私のお母さん
此の世の全てを諦観していた。
生まれた頃から母親から受ける暴力。
母は拳を振りながら、幼い私にそれは「愛」だと言った。
私は愛されているから、苦しくない。
そう思い込まなければ生きていけない環境だった。
父親は歌舞伎町に勤めている、人気ホストだと母は謳っていた。
幼い私は、母の機嫌が良いことは珍しいので「凄い」と繰り返していた。
小学校に入り、虐待の疑いを教師からかけられた。
家に訪問してきた担任の先生に私は思わず「帰ってください!」と叫んだ。
自分の行動の意味が分からなかったが、母だけが全てだから、母を責めないで欲しかった。
中学校に入り、私は新聞配達のバイトを始めた。
母が「お父さんからの仕送りが…」と呟いていたのを聞いたから。
毎朝3時には起きて新聞配達をしてから、学校に行く日々がしばらく続いた。
二年生になると、中学校生活に慣れた子供達はブランド物などの話を始めている。
私はそういったことに興味などなかったので関わらなかった。
そうして私は学校、そして社会から孤立していった。
「 これでいいのよ 」
後ろで私の判断力を奪うように囁くのは、愛おしい愛おしい私のお母さん。
――――「私のお母さん」Fin.