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僕だけ行けない異世界RPG   作者: せりざわなる
第一章 親友と始まりの少女。
8/10

僕の契約


整理をしましょう


畳の上に座ったままのサリに座布団をすすめる。

サリが戸惑っているうちに、僕は冷蔵庫からお茶を出して2つのコップに移し、ちゃぶ台まで運んだ。


「飲んでいいよ」

「ありがとうございます」


サリは素直に礼を言った。

座布団にちょこんと座ってコップを両手にもつ幼女のいる風景になんだか焦るが、僕もいわなきゃいけない。


「サリ。言っておくと、僕は君の世界の事情なんてまるで知らない。スバルは僕に説明してくれなかったからね。だから、簡単でいい。教えてくれないか」

「……わかりました」


エルタエル大陸の事。

魔王の事。

巫女の事。

召喚の事。

スバルの事。

サリはざっくりだ教えてくれた。


「で、どうしてサリはこっちに来たわけ?スバルを呼び寄せたなら、目的は果たしただろ?」

「わたしは対価です」

「対価?」

「はい。世界を渡るには対価が必要なのです。力を借りるのですから、それなりに何かを差し出さねば不公平となります」


言わんとする事はわかる。

でも。

頭の中の高校生男子と目の前の幼女。

対価になってるのか?


「わたしの何が、勇者様の対価に価するものなのかはわかりません。しかし、召喚と送還は成立しました」


対価として認められたということか。


「でも。こっちに来てどうするの?ここは何もないよ?」



そう。

争いやもめ事がないわけじゃないけど、すぐに命の危険にさらされない、運がよければ一生のんびり生きていける平和な国。

それが現代日本の世界。



「わたしにも役目があるのです」

「へえ。どんな」

「まずは、勇者様とわたしが通った事によって出来た道を安定させなければなりません」

「へ?道?自由に行き来出きるとか?」

「それは無理です。ですが、安定させる事は重要なのです」


サリによると。

やはり、生まれた世界との繋がりと言うのはとても強く、そこから離れると基本的な生命力が弱まるらしい。

勇者は召喚の際に加護が付き、更に強い生命力や能力が与えられるらしいが、それでも生命力がちょっとずつ弱まる事は避けられないのだそうだ。

ならば、繋がったままにできないだろうか。

その解決方法が道の安定化というわけだ。

繋がりが途切れないようにだけ、道を繋げたままにしておけばいい、と。


「ミキヤさま。その安定化には、是非とも先生のご協力が必須なのです」

「僕が?」


サリは腰の袋を探って、指輪を取り出した。


「あちらからもって来たこの指輪をはめて、わたしと契約を交わして欲しいのです」


聞きようによれば、幼女からのプロポーズ。

ドキドキしてきちゃう……。

って、僕は何を考えているんだ!


「僕が?なんで?え?」

「わたしは余所者です。勇者さまと深い繋がりのあるこの世界の先生と契約する事で、わたしがこちらいる許しを頂いた証しになる、と考えていただければ……」

「結構、めんどくさいな……って、ごめん!」


心が漏れた。

あわてて口をふさいだが、サリは笑った。


「すみません。でも、これは互いの世界の目印ともなるものですから」

「目印?」

「はい。勇者様が役目を終えて、こちらに戻る時に目印ともなるのです」

「サリも対価だから、その時は戻るの?」

「はい。わたしもあちらの目印に向かって帰ります」

「って、事はスバルもあっちで契約をするのかな?」

「はい。おそらく、巫女様と交わされるでしょう」


はあ。

しょうがないか。

スバルの為ともなるのなら。


「……わかったよ」

「!ありがとうございます!」


指輪を受け取ろうと差し出した右手を、何故かサリはつかんでくる


え!ちょっとちょっと!

な、なんなの!


小さな指の感覚にうろたえてしまったが、僕の顔は鉄壁だったらしい。

サリは僕の同様に気づかす、巻き付き型の指輪を右手中指にゆっくり嵌めていく。

ちょっと大きめの指輪が、指の付け根にはまった瞬間、きゅっとしまってジャストフィットする。


「失礼します」


更にサリは下から自分の左手の指輪を重ねて、右手を上から重ねて握りしめた。

そして、目を閉じた。


「指輪よ。この方を主と認め、2つの世界の止まり木となれ。我と契約を交わし、エルタエルの灯りとなれ」


ほんわかと握られている右手が温かくなった。

サリの手は離れいく。

ちょっと寂しい。


「契約は交わされました。先生は大樹の指輪の所有者となり、この世界の岸となり、わたしはここに存在する事を許されました」

「あ、そ、そう」


指輪を見れば、黒い宝石が心なしか輝いてる感じがする。


「先生。ありがとうございます」

「スバルの為でもあるんだし。ってか、サリ。先生に戻ってる」

「!申し訳ありません!ミキヤさま!」

「あー。ついでにさまも外して」

「では、何と!ミキヤさ……」

「ん!」

「ミキヤさん……?」

「よし」


サリはわたわた焦った様子をみせた。

初めて、ちゃんと幼女っぽい表情をみせた気がして安心した。



「で?一応、これで道の安定化は完了したんだよね?」

「はい」

「んー。じゃ、話が戻っちゃうんじゃない?ここでこれからどうするの」

「まだ、しなくては、ならない事があります。それはー」

「それは?」



「勇者さまの、お仲間探しです!」



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