チート道具
全くもって異世界のチート道具は便利だ。
サリは意識の双子指輪とやらによって、基本的な生活知識はスバルと共有出来ているらしい。
話している途中でもぞもぞしていたから、推測してトイレに案内してやった。
しかし、サリが中に入ってから、使用方法についてわかっていない可能性を思い当たった。
わかんないなら教えてもいい。
いやしかし、サリは女の子。
女の子と言っても子供だし。
いやしかし、トイレだし。
1人ぐるぐるしてしまった。
と、サリはすんなり(おそらく)正しい使用をして出てきた。
「ごめん!説明しなかったね!」
「大丈夫でした。これがありますから」
指輪をかざしてみせる。
「これで、こちらの道具操作の情報などが自然に身に付くようです」
あくまでも、繋がってる勇者様の知識内ですが。
サリは笑った。
……早く言ってほしかった。
「とは言っても、これはああなんだとわかるだけで実際触った事がないので、驚くばかりです」
サリはきらきらした目で僕を見てくる。
僕の苦悩に気づいてないんだろうな。
というよりなんとなくヨコシマが入ってしまった罪悪感がぬぐえないよ。
それはさておき、それではもう一度。
全くもって異世界のチート道具は便利だ。
あ、でも。
ただの人が異世界に行ったら、チート能力が手に入る展開はよくある。
サリから見たら同じ事で、道具でもチートがあるのはありな話か。
ちらりと床に置かれた分厚い本も目が行く。
これもチート道具だろーな。
どこまでチートなのかを本人がわかっているか知らないけど。
「ミキヤさん?」
服の裾が引っ張られる。
気づけば、僕の足元でサリが見上げていた。
くっ!
かわいい!
おにーさん、もふもふ撫でてしまいそーよ!
僕の顔が鉄壁の防御をしてくれたので、これ以上横道にはそれなかった。
しかし、もう、なんだか話を続ける気力はなくなった。
「なんだか、疲れちゃった」
「も、申し訳ございませぇぇん!」
は?
サリが泣きそうな顔で服にしがみついてきた。
「わたしが、ご迷惑をかけたからですよね!」
うーん。
今度は、小動物みたいにぷるぷるしてる。
サリの頭の上に手を乗せて、ナデナデしてしまった。
あれ?
結局、触っちゃった。
「大丈夫、大丈夫」
「み、ミキヤさん……」
サリはちょっと顔を赤らめ、やっぱりぷるぷるしている。
嫌がっては…ないようだ。
なら、よし!
ついでに、サリは小動物。
けして、幼女ではない。
うん、決定。
僕は色んな事をナシにした。




