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纏足の娘
此処は優しい檻の中。
千鈴、と鈴の音。
彼女の首に嵌められた枷に付いた装飾。
紗蘭、と鎖の音。
両手首に嵌った手枷の部分に付いた痣は赤黒く。
光の入らない世界。
たったひとつ小さな天窓が世界の全て。
檻の柵に手をかける。
冷たい鉄の感触が色白い素肌に嫌に染みた。
小さな天窓から覗く青空。
時折浮かぶ白色の雲はどれだけあるの?
此処は優しい檻の中。
私が傷付かないよう
優しい人達が守ってくれている。
華蘭、と下駄の音。
飼い主さまが訪れたことを示す合図。
華蘭、と下駄の音。
優しい双眸が此方を見据えて嗤う。
光の入らない世界。
たったひとつの自由に恋焦がれた。
檻の柵が少しだけ開かれる。
温かいご飯と飲み物が差し出される。
何も考えられないよう
思考を奪う薬の入った生きる糧。
此処は優しい檻の中。
私は永久に飼われ続けるのでしょう。
――――「纏足の娘」Fin.