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孤独に愛された者
八枚切りの食パン。
焼きすぎて焦げてしまった朝ごはん。
ジャム瓶の蓋が開かなくて周囲を見渡す。
広いリビングルームで孤独を感じる。
バターを開けてパンに塗る。
賞味期限が少し過ぎていたのを後から知る。
軽快な音とともに咀嚼する。
慣れてしまった素朴な味と少し苦い焦げの味。
零れ粕を落とさないよう気をつける。
部屋に漂う香ばしい匂いが自棄に鼻につく。
パジャマを脱いで着替えようとする。
釦をひとつ掛け違えていたことに今気付く。
今日は何を着るかを皿を洗いながら考える。
何度も着回してパターン化している私服に腕を通す。
今日は何曜日だったかカレンダーを見る。
未だ二月を指し示す紙を千切ってはゴミ箱に捨てる。
ゴミ箱の中を覗く。
それは深遠を覗いているような錯覚。
菓子パンの空袋、ちり紙や使い終えた紙片。
風呂上りに耳掃除した綿棒、要らない郵便物と飲み干した紙パック。
屹度この中には色んなものが入っているのだろうと詩的思想をして笑う。
何事も起こらない日々が過ぎていく。
唯々、無情に過ぎていく。
――――「孤独に愛された者」Fin.