、本当に嬉しい。こうしてホウキに乗ってくれてるんだ。末永くホウキと共に生きていきたい。
――こうして、魔法のホウキ普及委員会が発足される。今では車につぐ移動手段として活躍している。
災害時、どこでも行けることから自衛隊が率先して使っている。
これからも色んな場面で使われるように活動していくつもりだ。